こうして、世界は再び色を持つ

月咲やまな

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【第2話】

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「…… 何でしょう、今の二人は」
 自宅の門の中から大和が少し顔を出し、草加邸の前に先程まで居た二人の行動を気にしていた。
 彼らは注意深く周囲を確認してはいたが、所詮は高校生でしかない二人は、彼にだけは見られていた事に気が付いていない。
「……… 」
 大和は首を傾げ、しばらくその場で『誰だろう?』と考えてみたが、一度も葵と一緒に居る所を見た事の無い二人だった。この付近で見掛けた事すらもないし、中学生である葵の同級生だろうと思うには身長や体格的に無理がある。そもそもあの制服は、確か晴明学園高等部のものだったはずだ。

「何もないといいのですが…… 」

 ちょっと心配ではあるものの、何かあれば葵が助けを求めてくるだろうと結論を出し、大和は再び庭に戻って掃除を始めた。


       ◇


 帰宅するなり、庭の一角にしゃがみこみ、咲いている花を葵がじっと見る。彼女の耳には再びイヤホンがはめられ、音楽を聴きながら花の様子を観察していた。
 葵は別段花の手入れが得意というわけではない。そもそも中学生である彼女が自分で手入れするには、この庭はあまりに広過ぎる。その為、この庭は祖父母の代から付き合いのある庭師が手入れをしてくれているおかげで、ふと足を止めたくなるくらい元気に花を咲かせていた。

 そんな彼女の方から鼻歌らしき音が聴こえる。
 ゴクッと息を呑み、匡達が葵の傍までゆっくり歩いて行く。やたらと緊張しているのか、心臓がバクバクと煩く跳ね、無意識に握った手の中には汗が滲む。声を掛ける事への期待と不安とが入り混じり、息が少し苦しい。
 一歩、二歩。二人が庭の砂利道を歩くたびに音が鳴ったが、音楽を聴いている葵の耳には届いていない。

 手にグッと力が入り、二人が同時に葵へ向って「「——あのっ」」と声を掛けた。
 ビックリする様子もなく、しゃがんだまま、葵が声のする方を見上げる。色々な人から声を掛けられる機会が多いからか、二人が見るからに学生だからか、別段彼らを不審がる様子は彼女には無い。

 真正面から見た葵を前にして、匡と涼の顔が少し赤くなった。遠くから見た時以上に、『僕らがずっと探していた存在をやっと見付けられたのだ』という実感が胸に湧いてくる。

「…… どちら様ですか?もしかして、親戚の方?」

 キョトンとした顔をし、葵が二人に尋ねた。
「僕らが、君の親戚?…… 何で?」
 予想外の問い掛けに二人が驚き、匡が疑問を口にした。葵はその場で立ち上がり、匡達の傍に歩み寄った。
「何でって…… 顔が、私と似てるから。…… どこかでお会いしました?」
 親戚達を思い出そうと記憶を遡っても、彼女の中には思い当たる存在は誰もいない。そもそも葵は親戚なんて存在は写真でしか知らない為、頭に浮かぶ顔自体かなり少なかった。

「…… 君もそう思う?僕達は、似てるなって」

 涼にそう訊かれ、葵は匡と涼の顔を交互に見詰めると、少しの間の後に無言のままコクッと頷いた。
「僕達もね、そう思って声を掛けたんだ」と匡が熱の篭った声で言う。
「もっと早く声をかけたかったんだけど、君は色々な人と話していてちょっとタイミングがなくって…… ごめんね、勝手に庭に入って」
 涼は謝り、葵へ軽く頭を下げた。
「いいんですよ、来客は大歓迎ですから」
 二人に微笑みかけると、葵は玄関の方へ歩き出した。そして少し振り返り、「よかったら家の中でゆっくり話しませんか?どうぞ、こちらへ」と二人を誘う。
 いきなり庭に入って来た二人に警戒する事もなく、家の中にまで上がれと言われ、匡達の方が少し躊躇してしまった。『僕らが犯罪者だったらどうする気だ?』と、すでに不法侵入をやらかしておきながら心配になってくる。

((警戒心の無い子なのかなぁ?))

 同じ事を匡と涼が考えながら、彼らが互いの顔を見る。このまま断って帰るにはあまりにも惜しい出逢いだ。招いてくれるというのならありがたくお邪魔させてもらおう。
 彼らは一言も交わさずとも意思疎通をきっちり正しく終え、二人は同時に頷くと、葵の家の玄関へ歩いて行った。
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