竜人嫌いの一匹狼魔族が拾った竜人を育てたらすごく愛された。

そら。

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竜人の子、旅立つ

35.討伐実技試験

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ハリスはさらに豪快に笑った。

「ぶははははっ!!良い意気込みだぞ、坊主!じゃあ改めて討伐実技試験の説明をするっ!タイムリミットは深夜0時まで、もしくはお前らが全滅するまでっ。剣術、武術、魔法、召喚獣、手段は何でもいいっ。とにかく大型魔獣を討伐しろ!ああ、余談だが、この100年間で魔獣を倒せた受験生はいない。皆、全滅だ」

受験生たちの顔が一気に青ざめる。

「俺、無理かも…」

1人の受験生がぽつりと呟いた。すると他の受験生も「私も怖いわ…。まだ魔獣と戦った事なんて一度もないもの」と弱音を吐く。1人の受験生が恐る恐る手を挙げて、ハリスに質問をした。

「全滅って、皆死んじゃったって事ですか?」

「だははっ!流石に死ぬまで戦えとは言わん。お前らに1個ずつ発煙筒を持たせる。もう戦えないと思ったらそれを使え。俺がすぐに助けに行く。もちろん試験には失格だが、お前らはまだ経験が浅い。恥じる事ではない。何事も経験だ。今自分に出来る事を全力でやってみろ」

ハリスの言葉に、受験生たちの表情が引き締まる。互いに目線を見合わせ「頑張ろう」と頷いた。

「はははっ!いい表情だ。覚悟は決まったようだな。よーしっ、では討伐実技試験を始めるっ!!行けっ!!」

ハリスは試験開始の鐘を鳴らした。

受験生たちが協力して魔獣を倒そうと話す中、シロは沼に向かって走り出した。

「おい、1人じゃ無理だぞっ!?」

1人の受験生がシロに声を掛けたが、シロにはもう届いていない。


シロは目に魔力を集中する。
コピー魔獣の魔力を追えば、濁った沼の中でも場所が分かる。ナマズの形をした魔力が、深い沼の底を這うように動いている。

シロは竜の姿になって空高く飛んだ。
シロの表情はいつになく冷静で、コピー魔獣を殺すことだけを考える。

ー…手っ取り早く殺すなら、このまま勢いをつけて沼底に突っ込み魔獣の体を貫くか、それとも火炎魔法で沼ごと焼き尽くすか。

その時、シロはルーフと出会った頃の事を思い出した。

湖で魔法の練習をするシロに向かって「お前は真面目すぎる。もっと遊べ!」と言って釣竿を渡されたっけ。2人で小さな船に乗ってのんびり過ごしたな。

シロの表情は柔らかくなった。

「ふふっ。人生は楽しまないと、だよね。ルーフ」

シロは降下して人型に戻り、釣り竿になりそうな木の棒を拾った。棒に魔力を込めれば、魔力で紡いだ糸と針が姿を表す。
岸辺の岩の上に立ち、釣竿を投げた。魔力でできた針は、コピー魔獣を目指して突き進む。

すると近くにいた受験生がシロのそばに駆け寄った。

「お前、大型魔獣を釣るつもりか!?無理だ!舐め過ぎだろ!」

「大丈夫!そうだ、君は焚き火の準備をしててよ」

シロはルーフとの楽しかった湖でのキャンプを思い出し、冗談を言ってみた。

「はあ!?魔獣を焼いて食うつもりか!?」

シロの冗談を本気で受け止めた受験生は引いた表情で答えた。

「冗談だよ。あ、食いついた」

シロは釣り竿を引いた。
闇魔力を使えば簡単に釣り上げられるが、それではつまらない。コピー魔獣と力比べをしてみよう。

「ねぇ、君名前は?」

シロは話しかけてきた受験生に聞いた。

「え、今それ聞く?まあ、いいけど。俺はミカエル・サラマン。お前は…シロだよな」

「うん、よろしくね。ミカエル、魔獣を釣るの手伝ってくれない?」

「もちろん!」

魔獣の力に引っ張られるシロの体を、ミカエルが抑える。
2人が苦戦していると他の受験生も集まり、みんなで釣竿を引っ張った。

「せーのっ!せーのっ!」

みんなで声と力を合わせ、釣竿を引っ張ると巨大なコピー魔獣が釣り上がり、受験生全員の歓声が上がった。
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