8 / 38
1.婚約破棄まであと6ヶ月
8.悪役令嬢と婚約者の関係
しおりを挟む
昼休みを知らせるベルが鳴り、私は身だしなみを整えて生徒会室へ向かった。
生徒会室には生徒会長のアレン、副会長、書記、会計のメンバーがよく集まっているが、私がアレンに呼ばれる時は席を外してくれる。
とは言え、私がアレンに呼ばれる事は滅多にない。
確か最後に呼ばれた時は、春のパーティーの打ち合わせだったから3ヶ月前だ。
でも婚約破棄をするつもりなら呼ばれる頻度はもっと少なくなるかもしれない。
いや、もしかしたら今回が最後のお呼び出しかもしれないわ。
あー、憂鬱だわ…。
廊下の窓から外を見れば、すっかり夏の日差しになっている。
フィルコート王国ではそろそろ夏祭りの準備が始まる頃だ。子供の頃は両親や兄に連れて行ってもらったが、最近は全く行っていない。
なぜならアレンから夏祭りに誘われるかもしれないと淡い期待をして、毎年その日は予定を空けていたからだ。
まあ、誘われる事は一度もなかったんだけど。
きっと今年も誘われないだろう。
来年には婚約者でもなくなっているのだから。
アレンと夏祭りに行く事は私のささやかな夢だった。
ため息と一緒に本音が溢れた。
「こんな事なら私から誘えば良かったわ。」
「誰を誘うんだ?」
「きゃあ!」
急に後ろから声をかけられ驚いた私が振り返るとアレンが立っていた。
「ア、アレン様。ごきげんよう。」
びっくりしたー!
私は平然を装い挨拶をした。
「驚かせてすまない。ところでなんの話しだ?」
無表情のアレンが淡々と聞いてくる。
「ああ、えーっと…」
独り言を聞かれてしまった事自体恥ずかしいのに、内容まで聞いてこないでよ!
恥ずかしさで耳に熱が集まる。
アレンを見れば「早く話せ。」と目で圧をかけてくる。聡い彼だから変に誤魔化しても意味がない。
なら本音を言ってみる?
あなたと夏祭りに行きたいって。
あなたを誘いたかったって。
そうよ、もう一か八か言ってみよう!
どうせ6ヶ月後には婚約破棄されるのなら、楽しい思い出の一つや二つあっても良いじゃない。
私が勇気を出して話そうとアレンをもう一度見ると、彼はふぅーっ、とため息をついた。
…え?
嫌な予感がした。
「話したくないなら話さなくていい。さあ、生徒会室に入ろう。」
冷たい表情をしたアレンは、さっさと生徒会室に入っていった。
そうだ、彼は私と婚約破棄したいのだった。
そんな相手と夏祭りなんて行くわけがない。
行ったところで楽しい思い出になるわけないじゃない。
行き場をなくした私の勇気は、足元にボトリと落ちた。
生徒会室には生徒会長のアレン、副会長、書記、会計のメンバーがよく集まっているが、私がアレンに呼ばれる時は席を外してくれる。
とは言え、私がアレンに呼ばれる事は滅多にない。
確か最後に呼ばれた時は、春のパーティーの打ち合わせだったから3ヶ月前だ。
でも婚約破棄をするつもりなら呼ばれる頻度はもっと少なくなるかもしれない。
いや、もしかしたら今回が最後のお呼び出しかもしれないわ。
あー、憂鬱だわ…。
廊下の窓から外を見れば、すっかり夏の日差しになっている。
フィルコート王国ではそろそろ夏祭りの準備が始まる頃だ。子供の頃は両親や兄に連れて行ってもらったが、最近は全く行っていない。
なぜならアレンから夏祭りに誘われるかもしれないと淡い期待をして、毎年その日は予定を空けていたからだ。
まあ、誘われる事は一度もなかったんだけど。
きっと今年も誘われないだろう。
来年には婚約者でもなくなっているのだから。
アレンと夏祭りに行く事は私のささやかな夢だった。
ため息と一緒に本音が溢れた。
「こんな事なら私から誘えば良かったわ。」
「誰を誘うんだ?」
「きゃあ!」
急に後ろから声をかけられ驚いた私が振り返るとアレンが立っていた。
「ア、アレン様。ごきげんよう。」
びっくりしたー!
私は平然を装い挨拶をした。
「驚かせてすまない。ところでなんの話しだ?」
無表情のアレンが淡々と聞いてくる。
「ああ、えーっと…」
独り言を聞かれてしまった事自体恥ずかしいのに、内容まで聞いてこないでよ!
恥ずかしさで耳に熱が集まる。
アレンを見れば「早く話せ。」と目で圧をかけてくる。聡い彼だから変に誤魔化しても意味がない。
なら本音を言ってみる?
あなたと夏祭りに行きたいって。
あなたを誘いたかったって。
そうよ、もう一か八か言ってみよう!
どうせ6ヶ月後には婚約破棄されるのなら、楽しい思い出の一つや二つあっても良いじゃない。
私が勇気を出して話そうとアレンをもう一度見ると、彼はふぅーっ、とため息をついた。
…え?
嫌な予感がした。
「話したくないなら話さなくていい。さあ、生徒会室に入ろう。」
冷たい表情をしたアレンは、さっさと生徒会室に入っていった。
そうだ、彼は私と婚約破棄したいのだった。
そんな相手と夏祭りなんて行くわけがない。
行ったところで楽しい思い出になるわけないじゃない。
行き場をなくした私の勇気は、足元にボトリと落ちた。
0
お気に入りに追加
87
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。

悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない
おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。
どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに!
あれ、でも意外と悪くないかも!
断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。
※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでのこと。
……やっぱり、ダメだったんだ。
周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間でもあった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表する。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放。そして、国外へと運ばれている途中に魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※毎週土曜日の18時+気ままに投稿中
※プロットなしで書いているので辻褄合わせの為に後から修正することがあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる