【R18】執事と悪役令嬢の色々な世界線

夕日(夕日凪)

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悪役令嬢はヒロインに負けたくない

悪役令嬢はヒロインに負けたくない・14※

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「お嬢様、どうしてそんな隅にいるのですか?」

 お湯の中で膝を抱えていると、湿気で黒髪をしっとりとしさせたマクシミリアンに不思議そうな声で訊ねられた。

「は……恥ずかしいからに決まってるじゃない!」

 自分の成長の余地を胸の辺りに残しすぎた貧相な体を陽の光の下で見られてしまうのも、彼の美しい引き締まった裸体を目にしてしまうのも。どちらも恥ずかしくて仕方ない。
 お湯で濡れている彼は色気が倍増している気がするし……!
 それにわたくし、昨日は結局彼のご本尊を拝観していないのだ。うっかりするとそれが見えてしまうじゃないの……!!
 ちゃぷり、と水音を立てながらマクシミリアンはこちらへと身を乗り出した。
 ここはしょせんバスタブの中だ。彼に詰め寄られてしまうと逃げ場なんてない。

「お嬢様……恥ずかしがらないでください。もっと貴女のお姿が見たいです」

 マクシミリアンが切なげな、それでいて甘えるような響きの声音で言う。
 好きな人にそんな声で言われてしまい、胸が疼かない女なんていないんじゃないかしら……。

「でも……」

 涙目になって顔を上げると彼の漆黒の瞳と視線が合い、そっと優しく唇を塞がれた。

「私に見られるのは、お嫌ですか?」

 吐息が触れる距離で懇願するように囁かれ心臓が跳ねる。マクシミリアンの声だけで、先ほどから蕩けてしまいそうになる。
 声だけじゃない。目を潤ませ濃密な色気を漂わせた際立って美しい顔に、濡れて光沢を持った褐色の肌に、鎖骨に留まり流れていく水滴に、綺麗な形の優しく触れる唇に。全てに心を囚われてしまって困るの……。

「……性急すぎるのよ」
「昨日性急だったのはお嬢様のように思えますが」

 それを言われてしまうと、立つ瀬がないのだけれど。

「怖いことや痛いことは、しないって約束したわよね?」
「お嬢様。私は貴女に愛情と心地よい快楽しか与える気はありません。貴女が嫌がることは、もちろんいたしません。嫌だと言われれば、今すぐこの場からも立ち去りますので」

 そんな言い方はずるい。わたくしがマクシミリアンにどこかへ行って、なんて言えるはずがないもの。

「……そんな言い方はずるいわ」
「……嫌なら、言ってください。お嬢様は私のことが、お嫌いですか?」

 ずるい、ずるい。絶対に分かって言ってる。わたくしの逃げ道を……彼はどんどん塞ごうとしている。
 彼の顔を盗み見るとねだるような顔で首を傾げられ、心を鷲掴みにされてしまう。
 もう! 自分の可愛さの使いどころを知っている小型犬みたいな真似して!
 彼の両頬に手を添えてむにゅり、と圧し潰すと少し驚いた顔をされる。むぅ……変な顔をさせようとしてもならないわ……可愛いだけじゃない。美形ってずるい。

「ばか、好きよ」

 そう言って彼にキスをすると、嬉しそうに締まりのない顔で微笑まれた。

「ではお体を、洗わせてくださいね。そして少しだけ……気持ちいいこともしましょう」

 するのだろうな、と思ってはいたけど改めて口にされると気持ちの置きどころがないというか落ち着かない気持ちになってしまう。
 マクシミリアンにそっと抱き寄せられ胸の中で緊張して身を硬くしていると、彼に後ろ向きにされ膝の上に乗せられてしまった。
 当たってる、お尻に、生々しくて硬いのが。

「見えてしまっては、お嬢様が緊張してしまいますしね」

 そう言いながら彼はバスボムを湯舟に落とした。ピンク色の泡が浴槽に広がっていき、わたくしは少し安堵を覚える。
 マクシミリアンはバスタブの栓を少しの間だけ抜いて体が洗いやすいように水位を下げると、ボディソープを手で泡立て始めた。……もしかしなくても、手で、洗うのかな。
 ああ、緊張する。前世の推しに体を洗ってもらうなんて……このサービスにわたくしいくら払えばいいの?
 一時間二万円とか!? って金額設定が妙に生々しいわね。

「お嬢様、力を抜いてくださいね」

 彼の手が、首筋をそっと撫でる。ふわふわとした泡とマクシミリアンの手の感触が気持ちよくて少しずつ緊張が弛んでいくのを感じ、わたくしは吐息を漏らして体から力を抜いた。

「……気持ちいい……」
「よかったです、お嬢様」

 くすりと笑いながらマクシミリアンが、脇に手を伸ばして泡で優しく洗う。

「ひゃっ……!!」

 くすぐったさに身を竦めても、彼の手が容赦なく脇を往復するのが恥ずかしい。そんなところ、普段人に触られる場所じゃないし……なんだかぞくぞくする。

「ここのお肉は、柔らかいのですね」

 マクシミリアンの手が脇から逸れてふにふにと二の腕を揉み込んだ。ほ……本当にそこは止めて……!!

「女の子のそこは、気にしている部分だから触っちゃダメなの!」

 真っ赤になって彼を叱ると、なんだか名残惜しそうに二、三度ふにふにと二の腕を揉んでからようやく離してくれた。

「お嬢様には、気にされるような箇所は何もございませんのに。想像していたよりも美しい裸体で、昨夜は驚いたくらいです」

 二の腕を解放され安堵していると、とんでもないことを彼が言い出した。
 というか想像していたって貴方……! やらしいわ!

「ここも……薄桃色で芸術品のようですし」

 彼の手がするりと脇の下を撫でてから胸に触れ、その頂点を摘まむ。

「やぁんっ……恥ずかしいことばっかり言わないで……!」
「本当のことです、お嬢様」

 胸に触れる彼の手はとても緩やかな動きで、小さな乳房を宝物のように大事に揉みしだき、時折頂きを優しく捏ねる。声が出そうになって我慢しようと唇を噛みしめると、マクシミリアンに頬に口づけを優しくされた。

「我慢せずに、愛らしい声を聞かせてくださいお嬢様」
「でも、はずかしいのっ」
「お嬢様のお声は甘露です。恥ずかしいことなんて何もありません」
「あんっ」

 手が少しだけ強く胸を揉むものだから、思わず大きな声が漏れてしまう。
 するとマクシミリアンが満足そうな忍び笑いを漏らすのが聞こえて、拗ねた気持ちになるけれどそれを表に出す間もなく彼の手にまた翻弄された。
 褐色の手でぐにぐにと揉みしだかれて、小さいなりに形を変える白い乳房は視覚的なやらしさが強烈で。それを見ているだけでじわりと体に快感が生まれて、また声を漏らしてしまう。

「まくしみりあんっ……きもちいいっ……」
「ああ、私のお嬢様……。もっと鳴いてくださいませ」

 彼に色気たっぷりな声で囁かれ、耳裏に舌を這わされた。ぬるりとした感触に驚いている間にも、何度も舌は耳を這い、耳朶を少し噛まれてぞくりとした官能が脳まで突き抜けた。

「やっ……そんな、一気に色々しないでぇっ、きもちいのが、きちゃうのっ」
「お嬢様、胸とお耳を触られただけでイキそうなのですね? そんなやらしいお嬢様も素敵です」
「ばかっ! そんなっ……あぁんっ!!」

 耳の穴に舌を差し込まれながら両方の頂きを摘ままれ、甘い声を漏らしながらわたくしは絶頂してしまう。
 はふはふと荒い息を漏らすわたくしの頬にマクシミリアンが何度もキスをする。
 頬に触れる彼の吐息がなんだか熱くて、泡風呂でよくは見えないけれど……足の間に感じるマクシミリアンの熱が先ほどよりも硬く大きくなっているような気がした。

「次は……下を洗いましょうね、お嬢様」

 欲情を含んだ声で彼に囁かれ、背筋がぞくりと震えた。
 ああ、昨夜のように……あそこに触れられてしまうんだ。
 わたくしは心に淡い期待が生まれるのを感じながら小さく頷いた。
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