悪役令嬢vs腹黒王子〜時々性悪ヒロインと毒舌執事〜

そら。

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1.婚約破棄まであと6ヶ月

13.腹黒王子と光魔法の使い手

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嵐の中隣国へ向かう道中、馬車は泥濘にハマってしまい馬車が横転した。

俺が魔法で直そうとした時、1人の少女が現れた。

「大丈夫ですか?」

それがメアリー・ブライトニーとの出会いだった。

彼女は高難度と言われている光魔法を簡単に操り、壊れた馬車と俺たちの怪我を治した。

話を聞けば、まだ俺と同い年のメアリーは子供の頃から光魔法が得意だったと言う。
『聖女の生まれ変わり』なんて言い伝えがあったが、もしかしたら彼女がそうなのかもしれない。
仮に聖女でなくても、これほどの光魔法の使い手は貴重な存在だ。きっと国を代表するような光魔導士になる。

そう思った俺は、すぐに国王に知らせてエレメリア学園に転入させるよう提案した。

メアリーにもその話をすると嬉しそうに承諾した。

手続き自体は1ヶ月程度で終わり、メアリーのエレメリア学園の生活が始まった。

しかし自由奔放な彼女の振る舞いは見ていてヒヤヒヤする事ばかりだった。

まず常識やマナーがなっていない。
彼女のクラスからは、陰で彼女を見下しバカにする生徒もいるようだった。いじめの対象にならないか心配した事もあったが、彼女は何故か生徒会メンバーとはすぐに打ち解け可愛がられた。
生徒会のメンバーがバックに付いていればいじめられることもないだろう。
俺が安心したのも束の間で、やはり彼女の言動は非常識だった。

俺が気を付けるように注意すると、泣き出し村へ帰ると言い出す。
いっその事帰ってくれとも思ったが、彼女ほどの光魔法の使い手を逃すのは惜しい。
それに弟たちに彼女が利用される可能性もある。だったら俺の手元に置いておきたい。


ある日、俺はメアリーを生徒会室に呼び出した。

「メアリー、学園の生活には慣れたか?」

「うーん、クラスのみんなから嫌われてるから辛いわ。アレン様からもなんとか言ってよ。」

メアリーは口を尖らせ不貞腐れたように自分の髪をいじる。

あー、なんだよ、その態度は。
子供じゃないんだから勘弁してくれよ。

俺は本音をぐっと飲み込み「ああ、注意しておく。でもみんなも戸惑ってるんだよ。光魔法の使い手は珍しいからね。」と、優しく笑った。

たった1ヶ月の付き合いだが、メアリーは誉めれば伸びるタイプだ。注意するとすぐにへそを曲げる。
思っていたより単純な性格だ。

「そういえば、この前ベリー王国の王様からお手紙をいただいたの。」

メアリーは俺に自慢するようにニヤッと笑った。

なぜ隣国のベリー王国から手紙なんか来るんだ。

まさか…。

「嵐の日にアレン様たちを光魔法で助けた時があったでしょ?近くでベリー王国の兵士が見ていたんですって。でね、私の力をぜひ貸して欲しいって頼まれちゃった。」

メアリーはベリー王国から来た手紙を俺に渡した。
ベリー王国の封蝋が押された封筒には、国王の直筆でその内容が書かれていた。

『フィルコート王国より好待遇にてメアリー様をお招きいたします。我が国の光魔導士としてどうかご尽力いただけないでしょうか。』

やっぱりな。
どこの国でも数少ない光魔導士は引くて数多だ。

「さすがメアリーだな。きっとどの国もメアリーが必要なんだ。それでもフィルコートに残ってくれるかい?」

「うーん、まあ生まれた国だしフィルコートに愛着はあるわ。でももういじめられるのは嫌。アレン様が守ってくれる?」

「もちろんだよ。」

「でもぉー、婚約者がいるアレン様に守ってもらったらさらにいじめられそうよね。」

…何が言いたいんだ、こいつは。


メアリーは、可愛らしくパチンと手を打った。

「そうだ。キーナ様と婚約破棄してくださらない?フリーのアレン様に守ってもらえるのなら文句を言う人もいないでしょう?」

ー…そう来たか。

「それは難しいかな。俺たちは自分たちの意思で婚約したんじゃなくて、親が決めた婚約だからな。国政に関わる事なんだ。簡単に破棄は出来ないよ。」

「じゃあベリー王国へ行くわ。」

メアリーはプイッと俺に背を向けた。
正直、剣を持っていたら斬りつけていた。

「分かったよ、メアリー。でもそんなすぐには婚約破棄なんてできない。準備が必要なんだ。」

「じゃあいつまでにしてくれるの?」

メアリーは振り向いて頭を傾げた。


「キーナには悪いが、6ヶ月後の卒業パーティーで婚約破棄宣言をする。」

俺はキーナと婚約破棄する気なんて全くない。
でもとりあえず6ヶ月あれば、メアリーをフィルコートに留まらせるように仕組めるはずだ。

「優しいアレン様がそんな酷い事ができるのかしら?」

メアリーは楽しむように微笑む。

ー…お前が言い出したんだろ?

「約束するよ、メアリー。」

そう言って俺はメアリーの首を掴みたい衝動を殺して、黄金に輝く絹のようなきれいな髪に優しく触れた。
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