9 / 38
1.婚約破棄まであと6ヶ月
9.悪役令嬢と生徒会室
しおりを挟む
私は折れそうになった心を立て直すため深呼吸をした。
アレンの冷たい態度は今に始まった事ではない。こんな事をいちいち気にする必要なんてないわ。
いつも通り公爵令嬢らしく、婚約者らしく振る舞えばいい。
アレンとは子供の頃はそれなりに話をしたりゲームをして遊んだ事もあった。
しかし大人になるに連れ、アレンは私に対してあまり笑わなくなったし態度もよそよそしくなっていった。
世間では『容姿端麗で性格も穏やかな王子様』なんて言われてるけど、彼が心から笑っている所を見た事がない。
いつかアレンが心から笑う顔を見てみたいと思っていたけど、それも叶いそうにないわね。
彼に婚約破棄されたら私は何をしようかしら。
今後の事も考えていかないと。
とにかく今はアレンの要件を聞かなくちゃ。
私は頭を切り替えて生徒会室へ入った。
「失礼します。相変わらず綺麗に整理された部屋ですね。それにずいぶん書籍も増えましたね。」
生徒会室は埃一つなく、並ぶ本も書類も全て綺麗に並べられている。
私は本棚を眺めながら感心した。
「ああ、本はすべてフランの私物だ。気になるものがあれば借りるといい。」
副会長のフラン・コーエンはコーエン公爵家の長男でアレンとも仲が良く、私も何度か会った事がある。
冷静沈着で頭の切れるフランは、いずれアレンが王となった時、宰相として支えていくのだろうと言われている。
「フラン様の本なんですね。保存状態が素晴らしいわ。」
あ、私の読みたかった推理小説だわ。
すごく人気でどこの本屋でも売り切れてしまっていたのよね。
私はその本を手に取りパラパラとめくった。
ああ、読みたい。
でもそこまで親しくないフランの本を気軽には借りれない。
私が本を元の位置に戻すと、アレンが紅茶の用意をしてくれた。
「あ、私がやりますわ。」
「大丈夫だ。キーナはそこに座って待っていてくれ。」
アレンは王子にも関わらず自らもてなしてくれる。
アレンのそういう気さくな性格が私は好きだ。
「ありがとうございます。ふふ、私、アレン様が淹れてくれる紅茶が世界で1番好きなんですよ。」
これはお世辞じゃない。本心でそう思う。
「…そうか。」
お礼を言って席に着くとティーカップが3つ用意されていた。
「私以外に誰かいらっしゃるんですか?」
私がアレンを見上げると、彼は少し気まずそうに眉を寄せた。
「ああ。本来なら事前に話すべきだったが、急に決まってしまってな。…メアリー・ブライトニーという女子生徒を知っているか?」
早速本題かしら。
嫌だわ。その先の言葉を聞きたくない。
でも私は笑顔で答える。
「ええ、今年転入してきた特待生ですよね。光魔法の使い手だと聞いております。」
「やっぱり知っていたか。実は彼女を…」
コンコンコンー…ガチャ。
「こんにちは!」
生徒会室に入ってきたのはメアリーだった。
アレンの冷たい態度は今に始まった事ではない。こんな事をいちいち気にする必要なんてないわ。
いつも通り公爵令嬢らしく、婚約者らしく振る舞えばいい。
アレンとは子供の頃はそれなりに話をしたりゲームをして遊んだ事もあった。
しかし大人になるに連れ、アレンは私に対してあまり笑わなくなったし態度もよそよそしくなっていった。
世間では『容姿端麗で性格も穏やかな王子様』なんて言われてるけど、彼が心から笑っている所を見た事がない。
いつかアレンが心から笑う顔を見てみたいと思っていたけど、それも叶いそうにないわね。
彼に婚約破棄されたら私は何をしようかしら。
今後の事も考えていかないと。
とにかく今はアレンの要件を聞かなくちゃ。
私は頭を切り替えて生徒会室へ入った。
「失礼します。相変わらず綺麗に整理された部屋ですね。それにずいぶん書籍も増えましたね。」
生徒会室は埃一つなく、並ぶ本も書類も全て綺麗に並べられている。
私は本棚を眺めながら感心した。
「ああ、本はすべてフランの私物だ。気になるものがあれば借りるといい。」
副会長のフラン・コーエンはコーエン公爵家の長男でアレンとも仲が良く、私も何度か会った事がある。
冷静沈着で頭の切れるフランは、いずれアレンが王となった時、宰相として支えていくのだろうと言われている。
「フラン様の本なんですね。保存状態が素晴らしいわ。」
あ、私の読みたかった推理小説だわ。
すごく人気でどこの本屋でも売り切れてしまっていたのよね。
私はその本を手に取りパラパラとめくった。
ああ、読みたい。
でもそこまで親しくないフランの本を気軽には借りれない。
私が本を元の位置に戻すと、アレンが紅茶の用意をしてくれた。
「あ、私がやりますわ。」
「大丈夫だ。キーナはそこに座って待っていてくれ。」
アレンは王子にも関わらず自らもてなしてくれる。
アレンのそういう気さくな性格が私は好きだ。
「ありがとうございます。ふふ、私、アレン様が淹れてくれる紅茶が世界で1番好きなんですよ。」
これはお世辞じゃない。本心でそう思う。
「…そうか。」
お礼を言って席に着くとティーカップが3つ用意されていた。
「私以外に誰かいらっしゃるんですか?」
私がアレンを見上げると、彼は少し気まずそうに眉を寄せた。
「ああ。本来なら事前に話すべきだったが、急に決まってしまってな。…メアリー・ブライトニーという女子生徒を知っているか?」
早速本題かしら。
嫌だわ。その先の言葉を聞きたくない。
でも私は笑顔で答える。
「ええ、今年転入してきた特待生ですよね。光魔法の使い手だと聞いております。」
「やっぱり知っていたか。実は彼女を…」
コンコンコンー…ガチャ。
「こんにちは!」
生徒会室に入ってきたのはメアリーだった。
0
お気に入りに追加
87
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。

悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない
おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。
どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに!
あれ、でも意外と悪くないかも!
断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。
※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

廃妃の再婚
束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの
父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。
ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。
それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。
身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。
あの時助けた青年は、国王になっていたのである。
「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは
結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。
帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。
カトルはイルサナを寵愛しはじめる。
王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。
ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。
引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。
ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。
だがユリシアスは何かを隠しているようだ。
それはカトルの抱える、真実だった──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる