竜人嫌いの一匹狼魔族が拾った竜人を育てたらすごく愛された。

そら。

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竜人の子、旅立つ

22.朝日

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「…悪い。ちょっと頭冷やしてくるわ」

そう言ってルーフが出て行った。
シロは呆然として立ち尽くしていたが、扉が閉まる音で我に返った。

「…っ、待って、ルーフ!」

シロが慌ててルーフの後を追いかけようとすると、ジェスに首根っこを掴まれ、ソファの上に投げられた。

「な、何するんですか、ジェス!俺…、俺、ルーフに酷い事言っちゃった…。謝りにいかないと…!」

シロは泣きそうになりながら頭を抱えた。

ー…どうしよう。ルーフを怒らせてしまったんだ。

ルーフは口は悪いが、シロを怒鳴る事は今までなかった。そしてシロの考えを一方的に批判する事も一度もなかった。

そのルーフが、シロの考えを否定し、怒鳴りつけたのだ。
そして最後はシロを見放すように『お前の好きにしろ』と言った。

ルーフに嫌われたら生きていけない。
シロはルーフに捨てられる恐怖感に駆り立てられ、ルーフを追いかけようと立ち上がった。

「ルーフがあんなに怒るなんて…。きっと俺の考えが間違ってたんだ。ルーフは、俺のために色々考えてくれてたのに…。俺は自分のことばかり考えてたんだ。最初からルーフの言う通りにすれば良かったんだっ」

パニックになりながら、ルーフを追いかけようとするシロの腕をジェスが掴んだ。

「おいおい、何言ってんだよ。落ち着けって。お前の考えは間違ってない。自分の将来の事は、自分で決めるべきなんだよ。自分の事を考えるのは当たり前だろ。それともお前の騎士学校で医学を学びたいって気持ちは、誰かに否定されたら諦める程度だったのか?」

「…っ、そうじゃないですけど…。だけどルーフに捨てられたくない…。大体、ルーフがいなきゃ治療魔法を身に付けたって意味がないんです!」

掴むジェスの手を、シロは焦りでイライラしながら振りほどそうとしたが、流石に成人魔族の力は強く、簡単には離すことが出来ない。

「ジェス、離してください!」

シロがジェスを見上げると、冷静な目をしたジャスがため息をついた。

「あっそ。じゃあお前はルーフを守りたいって気持ちを捨てるんだな。あいつの傷跡があいつの命を蝕んでも、お前は誰かが治してくれるのを待ってるだけでいいんだな。もしそれで、あいつが死んだとしても、自分の選択を後悔しないんだな」

シロは身体中がカッと熱くなり、ジェスを睨んだ。

「…嫌だっ!そんなの絶対許さない!俺が絶対助ける!!…俺が…っ、ルーフを助けるから…、だから…」

治療魔法を学ばなければいけない。
この世界で、一番高度な治療魔法を学べる場所アスディアでー…。



シロは体から力が抜け、その場に座り込んでしまった。

シロの腕を掴んでいたジェスの手がスッと離れ、今度はシロの肩を叩いた。

「だったら答えは出てるだろ。簡単に自分の気持ちを諦めるな」

ー…自分は、なんでこんなに意思が弱いのだろう。進学しないと言ったり、すると言ったり。優柔不断で迷ってばかり。情けなくて狡くて弱い自分。このままじゃ本当に、ルーフにも見放されるだろう。

「…だけど、ルーフには嫌われるかも…」

シロは絶望を感じながら呟いた。

「だははっ!!大丈夫だろ、そんなもん。あいつだって相当お前の事、大事にしてるぜ?んな、ちょっとやそっとの事で嫌いにならねぇよ。今日はたまたまおセンチモードだったけどな。俺、正直キモいと思っちゃったぜ」

ジェスの発言にシロはムッとして否定した。

「ルーフは全然キモくないですよ。かっこいいです」

「ああ?どこがだよ」

今度はシロの発言に、全く理解できないとジェスが呆れて答えた。

ルーフと長年友人のくせに、そんな事も知らないのか、とシロは少しショックを受けながら、指を折ってルーフのかっこいいところを挙げ出した。

「まず、強いところ。ぶっきらぼうなのに優しいところ。俺がピンチの時はすぐに駆け付けてくれるし…」

「やめろやめろ。お前らの惚気話なんか聞きたくねぇよ」

「惚気話じゃなくて、ルーフのかっこいい話ですよ。沢山あるので、ちょっと聞いてください。オオカミ姿のルーフ、見たことありますか?白銀の毛並みが凄いかっこいいんですよね。もちろん人や本来の姿の時も、かっこいいですけど。ああ、でも見た目だけじゃなくて、話も面白いし、俺の話も聞いてくれる。あと魔獣と薬草の知識も豊富で…」

「はいはいはい。もう十分だっつーの。つかさ、それだけ知ってるなら、あいつの性格も分かってんだろ。シロ坊がやりたい事を諦める方が、ルーフは怒ると思うぞ。あいつが戻ってきたら、もう一回ちゃんと話し合え。絶対、大丈夫だからさ」

ジェスはニカッと笑った。

その雰囲気がなんとなくルーフと似ていて、シロは無性にルーフが恋しくなった。

「…ありがとうございます。俺、ちゃんと自分の気持ち話します」

「おう。じゃあ俺はそろそろ帰るわ。あ、そうだ。今度、お前に進学祝いやるよ」

ジェスはニヤついた表情で腕を組んだ。

「え、いりませんよ。そもそも、まだ決まったわけじゃないし…」

「細かい事言うな。とりあえずお前の鱗、2枚よこせ」

竜の鱗は、装飾品として高く売れると聞いたことがあるが、鱗を売った金で用意するつもりなのだろうか。
疑問に思ったシロだったが、竜の姿になって漆黒に輝く鱗を2枚剥がし取った。

「こんな鱗で良ければ、ジェスにあげますよ。進学祝いは本当にいらないので、好きに使ってください」

手のひらほどの大きさがある鱗を受け取ったジェスは、電気の光に鱗を透かしながら、満足そうに鱗を眺めた。

「へへっ、さんきゅ。やっぱり竜人の鱗は綺麗だな。まあ1枚は報酬として俺がもらうが、もう1枚はお前が泣いて喜ぶモノにして贈ってやるよ。楽しみにしてな」



ジェスを見送ったシロは、1人で東の空を眺めていた。

少しずつ光が射し、白みはじめた空が美しい。
深呼吸を数回すると、頭がリセットされるようで気持ち良い。

「もう、迷わないー…」

シロは決意を込めて呟いた。

その時、後ろから聞き慣れた足音が近づいてきた。
その姿を見なくても、発する音や匂いで誰が来たかすぐ分かる。

ジェスは大丈夫だと言ったが、やはり不安な気持ちが勝ってしまう。
どんな顔をして振り向けばいいのだろうか。
ちゃんと自分の気持ちを伝えられるだろうか。

シロが振り向けずに悩んでいると、「おい」と先に声を掛けられた。

振り向けば、朝日に照らされたルーフが気まずそうな表情で鼻を掻いている。

「まだ起きてたのかよ。睡眠はちゃんと取れよ、受験生」

「…っ!!」

シロはルーフに思いっきり飛び付いた。
ルーフはただ自宅へ帰ってきただけなのだが、シロは自分の元に帰ってきてくれたような気がして嬉しかった。

「おかえりっ!ルーフ、おかえりっ!!」

飛び付かれたルーフは一瞬戸惑ったが、シロに強く抱き締められて、思わず笑みが溢れる。

そして少し照れたように「…ただいま」と言って、シロを抱きしめた。
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