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参:明治村・前編
参の伍:明治村前編/反撃開始
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スキットルのキャップを受け取り片付けると説明を始めた。
「盃の事は親父たちには後から説明する。その時は一緒に挨拶するぞ。いいな?」
「はい」
本来、兄弟盃は先にオヤジたちに断って許可を得てから行うものだ。だが、何事にも例外って奴はある。なにしろ今回は状況が状況だ。田沼のやつの気持ちをしっかり受け止めて信頼を示す必要が有った。
オヤジたちも物分りはいいほうだ。悪いようにはしないはずだ。
「ところで、お前、靴のサイズは?」
「27です」
俺と同じだ。行ける。
「〝拳銃〟は持ってるか?」
「使い古しのガバメントなら」
ガバメント――コルトガバメント、アメリカ陸軍が正式採用していたオートマチック拳銃だ。使い古しというのが気になるが威力としては申し分ない。
そして、俺は内ポケットに吊るしたホルスターから、自分の愛銃を引き抜いた。
――SIG P320コンパクト 357SIG仕様――
米軍が正式採用している拳銃の中で新しい世代のものだ。モジュラー構造となっており使い手の状況に応じて細かなカスタマイズがしやすいのが特徴だ。
俺が使っているのは、コンパクトと言われる小型モデル。それでも弾数12発と悪くない。
「使え、2丁拳銃だ」
「はい」
「それと、靴を交換だ」
「わかりました」
田沼のやつは〝なぜ?〟とは聞かなかった。目上の者が白いものを白と言ったらそう理解するのがヤクザの世界だからだ。
しかしだからこそ上に立つ者には下の者の気持ちを機微に察する勘の良さと懐の広さが要求されるのだ。
俺の靴のやつの靴、手早く履き替えると説明を続ける。
「俺のシューズのかかとには仕込みがしてある。右がさっき使った電磁パルス、左がフラッシュグレネード。かかとの端っこを思い切り叩きつければ作動する」
「はい」
「それともう一つ」
これが一番の重要な肝だった。
「お前には囮になってもらう。奴の目を惹き付けてもらう。その間に俺は場所を決めやつを仕留めるためのトラップを仕掛ける」
危険な仕事だった。だが、こいつの体力と勘の良さだったら絶対にやってくれる。
「わかりました」
即答だった。迷いは一切ない。
「頼んだぞ〝カツ〟」
俺は田沼を愛称で呼ぶ。名前が有勝だから〝カツ〟
「任せてください〝兄貴〟」
奴は満足げに笑みを浮かべながら、俺の渡したSIGを手にした。
左にガバメント、右にSIG、これで準備は決まった。
耳をすませば、蜂のような羽音が聞こえる。来やがった。あれで終わりではなかったのだ。
俺は腰の裏からカスタムスタンガンを引き抜きながら。カツのやつに目線で合図をした。
「レンガ通りで会おう」
そう声を発する。だが俺はその次に声を発さずに唇だけ動かした。
「了解です」
そう声を発した後にカツは二度頷いた。
俺はスタンガンを頭上へと構える。今日で二度目の高圧電磁パルスモードだ。周囲に高周波の電磁ノイズを撒き散らし電子回路を吹っ飛ばすことができる。
――バチィッ!――
それを合図として俺が走り出した時、カツのやつも一気に走り出した。ただし向かうのは俺とは別の方向。
俺は気配を消しながら、明治村の敷地内を縦断するSLの線路へと足を運んだ。そして足音を潜めながら速やかに走り出したのである。
「盃の事は親父たちには後から説明する。その時は一緒に挨拶するぞ。いいな?」
「はい」
本来、兄弟盃は先にオヤジたちに断って許可を得てから行うものだ。だが、何事にも例外って奴はある。なにしろ今回は状況が状況だ。田沼のやつの気持ちをしっかり受け止めて信頼を示す必要が有った。
オヤジたちも物分りはいいほうだ。悪いようにはしないはずだ。
「ところで、お前、靴のサイズは?」
「27です」
俺と同じだ。行ける。
「〝拳銃〟は持ってるか?」
「使い古しのガバメントなら」
ガバメント――コルトガバメント、アメリカ陸軍が正式採用していたオートマチック拳銃だ。使い古しというのが気になるが威力としては申し分ない。
そして、俺は内ポケットに吊るしたホルスターから、自分の愛銃を引き抜いた。
――SIG P320コンパクト 357SIG仕様――
米軍が正式採用している拳銃の中で新しい世代のものだ。モジュラー構造となっており使い手の状況に応じて細かなカスタマイズがしやすいのが特徴だ。
俺が使っているのは、コンパクトと言われる小型モデル。それでも弾数12発と悪くない。
「使え、2丁拳銃だ」
「はい」
「それと、靴を交換だ」
「わかりました」
田沼のやつは〝なぜ?〟とは聞かなかった。目上の者が白いものを白と言ったらそう理解するのがヤクザの世界だからだ。
しかしだからこそ上に立つ者には下の者の気持ちを機微に察する勘の良さと懐の広さが要求されるのだ。
俺の靴のやつの靴、手早く履き替えると説明を続ける。
「俺のシューズのかかとには仕込みがしてある。右がさっき使った電磁パルス、左がフラッシュグレネード。かかとの端っこを思い切り叩きつければ作動する」
「はい」
「それともう一つ」
これが一番の重要な肝だった。
「お前には囮になってもらう。奴の目を惹き付けてもらう。その間に俺は場所を決めやつを仕留めるためのトラップを仕掛ける」
危険な仕事だった。だが、こいつの体力と勘の良さだったら絶対にやってくれる。
「わかりました」
即答だった。迷いは一切ない。
「頼んだぞ〝カツ〟」
俺は田沼を愛称で呼ぶ。名前が有勝だから〝カツ〟
「任せてください〝兄貴〟」
奴は満足げに笑みを浮かべながら、俺の渡したSIGを手にした。
左にガバメント、右にSIG、これで準備は決まった。
耳をすませば、蜂のような羽音が聞こえる。来やがった。あれで終わりではなかったのだ。
俺は腰の裏からカスタムスタンガンを引き抜きながら。カツのやつに目線で合図をした。
「レンガ通りで会おう」
そう声を発する。だが俺はその次に声を発さずに唇だけ動かした。
「了解です」
そう声を発した後にカツは二度頷いた。
俺はスタンガンを頭上へと構える。今日で二度目の高圧電磁パルスモードだ。周囲に高周波の電磁ノイズを撒き散らし電子回路を吹っ飛ばすことができる。
――バチィッ!――
それを合図として俺が走り出した時、カツのやつも一気に走り出した。ただし向かうのは俺とは別の方向。
俺は気配を消しながら、明治村の敷地内を縦断するSLの線路へと足を運んだ。そして足音を潜めながら速やかに走り出したのである。
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