悪役令嬢vs腹黒王子〜時々性悪ヒロインと毒舌執事〜

そら。

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2.婚約破棄まであと5ヶ月

4.悪役令嬢は話題を探す

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「最近は変わりないか?」

「え?」

街へ向かう道中、馬車の中でアレンは聞いてきた。

こうして2人で馬車で出掛けるのは数ヶ月ぶりのため私はなんとなく緊張してしまう。
まあ、この緊張感は先ほどの『楽しみなのはアレン様とのデートじゃなくて食事』発言のせいもあるのだが。緊張というより、かなり動揺している…。
そしてさっきから胸の鼓動がうるさい。

「ふっ、変わりないか、と聞いたんだ。」

またアレン様が笑った!!

メアリーに向けるような優しい笑顔ではないが、少し笑い出すのを堪えるような表情だった。

「あ、えっと、はいっ。変わりないです!」

「…そうか。」

アレンはそれだけ言うと外の景色を眺めた。

か、会話が終わってしまった!!

普段の私なら知的な令嬢を演出するため、次に続く話題提供をするのに今日は会話を終わらせてしまった。

アレン様はがっかりしていないだろうか。
私は彼の方をチラッと盗み見をすると、バチっと目が合った。

今よ!話題を振るのよ!
いや、それともさっきの失言を先に謝る?でも彼は怒っているように見えなかったし、わざわざ掘り返すこともないかしら?いや、でも…。
あー、アレン様がまだ私を見ている!
えーっと、話題、話題、話題!

「ー…っ、……!」

焦れば焦るほど言葉が出てこない。顔は緊張で熱を持つ。きっと私の顔は真っ赤だろう。

「ぷっ。変な顔。」

アレンは下を向き吹き出した。

「へっ、変な顔!?」

私は思わず両手で顔を隠した。するとアレンは咳払いをした。

「いや、嘘。ごめん。赤くなったキーナが可愛くてからかいたくなった。」

手で口を押さえ、ちょっと面白がるような笑顔で私を見つめた。

「ーーーっ!」

可愛い!?そんな事、久しぶりに言われた。
社交界やパーティーで着飾った格好をした時は「きれいだね」とか「可愛いよ」と言ってくれるが、その時もほぼ無表情で形式的な褒め言葉だった。

でも今は私と自然に接しているように感じる。

急にどうして?
5ヶ月後には私を捨てるくせに…。
メアリーが好きなくせに…。

そう思った瞬間、胸の奥が痛くなった。

理想の婚約者なら笑顔で交わすだろう。でも今は無理に笑顔なんて作れない。

「…今日のアレン様、いつもと違いますわ。」

私は悔しくて、つい皮肉っぽく言ってしまった。

「そうか?でもキーナもいつもより表情豊かで俺は楽しい。」

そう言って余裕の笑みを浮かべるアレンがすごく憎らしかったが、久しぶりにアレンが私とちゃんと向き合ってくれている気がして少し嬉しさもあった。
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