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2.婚約破棄まであと5ヶ月
5.悪役令嬢とちょっとしたトラブル
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街は着くと馬車はゆっくりと停まった。
「さあ、着いた。行くぞ。」
アレンにエスコートされ、私も馬車を降りた。
そこからは出店が立ち並ぶ賑やかな大通りが見えた。
夏祭りが近いだけあって通常より人手が多い。
この時期の出店には夏祭りの装飾品や食べ物、輸入品など珍しいものが店頭に並ぶから大通りを歩くだけでも楽しい。
でもここからじゃ目的のレストランまでは少し歩かないといけない。
普段なら目的の店の前まで馬車で行くのにずいぶん離れた場所に停まったわね。
もしかして店を間違えたのかしら?
「アレン様、レストランはもう少し離れた場所だと思いますが…。」
「ああ。でももうすぐ夏祭りだろ?たまには街の様子を見て歩くのもいいかと思って、ここで降りたんだ。欲しいものがあればキーナに贈ろう。」
アレンの思いがけない提案に私は固まった。
「…アレン様、何かあったんですか?いつもと別人ですよ?」
あ…。思わず本音を言ってしまった。
「ふ、言っただろ?食事より俺とのデートを楽しませる努力するって。」
アレンは不敵な笑みを浮かべ私を見た。
怖っ!!
「いや、だから、それは…。」
冗談ですわ、そう誤魔化そうと思った。
まあ、でも今更繕っても遅いわよね。
どうせ私たちが一緒になる未来はない。
腹を括った私は咳払いを一つして、笑わずにアレンを見て言った。
「じゃあ期待してますわ。」
「ふっ、素直でよろしい。じゃあ大通りを散策してみようか。」
アレンは少し笑って私の前を歩き出した。
私は一歩下がってアレンの後ろを付いていく。
彼のがっしりした肩と背中は頼もしい。
ー…アレン様は随分背が高くなったわね。
子供の頃はすごく華奢で身長も私より低かったが、今では私が見上げるほど背が高い。あの頃はあまり身分だとか婚約者の肩書きに縛られずに2人で遊んでいた。
それなのに、いつの間にか私たちには心にも体にも大きな隔たりが出来てしまった。
そういえばアレンが冷たくなったのは、私が『理想の婚約者』にこだわるようになった頃かもしれない。
昔、一度だけアレンは私に「キーナはそのままでいてくれ。」と言った。でも私は周りの大人の期待に応えたくてその言葉を無視したんだ。
ああ、そうか。
だからアレン様は私に愛想を尽かしたんだ。
それに比べてメアリーは素直だ。
自分の気持ちを偽らずに、豊かな表情でストレートに気持ちを伝えてくる。
アレンはメアリーのそういう自由で飾らない性格に惹かれたのかもしれない。
私が下を向いた時、後ろから悲鳴が聞こえた。
振り返れば人混みから1人の男がこちらに向かって走ってきた。
「ひったくりよ!誰か捕まえて!!」
私は咄嗟に火魔法で男のズボンの裾に火を付けた。
もちろん火傷しないように魔法をかけた火だったが、男は驚きバランスを崩して転んだ。そして私が魔法を使った事に気付き睨み付けられた。
「このクソ女っ!!」
あら、失礼な男。
どうせなら火傷する火を付けてあげれば良かったわ。
ガキンッー!!
男の目の前にアレンの剣が刺さった。
「言葉を慎め。死刑にしてやろうか?」
いつの間にかアレンは男の首根っこを掴んでいた。ものすごい殺気を放った顔で男を見下している。男は真っ青になり恐怖で口をパクパクさせている。
正直、見ているだけの私でもアレンに恐怖を感じた。
すぐに衛兵がやって来て男は連行されていった。
「さあ、着いた。行くぞ。」
アレンにエスコートされ、私も馬車を降りた。
そこからは出店が立ち並ぶ賑やかな大通りが見えた。
夏祭りが近いだけあって通常より人手が多い。
この時期の出店には夏祭りの装飾品や食べ物、輸入品など珍しいものが店頭に並ぶから大通りを歩くだけでも楽しい。
でもここからじゃ目的のレストランまでは少し歩かないといけない。
普段なら目的の店の前まで馬車で行くのにずいぶん離れた場所に停まったわね。
もしかして店を間違えたのかしら?
「アレン様、レストランはもう少し離れた場所だと思いますが…。」
「ああ。でももうすぐ夏祭りだろ?たまには街の様子を見て歩くのもいいかと思って、ここで降りたんだ。欲しいものがあればキーナに贈ろう。」
アレンの思いがけない提案に私は固まった。
「…アレン様、何かあったんですか?いつもと別人ですよ?」
あ…。思わず本音を言ってしまった。
「ふ、言っただろ?食事より俺とのデートを楽しませる努力するって。」
アレンは不敵な笑みを浮かべ私を見た。
怖っ!!
「いや、だから、それは…。」
冗談ですわ、そう誤魔化そうと思った。
まあ、でも今更繕っても遅いわよね。
どうせ私たちが一緒になる未来はない。
腹を括った私は咳払いを一つして、笑わずにアレンを見て言った。
「じゃあ期待してますわ。」
「ふっ、素直でよろしい。じゃあ大通りを散策してみようか。」
アレンは少し笑って私の前を歩き出した。
私は一歩下がってアレンの後ろを付いていく。
彼のがっしりした肩と背中は頼もしい。
ー…アレン様は随分背が高くなったわね。
子供の頃はすごく華奢で身長も私より低かったが、今では私が見上げるほど背が高い。あの頃はあまり身分だとか婚約者の肩書きに縛られずに2人で遊んでいた。
それなのに、いつの間にか私たちには心にも体にも大きな隔たりが出来てしまった。
そういえばアレンが冷たくなったのは、私が『理想の婚約者』にこだわるようになった頃かもしれない。
昔、一度だけアレンは私に「キーナはそのままでいてくれ。」と言った。でも私は周りの大人の期待に応えたくてその言葉を無視したんだ。
ああ、そうか。
だからアレン様は私に愛想を尽かしたんだ。
それに比べてメアリーは素直だ。
自分の気持ちを偽らずに、豊かな表情でストレートに気持ちを伝えてくる。
アレンはメアリーのそういう自由で飾らない性格に惹かれたのかもしれない。
私が下を向いた時、後ろから悲鳴が聞こえた。
振り返れば人混みから1人の男がこちらに向かって走ってきた。
「ひったくりよ!誰か捕まえて!!」
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あら、失礼な男。
どうせなら火傷する火を付けてあげれば良かったわ。
ガキンッー!!
男の目の前にアレンの剣が刺さった。
「言葉を慎め。死刑にしてやろうか?」
いつの間にかアレンは男の首根っこを掴んでいた。ものすごい殺気を放った顔で男を見下している。男は真っ青になり恐怖で口をパクパクさせている。
正直、見ているだけの私でもアレンに恐怖を感じた。
すぐに衛兵がやって来て男は連行されていった。
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