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竜人嫌いの魔族、竜人の子供を拾う。
18.またもや訪問者
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「へぇ、俺は2日も寝てたのか?」
ルーフはシロが用意した焼き魚をガツガツと食べながら驚いた。
しかしもっと驚いたのは、ルーフが寝ていた2日間でシロは一般魔法をほとんど使えるようになっていた事だ。寝たきりのルーフの世話をしていく中で必死に覚えたらしい。
今、目の前に用意されている食事もシロが一般魔法を使って食材を集め、料理したものだった。
とはいえ、普通の食事を知らないシロが作った料理は、魚の丸焼きと鍋に食材を入れただけの味のないスープだった。それでもルーフはすべて完食した。
「そうですよっ。このまま目を覚さないんじゃないかって不安だったんですよ…。体は本当に大丈夫ですか?」
シロはまた泣き出しそうな顔をしながら、ルーフの体を触って怪我をしていないか確認している。
「おう。寝て食ったから完治した。あの雑魚竜人が今戻ってきても余裕でぶっ飛ばせるぜ。」
ルーフはシロの手を鬱陶しそうに払いのけ、ベッドの上に横になった。
「もぉー、まだ魔力は完全に回復してないですよね?無理しないでください。…でも、ジンの事すみませんでした。僕のせいでルーフさんにまで迷惑かけてしまって…。
…正直、ジンが来るなんて思っていませんでした。ローハン公爵家で僕はいらない存在だったから…。
でもいらない存在とはいえ、僕は捨て駒の兵士だったんです。だからジンは脱走兵の僕を連れ戻しに来たんですね。きっとジンはまた僕を連れ戻しに来ます。」
シロは自分の手を見つめた。ジンを目の前にした時、この手はひどく震えて使い物にならなかった。
きっとジンはまた自分を連れ戻しに来るだろう。そうしたらまたルーフに迷惑が掛かってしまう。ならいっその事、自分からローハン公爵家へ戻るべきなのではないか…。
でも、もうあの場所には戻りたくない。
「で、お前はどうすんの?」
ルーフの金の目が真っ直ぐにシロを見つめた。
ジンの蔑むような冷たい瞳とは違い、シロの本心を見極めるような強い意志を持った金の瞳だ。
「僕は…、僕はこれからもルーフさんと暮らしたい。だから強くなります。心も体もちゃんと鍛えて、ルーフさんに迷惑がかからないように強くなります。今度は僕がルーフさんを守れるぐらい。」
「へへっ、そりゃ先の長い話だな。とりあえず置いてやるから勝手に強くなれ。それにお前がいても迷惑だと思った事はないけどな。お前との暮らしはなかなか面白いぞ。」
ルーフが笑うと、シロは「ルーフさん、大好きっ。」と抱きついた。
「離せっ、鬱陶しい!抱きつくのも禁止っ!」
ルーフは抱きつくシロを引き剥がそうと、押しのけたがシロはがっちりひっついて離れない。
「嫌です!毎日抱きつきますっ!朝も昼も晩もずーっと抱きつきたいんです!」
「うぜぇっ、絶対やめろっ!」
ーコンコンコン…。
ルーフとシロがベッドの上でじゃれあってるとドアをノックする音が聞こえた。
「ほらっ、誰か来たぞ!お前が出ろ…。」
ギィー…。
ルーフが言い終わる前にドアが開いた。
「魔族なんかと暮らしていたのか。つくづくお前は救いようがないな。」
「公爵様…、ジン…。」
シロは硬直した。
現れたのはローハン公爵とジンだった。
公爵は汚いものでも見るような目でシロを見下している。
ジンはケガがまだ治っていないようで、所々に包帯をしてシロを睨み付けている。
ルーフはそんな3人の様子を見て「うははっ!本当に来やがった。」と面白そうに笑った。
ルーフはシロが用意した焼き魚をガツガツと食べながら驚いた。
しかしもっと驚いたのは、ルーフが寝ていた2日間でシロは一般魔法をほとんど使えるようになっていた事だ。寝たきりのルーフの世話をしていく中で必死に覚えたらしい。
今、目の前に用意されている食事もシロが一般魔法を使って食材を集め、料理したものだった。
とはいえ、普通の食事を知らないシロが作った料理は、魚の丸焼きと鍋に食材を入れただけの味のないスープだった。それでもルーフはすべて完食した。
「そうですよっ。このまま目を覚さないんじゃないかって不安だったんですよ…。体は本当に大丈夫ですか?」
シロはまた泣き出しそうな顔をしながら、ルーフの体を触って怪我をしていないか確認している。
「おう。寝て食ったから完治した。あの雑魚竜人が今戻ってきても余裕でぶっ飛ばせるぜ。」
ルーフはシロの手を鬱陶しそうに払いのけ、ベッドの上に横になった。
「もぉー、まだ魔力は完全に回復してないですよね?無理しないでください。…でも、ジンの事すみませんでした。僕のせいでルーフさんにまで迷惑かけてしまって…。
…正直、ジンが来るなんて思っていませんでした。ローハン公爵家で僕はいらない存在だったから…。
でもいらない存在とはいえ、僕は捨て駒の兵士だったんです。だからジンは脱走兵の僕を連れ戻しに来たんですね。きっとジンはまた僕を連れ戻しに来ます。」
シロは自分の手を見つめた。ジンを目の前にした時、この手はひどく震えて使い物にならなかった。
きっとジンはまた自分を連れ戻しに来るだろう。そうしたらまたルーフに迷惑が掛かってしまう。ならいっその事、自分からローハン公爵家へ戻るべきなのではないか…。
でも、もうあの場所には戻りたくない。
「で、お前はどうすんの?」
ルーフの金の目が真っ直ぐにシロを見つめた。
ジンの蔑むような冷たい瞳とは違い、シロの本心を見極めるような強い意志を持った金の瞳だ。
「僕は…、僕はこれからもルーフさんと暮らしたい。だから強くなります。心も体もちゃんと鍛えて、ルーフさんに迷惑がかからないように強くなります。今度は僕がルーフさんを守れるぐらい。」
「へへっ、そりゃ先の長い話だな。とりあえず置いてやるから勝手に強くなれ。それにお前がいても迷惑だと思った事はないけどな。お前との暮らしはなかなか面白いぞ。」
ルーフが笑うと、シロは「ルーフさん、大好きっ。」と抱きついた。
「離せっ、鬱陶しい!抱きつくのも禁止っ!」
ルーフは抱きつくシロを引き剥がそうと、押しのけたがシロはがっちりひっついて離れない。
「嫌です!毎日抱きつきますっ!朝も昼も晩もずーっと抱きつきたいんです!」
「うぜぇっ、絶対やめろっ!」
ーコンコンコン…。
ルーフとシロがベッドの上でじゃれあってるとドアをノックする音が聞こえた。
「ほらっ、誰か来たぞ!お前が出ろ…。」
ギィー…。
ルーフが言い終わる前にドアが開いた。
「魔族なんかと暮らしていたのか。つくづくお前は救いようがないな。」
「公爵様…、ジン…。」
シロは硬直した。
現れたのはローハン公爵とジンだった。
公爵は汚いものでも見るような目でシロを見下している。
ジンはケガがまだ治っていないようで、所々に包帯をしてシロを睨み付けている。
ルーフはそんな3人の様子を見て「うははっ!本当に来やがった。」と面白そうに笑った。
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