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竜人嫌いの魔族、竜人の子供を拾う。
9.温もりと黄金の瞳
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シロは目的もなく飛び続けた。
後ろを振り返っても誰も付いてこない。前を向き、さらに激しく羽を動かし速度を上げた。
夜空には黄金に輝く月が浮かんでいる。
教科書で学んだ事はあるが、本物の月はこんなにも美しいのか。
シロは月の輝きに魅了され、月に向かって空高く飛んだ。どこまでもどこまでも飛んで行ける気がした。
月を追いかけ何時間も飛び続けると、東の空から光が広がりだした。
「…すごい。これが朝日か」
地下室で暮らしていたシロにとって初めて見る太陽の光だった。
シロは近くの木の枝に座り、しばらく日の登る景色を眺めていた。
日の光は眩しく、体をポカポカと優しく暖めてくれる。だんだん瞼は重くなり、気付けばそのまま寝てしまった。
ズドンッー!!
体に強い衝撃が走り、シロは目を覚ました。
空がずいぶん遠くに感じる。
体を起こそうとしたが、力が入らず全く動けなくなっていた。
目を動かせば、木の幹や草木が見える。
ー…ああ、枝から落ちたのか。
シロは、ぼーっとする頭で状況を理解した。
長い時間寝たのに、瞼は相変わらず重い。落下した時痛みが体中に走ったはずなのに、もう痛みさえ感じなくなっている。
ー…僕、このまま死ぬのかな。
シロが生まれてからの10年で関わった人は、ローハン公爵、メイドのジェーン、教育係のジンの3人だけだった。
3人ともシロが存在しているだけで嫌な顔をしていた。何度も「なぜお前なんか生まれてきたのだ」だとか「早く消えてくれればいいのに」と言われてきた。
一度、公爵に「だったら自害しましょうか?」と尋ねた事がある。そうしたら公爵は「自害する竜人がどこにいる。お前には竜人のプライドさえないのか。そんなに死にたければ、誰からも気付かれずに消えるように死ね」と怒鳴られ、散々殴られた。
「ふふ、このまま死ねば3人の願いが叶うよな。喜んでくれるかなー…」
シロは2度と目が覚めませんように、と祈りながら再び深い眠りについた。
誰かが近づいてくる気配がして目が覚めた。結局また目が覚めてしまったことに絶望しながら、じっとしていた。
「ーーー。ーー…けよ」
話し声?
いや、自分に話しかけてるんだ。
でも意識はあるのに、もう目を開ける事も返事をする事もできない。力が全く入らないのだ。
シロがいた地下室ではこんな醜態を晒せば殴られていた。
どうしようー…。
また殴られるかもしれない。
でも体が動かない。
シロは恐怖で体が強張った。
しかし背中にふわりと温もりが伝わってきた。
それはシロが初めて感じる温もりだった。
「ー…、もしかー…熱あんの?」
体を持ち上げられ、殴られるのを覚悟した瞬間、温かい布で体を包み込まれた。
「面倒事には関わりたくねぇんだけどなー…」
少し低くて透き通るような、ぶっきらぼうだけど優しい声だ。声の主の顔を見たくて、シロは重い瞼を何とか開けた。
褐色の肌に白銀の髪、さっき初めて見た黄金の月と同じ色をした瞳を持つ人物が自分を抱えている。
トクン、トクンー…と彼の胸に当たる耳から心臓の音が聞こえてきた。
シロはあまりにも心地良い温もりと音に包まれ、このまま死ねたら幸せだと思いながら意識を失った。
後ろを振り返っても誰も付いてこない。前を向き、さらに激しく羽を動かし速度を上げた。
夜空には黄金に輝く月が浮かんでいる。
教科書で学んだ事はあるが、本物の月はこんなにも美しいのか。
シロは月の輝きに魅了され、月に向かって空高く飛んだ。どこまでもどこまでも飛んで行ける気がした。
月を追いかけ何時間も飛び続けると、東の空から光が広がりだした。
「…すごい。これが朝日か」
地下室で暮らしていたシロにとって初めて見る太陽の光だった。
シロは近くの木の枝に座り、しばらく日の登る景色を眺めていた。
日の光は眩しく、体をポカポカと優しく暖めてくれる。だんだん瞼は重くなり、気付けばそのまま寝てしまった。
ズドンッー!!
体に強い衝撃が走り、シロは目を覚ました。
空がずいぶん遠くに感じる。
体を起こそうとしたが、力が入らず全く動けなくなっていた。
目を動かせば、木の幹や草木が見える。
ー…ああ、枝から落ちたのか。
シロは、ぼーっとする頭で状況を理解した。
長い時間寝たのに、瞼は相変わらず重い。落下した時痛みが体中に走ったはずなのに、もう痛みさえ感じなくなっている。
ー…僕、このまま死ぬのかな。
シロが生まれてからの10年で関わった人は、ローハン公爵、メイドのジェーン、教育係のジンの3人だけだった。
3人ともシロが存在しているだけで嫌な顔をしていた。何度も「なぜお前なんか生まれてきたのだ」だとか「早く消えてくれればいいのに」と言われてきた。
一度、公爵に「だったら自害しましょうか?」と尋ねた事がある。そうしたら公爵は「自害する竜人がどこにいる。お前には竜人のプライドさえないのか。そんなに死にたければ、誰からも気付かれずに消えるように死ね」と怒鳴られ、散々殴られた。
「ふふ、このまま死ねば3人の願いが叶うよな。喜んでくれるかなー…」
シロは2度と目が覚めませんように、と祈りながら再び深い眠りについた。
誰かが近づいてくる気配がして目が覚めた。結局また目が覚めてしまったことに絶望しながら、じっとしていた。
「ーーー。ーー…けよ」
話し声?
いや、自分に話しかけてるんだ。
でも意識はあるのに、もう目を開ける事も返事をする事もできない。力が全く入らないのだ。
シロがいた地下室ではこんな醜態を晒せば殴られていた。
どうしようー…。
また殴られるかもしれない。
でも体が動かない。
シロは恐怖で体が強張った。
しかし背中にふわりと温もりが伝わってきた。
それはシロが初めて感じる温もりだった。
「ー…、もしかー…熱あんの?」
体を持ち上げられ、殴られるのを覚悟した瞬間、温かい布で体を包み込まれた。
「面倒事には関わりたくねぇんだけどなー…」
少し低くて透き通るような、ぶっきらぼうだけど優しい声だ。声の主の顔を見たくて、シロは重い瞼を何とか開けた。
褐色の肌に白銀の髪、さっき初めて見た黄金の月と同じ色をした瞳を持つ人物が自分を抱えている。
トクン、トクンー…と彼の胸に当たる耳から心臓の音が聞こえてきた。
シロはあまりにも心地良い温もりと音に包まれ、このまま死ねたら幸せだと思いながら意識を失った。
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