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冬に咲く花
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しおりを挟む「おい、お前、タカヒロと言ったか?勘違いで怪我させて悪かったな」
ユーが元の小さな小人に戻っていた。始めの時のように青いマントを羽織り、フードを目深にかぶっている。
横たわったままのヨーの周りに、小人が集まっていた。
藍色の小人が、懸命にヨーに回復の魔術をかけていた。表情を見る限り、最悪の事態は免れたらしい。
「ヨーは鳥の力を無理に取り込んだから、少し中を焼かれただけ。あれは、私たちが操れるものではないから。取り込めば、当然こうなる」
「俺のせい…………だよな。ごめん」
「まあ……そう、だね。でも原因を作ったのは、私たちだから。あなたが気に病む必要はない。私たちこそ、あなたに謝らなければいけない。ごめんなさい」
「いいよ、そんなの」
「そうだ!忘れるところだった!」
ユーが両手を天にかざすと、彼女の頭上で、雨がくるくると球体を作り始めた。見る間に水量は増え、30秒ほどで、孝宏の掌に乗る程度の水球になった。
「この雨雲はコレを運ぶために、私たちが持ってきたもの。コレは鳥と対になっていて、一緒に封印されていたモノだ。鳥と一緒になくてはならないものだから、あなたに渡そう」
孝宏は水球に手を伸ばした。
表面はツルッとしたガラスによく似ており、中は水が漂い渦巻き、海流を思わせる流れがあった。実に不思議な玉だ。
カウルも初めて見る物で、それが何か見当もつかなかった。
その後、小人たちは用事は済んだと、一言二言言葉を交わすと、あっさりと変えると言い出した。
ヨー以外の四人の小人が呪文を唱えると、白い強い光を放ち、一匹の大きな龍に変身した。
「なるほど、これは大きい……ははっ」
自慢するだけはある。孝宏が笑った。
黒く大きな龍が、蛇のような長い体をくねらせ天へと上り、雨雲の中に消えていった。
やがて、雨雲は北へ流れ、雲の切れ間に日差しが差し込んだ。一つ目の太陽が沈みかけており、東の空は夕焼けに染まっていた。
「もう、夕方なのか。全然気がつかなかった」
この世界は地球と違って、二つある太陽が西から上り東に沈む。一日が終わる時、夕日も二回沈む。
「タカヒロ、俺すぐにでも村に戻ろうと思ってる。化物がウロウロしている場所に、カダンを一人で行かせちゃ、ダメだった」
夕日を背に立つカウルの表情は逆光でよく見えない。赤い髪が夕焼けに溶け込んだようだ。鼻声だが泣いてはいない。
しかし孝宏には彼がまだ震えて見えた。その震えがなんの為かはわからないが、彼の思い決意が声の端々から見て取れる。
「もしも、この騒動に凶鳥の鳥が関係あるなら、タカヒロにも俺たちの復讐に付き合ってほしい。本当、悪いとは思うけどさ、俺たちと一緒に旅に出てくれ」
「俺は役に立たない自信がある。それにこれが凶鳥の兆しなら、むしろいない方が良いんじゃないか?きっと悪い事が起きるぞ」
「逆だ。それが兆しであるなら、カダンが言っていた通り、これから色々起き始めるんだろう?あんな馬鹿な事をしでかした、張本人を見つけられるかもしれない。孝宏は俺たちと一緒にいてくれるだけでいい。俺が………危ない目には合わせないから。だから……」
カウルは得体のしれない化物を、村に仕掛けた奴がいると言っているのだ。兆しがそれを示していたのなら、もしくは不幸を呼び込むのというのなら、むしろ好都合だと、そう思っているのだ。
「僅かにでも、敵を取れる可能性があるなら、不幸でも凶鳥でも、何だって乗り切ってみせる。だから力を貸してくれ」
孝宏に断る理由はいくらでもあるが、残念な事に引き受ける理由もいくつか存在した。加えてこの時の彼は興奮状態にあり、普段より承諾しやすくなっていたように思える。
(二人を止めろって、カダンは言ってたんだけどな)
つい先刻の出来事なのにこんなにもあっさりと破って良いものか。孝宏は心の中で苦笑する。
「あーあぁ、俺も一緒に怒られてやるよ」
今はこう言っても、いくらか時間が経って、もしくは現実を見ればきっと冷静に戻るだろう。
けれども今だけ。今だけなら、少しぐらいカウルに付き合っても良い。孝宏の中にはそんな考えもあった。
(ここは異世界だからな)
「ああ、ありがとう」
あっさり承諾する孝宏を見て、カウルも先刻の出来事を思い出していた。
孝宏の人の良さは、カウルに罪悪感を抱かせる。
今思い返せば、何の関係もない孝宏を攻め立てたのだから、あれはただの八つ当たりだ。
カウルは謝って済むだろうかと思いながら、帰路に着いた。
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