上 下
6 / 9

6.宣戦布告!

しおりを挟む
「ふ、藤野がどうかした?」
「俺がアイツと幼馴染なのは先生、知っておられますか」
「ああ、聞いたことあるよ。仲良さそうにしているもんな。いつも一緒で」
「それ、藤野に頼まれているんですよ」
頼まれて仲良くしている?
俺は畑中の言うことが理解できず、首を傾げると畑中は小さくため息をついて頭をかいた。
「俺と仲良くしたら、塩谷先生がきっと寂しがるだろうから一緒に居てくれって言われてるんです。あいつめっちゃ塩谷先生好きでしょ」
それを聞いた途端、俺はきっと鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていたと思う。何言ってんだ、あのバカ…!俺は思わず頭を抱えてしまう。
「お、お前そんな幼馴染の要望おかしいって思わなかったの」
「幼馴染ですから、断る理由もないですし」
ガクッと肩を落とす俺。結局、藤野は俺に飽きたわけではなく、駆け引きのために幼馴染の畑中を利用していたということか。呆れたやつだ。

「すまんな、お前にも迷惑かけて」
ため息まじりに謝ると、畑中は首を横に振った。
「…いえむしろ俺にとっては好都合なんです」
「は?」
「俺、小さい頃からアイツが好きなんで。まさか大学で准教授に持っていかれるとは思っていませんでした」
なんと。
「そ、そうなのか」
情報量が多すぎて目が回りそうだ。

「だから先生。アイツはわざと仲良くしてくれ、なんて言ってるけど俺このまま先生からアイツを奪って見せますから」

奪うって、藤野は俺の所有物じゃないんですけど?勝手に宣戦布告されて、俺はなんだかムカムカしてきた。
なんなんだよこの二人。俺は持っていたペンをぐっと握りしめ席を立った。
「恋愛ごっこならお前らだけでやれよ。俺を巻き込むな、勝手にしろ」
「…じゃあ、勝手にします」
畑中も席を立ち俺を一瞥すると、そのまま教室を出ていく。後に残された俺は彼の背中を睨みつけていた。
相変わらず藤野は俺の授業を最前列で聞いている。隣には畑中がいて。たまに藤野と目があっても俺はすぐ逸らすようになった。廊下ですれ違って手を振ってきても、授業が終わり話しかけてきても俺はそっけなく突き放した。大体、准教授と特定の生徒が仲良くし過ぎるのは良くない。授業に関係ない話ならしないに限るんだ。

それでも藤野はまだチラチラとこちらを見ている。授業中も、廊下でも。何か言いたそうに見ている。
俺がどんなに目を逸らしても。そのたびに胸が痛むようになってきた。
そんな日々が数週間、続いた。
『塩谷先生』
自分の名前を呼ぶ藤野の声を聞かなくなって、正直寂しくなったのは認めずにはいられない。それでも俺は、藤野と必要以上にかかわるのをやめていた。

しばらくするとチラホラ聞こえだした噂話。
「最近、藤野くんと塩谷先生のツーショット見ないね」
「もしかして破局なのかしら」
「いまや『畑中×藤野派』が増えてるしねぇ」
「私は塩谷先生との方がお似合いだと思うけど」
思わず苦笑いしてしまった。まるで俺が振られたみたいじゃないか。

「ねぇねぇ、しおっぺ大丈夫なの」
弁当を準備しそこねて学食でカレーライスを食べていたら、土井と佐々木が勝手に隣に座ってきた。
「何が?もしかしてまた藤野の話じゃないだろうな」
「それよ」
しつこいなあ、と俺は呟きながら水を飲む。
「あんなあ。ネタにするのはいいけど、現実と妄想を混在しないでくれないか」
「でも、藤野くんから直接聞いたのよ。これ、私達の秘密だから他の子には言ってないけど…。結構前から塩谷先生が気に入ってきたらしいの。理由までは教えてくれなかったけど。それで、最近仲良くなれて一緒にいたら楽しいって言ってたよ」
少し声のトーンを落として土井が藤野から聞いた話を教えてくれた。
気に入っていたって?結構前からって?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

いちゃらぶSS

はやしかわともえ
BL
既存の作品のカップルがいちゃいちゃしているだけのSS

「…俺の大好きな恋人が、最近クラスメイトの一人とすげぇ仲が良いんだけど…」『クラスメイトシリーズ番外編1』

そらも
BL
こちらの作品は『「??…クラスメイトのイケメンが、何故かオレの部活のジャージでオナニーしてるんだが…???」』のサッカー部万年補欠の地味メン藤枝いつぐ(ふじえだいつぐ)くんと、彼に何故かゾッコンな学年一の不良系イケメン矢代疾風(やしろはやて)くんが無事にくっつきめでたく恋人同士になったその後のなぜなにスクールラブ話になります♪ タイトル通り、ラブラブなはずの大好きないつぐくんと最近仲が良い人がいて、疾風くんが一人(遼太郎くんともっちーを巻き込んで)やきもきするお話です。 ※ R-18エロもので、♡(ハート)喘ぎ満載です。ですがエッチシーンは最後らへんまでないので、どうかご了承くださいませ。 ※ 素敵な表紙は、pixiv小説用フリー素材にて、『やまなし』様からお借りしました。ありがとうございます!(ちなみに表紙には『地味メンくんとイケメンくんのあれこれ、1』と書いてあります♪) ※ 2020/03/29 無事、番外編完結いたしました! ここまで長々とお付き合いくださり本当に感謝感謝であります♪

【完結】遍く、歪んだ花たちに。

古都まとい
BL
職場の部下 和泉周(いずみしゅう)は、はっきり言って根暗でオタクっぽい。目にかかる長い前髪に、覇気のない視線を隠す黒縁眼鏡。仕事ぶりは可もなく不可もなく。そう、凡人の中の凡人である。 和泉の直属の上司である村谷(むらや)はある日、ひょんなことから繁華街のホストクラブへと連れて行かれてしまう。そこで出会ったNo.1ホスト天音(あまね)には、どこか和泉の面影があって――。 「先輩、僕のこと何も知っちゃいないくせに」 No.1ホスト部下×堅物上司の現代BL。

俺のパンティーを透視する上司が職権乱用に「抱かせろ」と命令してきます

ルルオカ
BL
たまたま見かけた、部下のピンクのパンティー。 それからというもの、その尻を目で追っかけてむらむらして、とうとう彼を呼びだしたなら・・・。 「俺のパンティーを盗んだ犯人が『抱いてやろうか』と偉そうに誘ってきます」のおまけのBL短編です。R18。 元の小説は電子書籍で販売中。 詳細を知れるブログのリンクは↓にあります。

オレたちってなんだろうね。

アキノナツ
BL
この微妙なセックスはなんなのでしょう。 恋人同士だと思ってたオレだけど、気づいてしまった。 この人、他にイイ人が出来たんだ。 近日中に別れ話があると思ったのに、無い! 週一回、義務のようにセックス。 何なのですか、コレ? プライド高いから「別れよう」の一言が言えないのか?  振られるのも嫌なんだろうな。 ーーー分かったよ! 言わせてやるよ! 振られてやろうと頑張る話。 R18です。冒頭から致しております。 なんでもありの人向けでお願いします。 「春の短編祭2022:嘘と告白」に参加した作品です。

隠れSな攻めの短編集

あかさたな!
BL
こちら全話独立、オトナな短編集です。 1話1話完結しています。 いきなりオトナな内容に入るのでご注意を。 今回はソフトからドがつくくらいのSまで、いろんなタイプの攻めがみられる短編集です!隠れSとか、メガネSとか、年下Sとか…⁉︎ 【お仕置きで奥の処女をもらう参謀】【口の中をいじめる歯医者】 【独占欲で使用人をいじめる王様】 【無自覚Sがトイレを我慢させる】 【召喚された勇者は魔術師の性癖(ケモ耳)に巻き込まれる】 【勝手にイくことを許さない許嫁】 【胸の敏感なところだけでいかせたいいじめっ子】 【自称Sをしばく女装っ子の部下】 【魔王を公開処刑する勇者】 【酔うとエスになるカテキョ】 【虎視眈々と下剋上を狙うヴァンパイアの眷属】 【貴族坊ちゃんの弱みを握った庶民】 【主人を調教する奴隷】 2022/04/15を持って、こちらの短編集は完結とさせていただきます。 最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー 前作に ・年下攻め ・いじわるな溺愛攻め ・下剋上っぽい関係 短編集も完結してるで、プロフィールからぜひ!

幸せの温度

本郷アキ
BL
※ラブ度高めです。直接的な表現もありますので、苦手な方はご注意ください。 まだ産まれたばかりの葉月を置いて、両親は天国の門を叩いた。 俺がしっかりしなきゃ──そう思っていた兄、睦月《むつき》17歳の前に表れたのは、両親の親友だという浅黄陽《あさぎよう》33歳。 陽は本当の家族のように接してくれるけれど、血の繋がりのない偽物の家族は終わりにしなければならない、だってずっと家族じゃいられないでしょ? そんなのただの言い訳。 俺にあんまり触らないで。 俺の気持ちに気付かないで。 ……陽の手で触れられるとおかしくなってしまうから。 俺のこと好きでもないのに、どうしてあんなことをしたの? 少しずつ育っていった恋心は、告白前に失恋決定。 家事に育児に翻弄されながら、少しずつ家族の形が出来上がっていく。 そんな中、睦月をストーキングする男が現れて──!?

熱中症

こじらせた処女
BL
会社で熱中症になってしまった木野瀬 遼(きのせ りょう)(26)は、同居人で恋人でもある八瀬希一(やせ きいち)(29)に迎えに来てもらおうと電話するが…?

処理中です...