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幕間3:明治村近傍
幕間3-1:明治村近傍/潜入開始
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「呼び出し有るまで待機だ。呼ばれたらすぐ来いよ」
俺、フォーが言えば3子と6美が頷いている。
「わかった――」
「気をつけてね、リーダー」
「おう」
3子と6美は気が小さい。俺と離れて待機という事になり心細そうだ。
一方で――
「お前らも待機だ。だが、いつでも出れるように体を温めとけ」
「わかりました」
「了解です」
「いつでも呼んでください」
「おう」
エイトのオヤジが声を発すれば、オヤジの子分である3人が返事をする。すでにアバターボディの作動チェックを終えていつでも戦闘可能な状態だった。
そんな彼らにオヤジが言う。
「いいか、事が長引けば〝ヤツ〟が必ず現れる。そうなった時に〝客人〟を無事に帰すのが重要になる。フォーのところの嬢ちゃんたちもその時はしっかり気張ってくれ。いいな?」
オヤジの言葉に3子と6美も頷いていた。
「それじゃ行ってくるぜ」
「行ってらっしゃい」
「気をつけて」
その言葉を残してエイトのオヤジが偽装トレーラーから降りていく。その降りぎわの際におれは3子たちに声をかけた。
「それで、他の連中からの情報はまだだな?」
「向こうのお客さんでしょ?」
「名前以外はまだだよ?」
「わかった。何かつかめたらすぐ知らせろ」
「OK!」
「気をつけてね!」
「おう」
俺も3子たちとやり取りしてトレーラーから降りる。そしてエイトの後を追ったのだった。
† † †
トレーラーはすでに営業を終えて人影の途絶えた業務用駐車場へと止められていた。
だが、俺・フォーとエイトの親父は当たり前に正面から入ったりしない。明治村の敷地を取り囲むヤブの中へと足を踏み入れていく。
急な崖をおりてゆき、明治村の敷地へと裏手から入っていく。その途中――
「まて、エイト」
「なんだ」
「センサーだ。公共施設でよく使われているレーザーセンサーだ」
レーザーの光は目には見えにくい低発光タイプだが、俺達の暗視機能付きのカメラなら見抜くことができる。
「ファイブの野郎、手ぇ抜いてんじゃねえだろうな? レーザー切れてねえぞ」
エイトの親父は出発前にファイブに施設の警備システムの掌握を依頼している。それがしくじってるとしたら流石にまずい。だがエイトの親父は言う。
「大丈夫だ。あれはあれで仕事は手ぇ抜かねえよ」
エイトは何も気にせずにそのまま進んで行く。するとエイトがセンサー掛かりそうになるとギリギリのところでセンサーが停止していた。俺たちの行動挙動をわかった上でギリギリのところで介入しているのだ。
「マジかよ」
俺はあきれつつ後を追った。目に前に明治村の敷地が迫る。そして、敷地を取り囲むフェンスを飛び越えると俺たちは明治村の内部へと潜入したのだ。
「さぁ、おっぱじめるぞ。〝探して〟くれ」
「おう」
エイトの親父の求めに応じて俺は自らの固有機能を作動させた。
着込んでるパーカーのフードを少しまくると本来の顔面を露出させる。俺の字名は『ビークラスターのフォー』――、ビークラスターとは〝蜂の巣〟の事。すなわち俺のアバターボディの頭部は蜂の巣そのものなのだ。
「行け、客人を探せ」
俺は声に出して指示する。俺の顔面の蜂の巣には、超小型の蜂形のインセクトドローンが無数に仕込まれている。敵索、潜入、システムハッキング、破壊、殺傷、爆破――とその用途は多彩だ。偵察任務なんか朝飯前だ。
――ウゥゥゥン――
ほんの僅かに唸るような羽音をたてながら十数匹ほどの〝蜂〟どもが飛び去っていく。そしてまたたく間に活動エリアを広げるのだ。そして俺の意識の中、蜂たちが掴んだ情報が次々に飛び込んでくる。複数の視点、複数の聴覚、常人だったら混乱して発狂しそうになる情報の渦の中、それを巧みに操り、必要とする情報を掴むのは熟達とセンスが要求される。
そして俺はそれを物にした。今でもこのインセクトドローンの群れでの制御を行えるのは俺だけなのだ。
「あいかわらず見事だな。蜂が勝手に動いているようにしか見えねえ」
エイトの親父が感心して言う。
「前に一回、このガトリング頭になる前に試したことがあるんだが、意識がちぎれそうになった。4つか5つを同時に飛ばしたが自分が今何を見ているのかがわからなくなった」
「それでそれをやめて、今のその頭になったのか?」
「あぁ、俺は目の前の獲物を一直線に狙うのが性に合ってる」
「だろうな」
複数同時のことをこなすのが得意な俺と違い、エイトの親父は正面から問題に立ち向かおうとする正面突破を得意とする武闘派だ。それを最大限に活かすために、高出力のレーザーガトリングガンと言うわかりやすいほどにストレートな攻撃一点主義な頭部を付けているのだ。
「おっと、ビンゴ」
「見つけたか?」
「あぁ、〝3丁目〟のあたりを彷徨いてる。そのまま北へ〝4丁目〟の方に移動してる」
「そうか。そのあたりに開けている場所が――」
「あるぜ。無声堂って武術道場の前に広場がある」
「よし、そこに行く。仕掛けるぞ」
「オーケー」
俺たちが出てきたのはSLの鉄道駅のあるところだ。名古屋駅の銘がある。そこから出て右手に向かえば無声堂だった。俺が一歩引いた場所に控えると、エイトの親父は悠然と進んでいく。悠長に歩いてくる来客の二人を待ち受けようって魂胆だ。
「来るぜ。もうすぐだ」
「おう」
俺の声にエイトは答えた。
さぁ、始めようか。とびきり面白いお遊びをな。
俺、フォーが言えば3子と6美が頷いている。
「わかった――」
「気をつけてね、リーダー」
「おう」
3子と6美は気が小さい。俺と離れて待機という事になり心細そうだ。
一方で――
「お前らも待機だ。だが、いつでも出れるように体を温めとけ」
「わかりました」
「了解です」
「いつでも呼んでください」
「おう」
エイトのオヤジが声を発すれば、オヤジの子分である3人が返事をする。すでにアバターボディの作動チェックを終えていつでも戦闘可能な状態だった。
そんな彼らにオヤジが言う。
「いいか、事が長引けば〝ヤツ〟が必ず現れる。そうなった時に〝客人〟を無事に帰すのが重要になる。フォーのところの嬢ちゃんたちもその時はしっかり気張ってくれ。いいな?」
オヤジの言葉に3子と6美も頷いていた。
「それじゃ行ってくるぜ」
「行ってらっしゃい」
「気をつけて」
その言葉を残してエイトのオヤジが偽装トレーラーから降りていく。その降りぎわの際におれは3子たちに声をかけた。
「それで、他の連中からの情報はまだだな?」
「向こうのお客さんでしょ?」
「名前以外はまだだよ?」
「わかった。何かつかめたらすぐ知らせろ」
「OK!」
「気をつけてね!」
「おう」
俺も3子たちとやり取りしてトレーラーから降りる。そしてエイトの後を追ったのだった。
† † †
トレーラーはすでに営業を終えて人影の途絶えた業務用駐車場へと止められていた。
だが、俺・フォーとエイトの親父は当たり前に正面から入ったりしない。明治村の敷地を取り囲むヤブの中へと足を踏み入れていく。
急な崖をおりてゆき、明治村の敷地へと裏手から入っていく。その途中――
「まて、エイト」
「なんだ」
「センサーだ。公共施設でよく使われているレーザーセンサーだ」
レーザーの光は目には見えにくい低発光タイプだが、俺達の暗視機能付きのカメラなら見抜くことができる。
「ファイブの野郎、手ぇ抜いてんじゃねえだろうな? レーザー切れてねえぞ」
エイトの親父は出発前にファイブに施設の警備システムの掌握を依頼している。それがしくじってるとしたら流石にまずい。だがエイトの親父は言う。
「大丈夫だ。あれはあれで仕事は手ぇ抜かねえよ」
エイトは何も気にせずにそのまま進んで行く。するとエイトがセンサー掛かりそうになるとギリギリのところでセンサーが停止していた。俺たちの行動挙動をわかった上でギリギリのところで介入しているのだ。
「マジかよ」
俺はあきれつつ後を追った。目に前に明治村の敷地が迫る。そして、敷地を取り囲むフェンスを飛び越えると俺たちは明治村の内部へと潜入したのだ。
「さぁ、おっぱじめるぞ。〝探して〟くれ」
「おう」
エイトの親父の求めに応じて俺は自らの固有機能を作動させた。
着込んでるパーカーのフードを少しまくると本来の顔面を露出させる。俺の字名は『ビークラスターのフォー』――、ビークラスターとは〝蜂の巣〟の事。すなわち俺のアバターボディの頭部は蜂の巣そのものなのだ。
「行け、客人を探せ」
俺は声に出して指示する。俺の顔面の蜂の巣には、超小型の蜂形のインセクトドローンが無数に仕込まれている。敵索、潜入、システムハッキング、破壊、殺傷、爆破――とその用途は多彩だ。偵察任務なんか朝飯前だ。
――ウゥゥゥン――
ほんの僅かに唸るような羽音をたてながら十数匹ほどの〝蜂〟どもが飛び去っていく。そしてまたたく間に活動エリアを広げるのだ。そして俺の意識の中、蜂たちが掴んだ情報が次々に飛び込んでくる。複数の視点、複数の聴覚、常人だったら混乱して発狂しそうになる情報の渦の中、それを巧みに操り、必要とする情報を掴むのは熟達とセンスが要求される。
そして俺はそれを物にした。今でもこのインセクトドローンの群れでの制御を行えるのは俺だけなのだ。
「あいかわらず見事だな。蜂が勝手に動いているようにしか見えねえ」
エイトの親父が感心して言う。
「前に一回、このガトリング頭になる前に試したことがあるんだが、意識がちぎれそうになった。4つか5つを同時に飛ばしたが自分が今何を見ているのかがわからなくなった」
「それでそれをやめて、今のその頭になったのか?」
「あぁ、俺は目の前の獲物を一直線に狙うのが性に合ってる」
「だろうな」
複数同時のことをこなすのが得意な俺と違い、エイトの親父は正面から問題に立ち向かおうとする正面突破を得意とする武闘派だ。それを最大限に活かすために、高出力のレーザーガトリングガンと言うわかりやすいほどにストレートな攻撃一点主義な頭部を付けているのだ。
「おっと、ビンゴ」
「見つけたか?」
「あぁ、〝3丁目〟のあたりを彷徨いてる。そのまま北へ〝4丁目〟の方に移動してる」
「そうか。そのあたりに開けている場所が――」
「あるぜ。無声堂って武術道場の前に広場がある」
「よし、そこに行く。仕掛けるぞ」
「オーケー」
俺たちが出てきたのはSLの鉄道駅のあるところだ。名古屋駅の銘がある。そこから出て右手に向かえば無声堂だった。俺が一歩引いた場所に控えると、エイトの親父は悠然と進んでいく。悠長に歩いてくる来客の二人を待ち受けようって魂胆だ。
「来るぜ。もうすぐだ」
「おう」
俺の声にエイトは答えた。
さぁ、始めようか。とびきり面白いお遊びをな。
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