鬼畜オオカミと蜂蜜ハニー

吉良龍美

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鬼畜オオカミと蜂蜜ハニー

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 頬を染めて狼狽える鈴を、上条は笑いながら眺めていた。
「モデルの方は、もうそろそろ辞めます。勉強もあるし、あ、でも連絡はちゃんと取りますから」
「当たり前だ。鈴は俺の大事な『息子』だからな」
 鈴ははにかんで、微笑んだ。

「御馳走様でした」
 お礼を云って車を降りると、里桜が鈴を外へ迎えに出て来ていた。
 里桜が上条にお辞儀をする。上条が微笑んで手を振った。
「直人に似ているな…」
『貴博、僕は君の事が…っ』
 まさか死ぬとは思わなかった。一度だけの逢瀬。白い肌。熱い息遣い。ずっとその命が続くと思っていたのに。
「直人。罰が当たったのかな俺は。手に入れようとした幸福は、すんなり指の間をすり抜けて行ったよ。見事にフラれちまった」
 パーキングをドライブにして走り出す。ルームミラーに仲良く家に入る鈴と里桜が映っていた。

 ジンが鼻をスンスンとさせて、夜空を見上げると遠吠えした。その背後を鈴がついて歩く。ジンが狼化すると童話に出て来る赤ずきんを思い出す。悪役のオオカミをジンに重ねて鈴は笑った。ジンが鈴を振りかる。
「ごめん、童話を思い出したんだ。でも不思議だよね。本当に狼男が居るなんて」
「夢でも見てると思ってはいないだろうな?」
「思ってないよさすがに。それより僕を呼び出してどうしたの? 兄ちゃんに見つからない様にこっそり出て来たんだから、用事早く済ませてよ」
「…ソウルメイトとは思えないほどにあいつは俺を嫌っているな。昔は懐いていたのに」
 ジンが鼻白んで云う。
「いつの時代の話し?…あ、ごめん…」
 鈴は意地悪っぽく云ってみるが、直ぐに謝った。ジンは異常な年代を生きて来たのだ。不老不死として。過酷な想いを胸に。
「気にするな。そういうう所は変わらないな」
 ジンが鈴に歩み寄り、鈴の腰に身体を摺り寄せる。
「鈴、俺はお前を愛している。お前の気配を再び感じた時、俺は心が震えた」
「…ジン」
 鈴は胸がキュンとして、ジンの耳を撫でる。夜の公園は少し怖いが、不思議とジンが傍に居ると安心する。そこへ、木々の間から女性の喘ぎ声が聞こえて来た。鈴はピクンとして振り返る。見知らぬ女性が木にしがみ付いて、背後から男性に身体を密着されていた。女性は片脚を上げている。何をしているか解って、鈴は驚いて駆け出した。ジンは鈴を追って走った。
「鈴っ!」
 ドクドクと胸を打つ痛みに、鈴はジンの声が聞こえていなかった。
「鈴っ!」
 力強い手で腕を掴まれて、鈴はギョッとなって暴れた。草むらに連れ込まれて鈴はパニックになり、咄嗟に空手で相手を払いのけようとして、逆にその手を掴まれた。
「鈴!」
 ビクリとして、鈴は荒い息を吐きながら相手の顔を見上げた。
「じ、ん?」
 ドクドクと高鳴る鼓動のまま、鈴はジンが全裸なのを真っ赤になって固まった。
「どうした!? いきなり走り出すから驚くだろう!」
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