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2章

第2話 *

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《FRside》

 部屋に響く艶めかしい声と息遣い。薄暗い部屋の中、窓から差し込む月光に照らされたアルの裸は、目に毒だった。動くに連れて揺れる黒髪をうざったそうに掻き上げて、その下から覗く青紫の瞳と視線がかち合う。額から一滴の汗が流れ落ちて、顎を伝い俺の体の上へと落ちて来る光景に目を奪われた。

「はっ……」

 熱い息を漏らす度にチラチラと見える赤い舌が煽情的に俺を誘う。鍛え上げられた強靭な体が、俺を抱いている。排泄するためだけの俺のとは違う、明らかに孕ませるための大きな性器がたった今、俺の中を行ったり来たりしている。冷静に解説しているようにも思えるけど、着いていくのに必死だ。腰を掴まれて揺らされるその振動に、動かれる度に体中に走る快感に。

「あっ…あっ、アルっ…。ダメ、ダメッ!」
「何がダメなんだよ…。ここ、こんなふうにしといて」

 アルの言葉にかあっと顔が熱くなる。思わず後孔をきゅうっと締め付けると、アルは苦しそうに眉を顰める。腰を掴んでいた手が緩やかに脇腹を下から上へと撫で、そして胸元に到達すると控えめに膨らんだ胸をやわやわと揉みしだく。

「おっぱい…いやだっ、」
「何してもダメか嫌しか言わねぇじゃねぇか。本当は良いくせにな」

 そう言ってアルは思いっきり腰を突き上げる。その動きと同時に背中に電流が走り、感じたこともないような快感が身体中を駆け巡った。声も出せずにシーツを必死に掴んでその快感に耐える。そして激しめの波が過ぎ去ったため、自身の小さめの性器へと目を向けるが何も出ていない。もしかして…と思うと。

「はっ…メスイキしたのか?フィリア」
「あっ、…ちがっ、ぁあっ、アルっ…きもちっ」

 アルの低く穏やかな声が耳元で聞こえる。もう何も考えられない。アルに抱き締められたため、俺も抱き締め返す。逞しく硬い背に爪を立てて必死に縋り付いた。アルの吐息が耳にあたって擽ったさに身を捩り逃げようとすると、パクリと耳を食まれる。

「ひぁっ…あっ、ちょ、耳っ」
「んっ…おまえ、どこ触っても舐めても良い反応しかしねぇな」
「うぅ~」

 知らなかった。普段は優しいアルがセックスのときには意地悪になるなんて。男に抱かれるのは初めてなのに、自分がこんなに淫乱になってしまうなんて。快楽に逆らおうにもそれはできない。きっと相手がアルだから、アルだからこそ俺はこんなに乱れてしまうんだ。
 禍々しい性器に圧迫される中は、もっと欲しいとでも体現するようにそれを強く締め付ける。さっきアルに教えて貰ったけれど前立腺という場所を掠めながら最奥を突かれると、もうどうしようもなく気持ちよくなってしまう。それを何度もやられ思わず目の前の肩にガブッと噛み付いた。ビクッとアルの体が震える。

「フィリアっ、苦しいか?」
「んん~っ、きもちぃっ、だけっ…。アル、だいすきっ」
「っ…。っとに、おまえは…」

 悶えたアルがお返しとでも言うように、俺の首元に噛み付く。ガブガブと噛まれたり、吸いつかれたり、舐められたり。次々に与えられる刺激に俺の体はもういっぱいいっぱいだ。アルの体と俺の太腿が当たり、パンッパンッと激しい音が鳴り響き、結合部からはぐちゅぐちゅといやらしい音が部屋中に響いている。

「中、出してもいいか…」
「う、んっ…うんっ、出して、アル」

 そう言うと、アルの動きが激しくなる。入ってはいけない部分まで入ろうとしている性器をお腹に力を入れてぎゅうっと締め付けた。逃げられないように腰に両足を巻き付けて中に出すように促す。アルの手が俺の手に触れ、温もりを分け合うように指を絡め合った。

「くっ、…」
「ぁあっっっ~~~~~~~~っっ、!!!」

 中に出される感覚とほぼ同時に、二度目の絶頂を迎えた俺。お腹の底から湧き上がり一気に爆発するような快感に、しばらく痙攣する体。イった名残のようにビクッビクッと跳ね上がる体をアルが抱き締めてくれる。口から漏れるだらしない喘ぎをごくんと飲み込んで、アルを抱き締め返した。

「赤ちゃん、できちゃうね」

 アルの耳元でポツリと呟くと、横から生唾を飲み込む音が。え?と思ったときにはもう遅く、アルは俺の腕を引いて起こした。アルの膝の上に乗るような、相手の顔がよく見える体勢に、思わず顔が赤くなる。入ったままのアルの性器は元気を取り戻したように元の大きさまで膨れ上がっていた。休む暇もなく、第二ラウンドのゴングが鳴る音が聞こえて冷や汗を垂らす俺。

「ま、まま待って?」
「ん?…」
「ちょっと休憩させて…」
「…嫌だ」

 ニヤッと笑って意地悪にそう言ったアルの顔に、ドキンッと音を立てて跳ねる心臓。そんな顔されたら許してしまう。俺は諦めたように静かに目を閉じると、口元に柔らかな物が押し当てられる。唇を割って口内に入って来る感覚に、体がブルッと震えた。ゆっくりめのキスに合わせるように緩やかに上下に動き出す体。

「んっ!?ふっ、ん…」

 緩やかなキスとは一変。貪るように唇を食まれて、下半身も熱くなっていく。
 この体勢、やばい…。奥まで一気に入っちゃう。奥、グリグリされるの本当に気持ちいい。

「はっ、ぁっあっ!アルっ、アル…もっと突いて?」
「こんな淫乱とか聞いてねぇぞ…」

 アルが何かを言ったけれど聞いてやれる余裕は俺にはない。ガシイッと痕が付いてしまうほどに強く大きな尻臀を鷲掴みにされ、激しく揺すられる。限界まで抜けたと思ったら容赦なく一気に最奥まで突き上げられるもんだから、俺の息も絶え絶えだ。そんなに下から突かれると上からも出そうになってしまうかも、と思いながら襲いかかる快感に身を委ねた。
 アルとの初夜は、その文字の通り、休憩無しで一晩中続いたのだった。





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