悪役令嬢vs腹黒王子〜時々性悪ヒロインと毒舌執事〜

そら。

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1.婚約破棄まであと6ヶ月

8.悪役令嬢と婚約者の関係

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昼休みを知らせるベルが鳴り、私は身だしなみを整えて生徒会室へ向かった。

生徒会室には生徒会長のアレン、副会長、書記、会計のメンバーがよく集まっているが、私がアレンに呼ばれる時は席を外してくれる。

とは言え、私がアレンに呼ばれる事は滅多にない。
確か最後に呼ばれた時は、春のパーティーの打ち合わせだったから3ヶ月前だ。

でも婚約破棄をするつもりなら呼ばれる頻度はもっと少なくなるかもしれない。
いや、もしかしたら今回が最後のお呼び出しかもしれないわ。

あー、憂鬱だわ…。

廊下の窓から外を見れば、すっかり夏の日差しになっている。
フィルコート王国ではそろそろ夏祭りの準備が始まる頃だ。子供の頃は両親や兄に連れて行ってもらったが、最近は全く行っていない。
なぜならアレンから夏祭りに誘われるかもしれないと淡い期待をして、毎年その日は予定を空けていたからだ。

まあ、誘われる事は一度もなかったんだけど。
きっと今年も誘われないだろう。
来年には婚約者でもなくなっているのだから。

アレンと夏祭りに行く事は私のささやかな夢だった。
ため息と一緒に本音が溢れた。

「こんな事なら私から誘えば良かったわ。」

「誰を誘うんだ?」

「きゃあ!」

急に後ろから声をかけられ驚いた私が振り返るとアレンが立っていた。

「ア、アレン様。ごきげんよう。」

びっくりしたー!
私は平然を装い挨拶をした。

「驚かせてすまない。ところでなんの話しだ?」

無表情のアレンが淡々と聞いてくる。

「ああ、えーっと…」

独り言を聞かれてしまった事自体恥ずかしいのに、内容まで聞いてこないでよ!

恥ずかしさで耳に熱が集まる。

アレンを見れば「早く話せ。」と目で圧をかけてくる。聡い彼だから変に誤魔化しても意味がない。
なら本音を言ってみる?

あなたと夏祭りに行きたいって。
あなたを誘いたかったって。

そうよ、もう一か八か言ってみよう!

どうせ6ヶ月後には婚約破棄されるのなら、楽しい思い出の一つや二つあっても良いじゃない。

私が勇気を出して話そうとアレンをもう一度見ると、彼はふぅーっ、とため息をついた。


…え?


嫌な予感がした。


「話したくないなら話さなくていい。さあ、生徒会室に入ろう。」

冷たい表情をしたアレンは、さっさと生徒会室に入っていった。

そうだ、彼は私と婚約破棄したいのだった。
そんな相手と夏祭りなんて行くわけがない。
行ったところで楽しい思い出になるわけないじゃない。



行き場をなくした私の勇気は、足元にボトリと落ちた。
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