童貞心理学 大学准教授ですが教え子に迫られまして

柏木あきら

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7.塩谷、悩む!

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俺がスプーンを持ったまま固まっていると、さらに土井がけしかけてくる。
「藤野くん、しおっぺの話してるとき、めちゃくちゃ嬉しそうなのよ。そりゃ恋愛の話は私達の妄想かもしれないけれど、あの子がしおっぺを大好きなのは現実なの。だから今、ギスギスしてる二人を見るのがつらいの、私達。ねぇ、さっち」
さっちと呼ばれた佐々木は恐ろしい勢いで首を縦に振る。
「先生、お願い。藤野くんのこと、嫌わないで」
その言葉に胸がチクリと痛くなった。
「…嫌ってなんか、ないよ」
「本当に?よかった」
土井と佐々木はホッとしたような笑顔を見せる。やれやれ…
「まあ、俺も大人げなかったな」
「何か言った?しおっぺ?」
「んー、何でもないよ。お前らの友情に脱帽だな」
そう俺が言うと二人はさらに大笑いした。

家に帰って、寝る前にぼんやりと考える。藤野とあまり話をしなくなって、寂しいと思ったのは否定できない。好きな作家の話をしながら目を輝かしていた藤野。子犬のように懐いてくれた藤野を思い出すとチクチク胸が痛む。そして体に触れてきた彼の手を思い出す。熱を持ったキス、体を舐め回す舌。二人で一緒に握った彼のモノ…
ずくん、と下半身が疼いて手を伸ばしあの日のようにそれを扱く。
「う…んっ…」
一人ではもう、もの足らない。藤野が触れなければ、あの気持ちよさを知らなければこんなに切なくならないのに。
「んっ、ん…ッ…藤野っ…」
もう一度触れてほしい。

****

その日は朝から大雨だった。公共交通機関の遅れが激しく、一限目の生徒の出席率は低かった。
「今週は『素人童貞』について」
いつもは教室の席は八割くらい埋まるのだが、今日は四割くらいしか埋まっていない。そして最前列に座っているはずのいつもの二人もいない。
仲良く遅刻かな、と思いながらもつい二人を気にしてしまう自分に嫌気がさしてきた。
結局、俺はどうしたいんだろう。
授業を終えて、教室を出て次の部屋に向かう。外はまだまだ大雨だ。
廊下を歩いていると、通りがかった音楽科の音楽準備室から声が聞こえた。
「航、タオル持ってるから拭いたげるよ」
「こんなにびしょ濡れになるなんてついてないなあ」
その声を聞いて俺は思わず準備室を覗き込む。そこには藤野と畑中の二人だけがいた。タオルをもった畑中は藤野の髪の毛を丁寧に拭いている。
「しっかり乾かさないと。風邪引いてしまうよ」
「んー」
ゴシゴシと畑中が藤野の頭を拭いている。藤野はメガネを外してなすがまま。メガネをはずした藤野を久しぶりに見た。授業中や普段は外さないメガネ。彼がメガネを取るときは、キスをするときだけだったな。

二人は向かい合ったままの姿勢。二十センチの身長差はキスするのにちょうどいい設定だと、漫画科のテキストに書いてあったっけ…
心臓がキュッと締め付けられる。

「タオル貸して。交代な」
藤野が畑中を見上げるように見つめながら、畑中からタオルを受け取り頭を拭いていると、その手を畑中が握る。
「航」
二人きりの教室で向かい合って…もしかしたら俺は見たくないシーンを見てしまうのだろうか。

あんなに自分から藤野を拒絶しておきながら
こんなに自分から藤野を離したくないなんて

突発的に俺は音楽準備室のドアを開けた。
「塩谷先生」
驚いた顔の藤野と、睨みつけてくる畑中。二人の顔を見た瞬間しまった、と一瞬考えたがもう後には引けない。
「お、お前が好きなのは俺だろ!」

BL小説や漫画ならこんなとき、かっこいいセリフを言うのに。咄嗟に出た言葉は何とも情けない。年下の生徒に、童貞准教授がこんなベタなことをいうなんて。
でも俺の精一杯の気持ちなんだ。
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