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6.宣戦布告!
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「ふ、藤野がどうかした?」
「俺がアイツと幼馴染なのは先生、知っておられますか」
「ああ、聞いたことあるよ。仲良さそうにしているもんな。いつも一緒で」
「それ、藤野に頼まれているんですよ」
頼まれて仲良くしている?
俺は畑中の言うことが理解できず、首を傾げると畑中は小さくため息をついて頭をかいた。
「俺と仲良くしたら、塩谷先生がきっと寂しがるだろうから一緒に居てくれって言われてるんです。あいつめっちゃ塩谷先生好きでしょ」
それを聞いた途端、俺はきっと鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていたと思う。何言ってんだ、あのバカ…!俺は思わず頭を抱えてしまう。
「お、お前そんな幼馴染の要望おかしいって思わなかったの」
「幼馴染ですから、断る理由もないですし」
ガクッと肩を落とす俺。結局、藤野は俺に飽きたわけではなく、駆け引きのために幼馴染の畑中を利用していたということか。呆れたやつだ。
「すまんな、お前にも迷惑かけて」
ため息まじりに謝ると、畑中は首を横に振った。
「…いえむしろ俺にとっては好都合なんです」
「は?」
「俺、小さい頃からアイツが好きなんで。まさか大学で准教授に持っていかれるとは思っていませんでした」
なんと。
「そ、そうなのか」
情報量が多すぎて目が回りそうだ。
「だから先生。アイツはわざと仲良くしてくれ、なんて言ってるけど俺このまま先生からアイツを奪って見せますから」
奪うって、藤野は俺の所有物じゃないんですけど?勝手に宣戦布告されて、俺はなんだかムカムカしてきた。
なんなんだよこの二人。俺は持っていたペンをぐっと握りしめ席を立った。
「恋愛ごっこならお前らだけでやれよ。俺を巻き込むな、勝手にしろ」
「…じゃあ、勝手にします」
畑中も席を立ち俺を一瞥すると、そのまま教室を出ていく。後に残された俺は彼の背中を睨みつけていた。
相変わらず藤野は俺の授業を最前列で聞いている。隣には畑中がいて。たまに藤野と目があっても俺はすぐ逸らすようになった。廊下ですれ違って手を振ってきても、授業が終わり話しかけてきても俺はそっけなく突き放した。大体、准教授と特定の生徒が仲良くし過ぎるのは良くない。授業に関係ない話ならしないに限るんだ。
それでも藤野はまだチラチラとこちらを見ている。授業中も、廊下でも。何か言いたそうに見ている。
俺がどんなに目を逸らしても。そのたびに胸が痛むようになってきた。
そんな日々が数週間、続いた。
『塩谷先生』
自分の名前を呼ぶ藤野の声を聞かなくなって、正直寂しくなったのは認めずにはいられない。それでも俺は、藤野と必要以上にかかわるのをやめていた。
しばらくするとチラホラ聞こえだした噂話。
「最近、藤野くんと塩谷先生のツーショット見ないね」
「もしかして破局なのかしら」
「いまや『畑中×藤野派』が増えてるしねぇ」
「私は塩谷先生との方がお似合いだと思うけど」
思わず苦笑いしてしまった。まるで俺が振られたみたいじゃないか。
「ねぇねぇ、しおっぺ大丈夫なの」
弁当を準備しそこねて学食でカレーライスを食べていたら、土井と佐々木が勝手に隣に座ってきた。
「何が?もしかしてまた藤野の話じゃないだろうな」
「それよ」
しつこいなあ、と俺は呟きながら水を飲む。
「あんなあ。ネタにするのはいいけど、現実と妄想を混在しないでくれないか」
「でも、藤野くんから直接聞いたのよ。これ、私達の秘密だから他の子には言ってないけど…。結構前から塩谷先生が気に入ってきたらしいの。理由までは教えてくれなかったけど。それで、最近仲良くなれて一緒にいたら楽しいって言ってたよ」
少し声のトーンを落として土井が藤野から聞いた話を教えてくれた。
気に入っていたって?結構前からって?
「俺がアイツと幼馴染なのは先生、知っておられますか」
「ああ、聞いたことあるよ。仲良さそうにしているもんな。いつも一緒で」
「それ、藤野に頼まれているんですよ」
頼まれて仲良くしている?
俺は畑中の言うことが理解できず、首を傾げると畑中は小さくため息をついて頭をかいた。
「俺と仲良くしたら、塩谷先生がきっと寂しがるだろうから一緒に居てくれって言われてるんです。あいつめっちゃ塩谷先生好きでしょ」
それを聞いた途端、俺はきっと鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていたと思う。何言ってんだ、あのバカ…!俺は思わず頭を抱えてしまう。
「お、お前そんな幼馴染の要望おかしいって思わなかったの」
「幼馴染ですから、断る理由もないですし」
ガクッと肩を落とす俺。結局、藤野は俺に飽きたわけではなく、駆け引きのために幼馴染の畑中を利用していたということか。呆れたやつだ。
「すまんな、お前にも迷惑かけて」
ため息まじりに謝ると、畑中は首を横に振った。
「…いえむしろ俺にとっては好都合なんです」
「は?」
「俺、小さい頃からアイツが好きなんで。まさか大学で准教授に持っていかれるとは思っていませんでした」
なんと。
「そ、そうなのか」
情報量が多すぎて目が回りそうだ。
「だから先生。アイツはわざと仲良くしてくれ、なんて言ってるけど俺このまま先生からアイツを奪って見せますから」
奪うって、藤野は俺の所有物じゃないんですけど?勝手に宣戦布告されて、俺はなんだかムカムカしてきた。
なんなんだよこの二人。俺は持っていたペンをぐっと握りしめ席を立った。
「恋愛ごっこならお前らだけでやれよ。俺を巻き込むな、勝手にしろ」
「…じゃあ、勝手にします」
畑中も席を立ち俺を一瞥すると、そのまま教室を出ていく。後に残された俺は彼の背中を睨みつけていた。
相変わらず藤野は俺の授業を最前列で聞いている。隣には畑中がいて。たまに藤野と目があっても俺はすぐ逸らすようになった。廊下ですれ違って手を振ってきても、授業が終わり話しかけてきても俺はそっけなく突き放した。大体、准教授と特定の生徒が仲良くし過ぎるのは良くない。授業に関係ない話ならしないに限るんだ。
それでも藤野はまだチラチラとこちらを見ている。授業中も、廊下でも。何か言いたそうに見ている。
俺がどんなに目を逸らしても。そのたびに胸が痛むようになってきた。
そんな日々が数週間、続いた。
『塩谷先生』
自分の名前を呼ぶ藤野の声を聞かなくなって、正直寂しくなったのは認めずにはいられない。それでも俺は、藤野と必要以上にかかわるのをやめていた。
しばらくするとチラホラ聞こえだした噂話。
「最近、藤野くんと塩谷先生のツーショット見ないね」
「もしかして破局なのかしら」
「いまや『畑中×藤野派』が増えてるしねぇ」
「私は塩谷先生との方がお似合いだと思うけど」
思わず苦笑いしてしまった。まるで俺が振られたみたいじゃないか。
「ねぇねぇ、しおっぺ大丈夫なの」
弁当を準備しそこねて学食でカレーライスを食べていたら、土井と佐々木が勝手に隣に座ってきた。
「何が?もしかしてまた藤野の話じゃないだろうな」
「それよ」
しつこいなあ、と俺は呟きながら水を飲む。
「あんなあ。ネタにするのはいいけど、現実と妄想を混在しないでくれないか」
「でも、藤野くんから直接聞いたのよ。これ、私達の秘密だから他の子には言ってないけど…。結構前から塩谷先生が気に入ってきたらしいの。理由までは教えてくれなかったけど。それで、最近仲良くなれて一緒にいたら楽しいって言ってたよ」
少し声のトーンを落として土井が藤野から聞いた話を教えてくれた。
気に入っていたって?結構前からって?
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