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1.婚約破棄まであと6ヶ月
12.腹黒王子と婚約者
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俺の人生は退屈そのものだ。
フィルコート王国の第一王子として生まれたアレン・デイビスはため息をついた。
今日はこれから国事のため馬車で3時間かかる隣国へ向かわなければならない。
隣国の王に簡単な挨拶をするだけの形式的でくだらない仕事だ。
そのためにわざわざ3時間もかけて移動しなければならない。
しかも天気も悪く、おそらく夜には嵐になるだろう。
準備を終え自室を出ると従者からキーナが尋ねてきたと連絡を受けた。
常に第一王子として言動を見られている俺は従者に対しても柔和な態度で応接室に通すように伝えた。
その努力あって、俺は世間から「完全無欠な微笑み王子」と呼ばれている。
最悪なネーミングセンスだ。
そして次期国王とも言われている俺だが、継承争い中の腹違いの弟が4人もいるため気を抜くことはできない。
応接室の前に着くと再びため息が出そうになる。
中には婚約者のキーナ・ハンドリー公爵令嬢がいる。
きっと今日も婚約者らしい態度で俺に接するだろう。
子供の頃、素直だった彼女とはよく一緒に遊んでいた。小さいながらキーナは俺の作り笑いを見破り「無理に笑わなくていい。」と言ってくれた。
その時から俺はキーナに対しては作り笑いをするのをやめた。
しかし時が経つにつれ、彼女の方が「第一王子の婚約者」という仮面を被り、本音を言わなくなってしまった。
彼女の立場を考えれば仕方のない事かもしれないが、俺はなんだか裏切られたようで無性に腹が立った。
そして彼女に「ジル」という従者が出来てからは余計にその感情は強くなっていった。
彼女はジルだけには本音で接しているようだったからだ。本音で接し、楽しそうに笑っている。
俺といる時とは大違いだ。
最近では彼女と会う事さえ気が重く感じる。
まあ、そんな俺の態度にもキーナは気が付いているが、見ないフリをしている。
その度、「俺を見て本音で話せよ」と怒鳴りたくなるのだ。
応接室に入れば美しく着飾ったキーナが優雅な笑みで俺を迎えた。
「おはようございます、アレン様。出発の前にどうしてもお会いしたくてお伺いしました。お忙しい中申し訳ございません。」
相変わらず形式的な挨拶だ。
「ああ、気にしないでくれ。だが、もう出掛ける時間なんだ。」
「ええ、すぐにお暇しますわ。ただこれだけお渡ししたくて。旅のお守りにお待ちください。かなり天気が荒れるようなのでお気を付けてください。」
キーナに渡されたのは赤い石が付いたネックレスだった。石からはキーナの魔力が感じられる。
「これは?」
「私の魔力を込めた石です。寒い時などに息を吹きかければ熱を発しますし、焚き火としても使えます。私にはこんなことぐらいしか出来ませんが…。」
キーナは少し照れながら笑う。
ああ、きっとこれは本心だ。
魔法が得意ではない彼女が必死に魔力を込めたのだろう。
久しぶりに見たキーナ自身の感情に心のわだかまりがすっと消える。
「ありがとう。」
俺がネックレスを付けようとすると、キーナが「私に付けさせてください。」と後ろに回った。
彼女の細い手が俺の首元に触れる。
ネックレスを付けた後、彼女は聞こえないほどの小さな声で祈るように囁いた。
「どうかご無事でお帰りくださいませ。」
当たり前だ。
お前が心から望むなら必ず無事で戻って来てやる。
俺は心の中で呟いた。
フィルコート王国の第一王子として生まれたアレン・デイビスはため息をついた。
今日はこれから国事のため馬車で3時間かかる隣国へ向かわなければならない。
隣国の王に簡単な挨拶をするだけの形式的でくだらない仕事だ。
そのためにわざわざ3時間もかけて移動しなければならない。
しかも天気も悪く、おそらく夜には嵐になるだろう。
準備を終え自室を出ると従者からキーナが尋ねてきたと連絡を受けた。
常に第一王子として言動を見られている俺は従者に対しても柔和な態度で応接室に通すように伝えた。
その努力あって、俺は世間から「完全無欠な微笑み王子」と呼ばれている。
最悪なネーミングセンスだ。
そして次期国王とも言われている俺だが、継承争い中の腹違いの弟が4人もいるため気を抜くことはできない。
応接室の前に着くと再びため息が出そうになる。
中には婚約者のキーナ・ハンドリー公爵令嬢がいる。
きっと今日も婚約者らしい態度で俺に接するだろう。
子供の頃、素直だった彼女とはよく一緒に遊んでいた。小さいながらキーナは俺の作り笑いを見破り「無理に笑わなくていい。」と言ってくれた。
その時から俺はキーナに対しては作り笑いをするのをやめた。
しかし時が経つにつれ、彼女の方が「第一王子の婚約者」という仮面を被り、本音を言わなくなってしまった。
彼女の立場を考えれば仕方のない事かもしれないが、俺はなんだか裏切られたようで無性に腹が立った。
そして彼女に「ジル」という従者が出来てからは余計にその感情は強くなっていった。
彼女はジルだけには本音で接しているようだったからだ。本音で接し、楽しそうに笑っている。
俺といる時とは大違いだ。
最近では彼女と会う事さえ気が重く感じる。
まあ、そんな俺の態度にもキーナは気が付いているが、見ないフリをしている。
その度、「俺を見て本音で話せよ」と怒鳴りたくなるのだ。
応接室に入れば美しく着飾ったキーナが優雅な笑みで俺を迎えた。
「おはようございます、アレン様。出発の前にどうしてもお会いしたくてお伺いしました。お忙しい中申し訳ございません。」
相変わらず形式的な挨拶だ。
「ああ、気にしないでくれ。だが、もう出掛ける時間なんだ。」
「ええ、すぐにお暇しますわ。ただこれだけお渡ししたくて。旅のお守りにお待ちください。かなり天気が荒れるようなのでお気を付けてください。」
キーナに渡されたのは赤い石が付いたネックレスだった。石からはキーナの魔力が感じられる。
「これは?」
「私の魔力を込めた石です。寒い時などに息を吹きかければ熱を発しますし、焚き火としても使えます。私にはこんなことぐらいしか出来ませんが…。」
キーナは少し照れながら笑う。
ああ、きっとこれは本心だ。
魔法が得意ではない彼女が必死に魔力を込めたのだろう。
久しぶりに見たキーナ自身の感情に心のわだかまりがすっと消える。
「ありがとう。」
俺がネックレスを付けようとすると、キーナが「私に付けさせてください。」と後ろに回った。
彼女の細い手が俺の首元に触れる。
ネックレスを付けた後、彼女は聞こえないほどの小さな声で祈るように囁いた。
「どうかご無事でお帰りくださいませ。」
当たり前だ。
お前が心から望むなら必ず無事で戻って来てやる。
俺は心の中で呟いた。
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