悪役令嬢vs腹黒王子〜時々性悪ヒロインと毒舌執事〜

そら。

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1.婚約破棄まであと6ヶ月

10.悪役令嬢の作り笑い

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「ご、ごきげんよう。メアリーさん。」

許可もなくドアを開けたメアリーの行動に驚きつつ、なんとか笑顔で挨拶したがきっと私の顔は引き攣っていただろう。

この子、本当に常識がないわ…。

「いらっしゃい、メアリー。ずいぶん早く着いたんだね。迷わなかったかい?」

しかしアレンは優しい笑顔で彼女を向かい入れる。
私の時とは大違いだわ。

「ええ!途中でフランに会って、ここまで案内してもらったの。」

フランって副会長の事?呼び捨て!?
私の取り繕った笑顔が凍り付いた。
同学年とは言え、さすがに市民が公爵家令息を呼び捨てにするのは不敬罪にあたる。

「そうか。それは良かったな。」

アレンは笑顔で返す。

良かったの?
それは良かったな、で良かったの!?

私が1人でぐるぐるしていると、メアリーは可愛らしく「あ!キーナ様!」と声を上げた。

「さっきはごめんなさいっ!!」

メアリーは頭を下げて、顔を上げると大きな瞳にいつの間にか涙を溜めていた。

「えっと、何のことかしら…?」

「アレン様の前だからって恥じる事はないのよ!私はすごく感謝してるんだから。ほら、さっき私の事をすごく怒ってくれたでしょう?あの時はキーナ様が怖くて何も言えなかったんだけど、きっと私の為に怒ってくれたんだよね!それなのに、私泣いたりしてごめんなさい!」

…はい?

私は絶句した。

メアリーはブルーサファイアの瞳を潤ませながら眉を下げ、必死に謝ってくる。

確かに室内を走るな、と注意した。
確かに私はつり目で怖い顔と言われた事もある。

でもまさか、あのやり取りで私がすごく怒った事になってるの?
っていうかメアリーは泣いてたかしら?

「あー、怒ったつもりはないけど怖がらせてしまっていたならごめんなさい。」

私は話を終わらせたくて、もう反論はしなかった。

「よかったー!キーナ様に嫌われちゃったかと思って心配してたんだ。」

メアリーは今度は嬉しそうに笑う。
それはそれは天使のような笑顔で。


「2人はもう打ち解けていたんだな。」

アレンは笑顔で私たちのやりとりの感想を言った。

いや、どこをどう見たらそう思うのよ。
私は思わずアレンを睨みそうになったが、ぐっと堪えて「うふふー。」と完全に棒読みの笑い声を出した。

「それなら話は早い。キーナ、お前に頼みがある。メアリーが立派な淑女になれるよう指導して欲しいんだ。」

「はい?」

きっとその瞬間、私はアレンを睨んでしまったと思う。
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