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悪役令嬢はヒロインに負けたくない
悪役令嬢はヒロインに負けたくない・13
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その夜はそれ以上は何もせず寝台でマクシミリアンと抱き合って過ごした。
彼と両想いになってこうやって抱き合って過ごせるなんて、嘘みたいで。
幸せすぎて涙がこみ上げ彼の胸にすがって泣くと、マクシミリアンが優しく頭を撫でてくれる。それが嬉しくてまた泣いてしまう。
そんなことを繰り返しているうちに眠りにつき、朝になってしまったようだった。
「ん……」
眩しい光に瞼を刺激され目を開けると、目の前にマクシミリアンの綺麗なお顔があって驚愕で思わず仰け反ってしまった。
彼はわたくしの頬に手で触れ数度撫でてから、優しく微笑みながら顔を近づけ唇を触れ合わせる。ぎゅっと目を閉じて緊張しながら彼の啄むだけのキスを受け入れていると、そっと抱き寄せられ胸の中に閉じこめられた。
「……お嬢様、おはようございます」
「おはよう、マクシミリアン」
照れながら挨拶をして微笑むと彼も微笑み返してくれる。……ああ、なんて幸せなの。
――その時、頭の片隅に引っかかっていることがある事に気づいた。
「……マクシミリアン。どうしてシュミナ嬢とデートなんてしていたの?」
わたくしの事が好きなら……シュミナとデートなんてしないはずよね? だけどあんなに昨夜は好きだ言ってくれのだし、そんな彼を信じたいわ。
否定の言葉を期待してじっと彼を見つめると、マクシミリアンは冷や汗をかいて言葉を詰まらせた。
そんなマクシミリアンの様子に最悪の事態を考えてしまい、瞳に涙がせり上がってしまう。
やっぱり昨夜の事は……世界の強制力でしかないの? 嫌だ、マクシミリアンは渡したくない。
愛を囁かれ、抱きしめられ、キスをされ……そんな甘い蜜を知った後にもう彼を手放す事なんてできない。
「やだ! マクシミリアンは、シュミナ嬢にあげないわ! マクシミリアンは、わたくしのなのっ……」
ぼろぼろと泣きながらマクシミリアンにすがりつくと、慌てた様子の彼に強く抱きしめられた。
頬を伝う涙を唇で何度も吸われ、キスをされ、頭を宥めるように撫でられる。
「お嬢様落ち着いてください。私は貴女のものでしかありませんので……。その、驚かせようと思ったのでお嬢様には内緒にしたかったのですが。もうすぐお嬢様の誕生日なので、シュミナにはプレゼントを選ぶのを手伝ってもらったんです」
マクシミリアンの言葉に鼻水を垂らしながら顔を上げると、苦笑した彼にぐしぐしと布で顔を拭われる。ああ、その布はもしかしなくても彼のシャツ……!
「プレゼント? ほんと……?」
「本当です、お嬢様。当日まで楽しみにしてお待ちくださいね。……紛らわしい事をしてしまって申し訳ありません」
マクシミリアンはそう言いながらまた垂れた鼻水をシャツで拭ってくれる。ごめんなさい、そのシャツ、カピカピになってしまうわね。今度新しいのを買ってあげよう。
「マクシミリアンは、わたくしのものなのね」
「はい、そうでございます。私はお嬢様だけの忠実な犬です」
それを聞いて心の底からの安堵が広がった。
「……マクシミリアンは……わたくしの恋人、でいいのよね?」
思わず赤くなる顔で上目遣いで彼に言うと、彼の顔も一気に朱に染まった。
「お嬢様……本当に私で後悔しませんか?」
後悔してるなんて言ったら貴方、狂犬になるくせに……殊勝な事を言うのね。
「当たり前でしょう?……マクシミリアンを、愛しているのだし」
マクシミリアンのお顔が少し怖いくらいの真剣な顔に変わる。わ……わたくし変な事を言ったかしら?
「……今日は授業はお休みしましょう、そうしましょう」
「ちょ……どうしてよ!?」
マクシミリアンは寝台から身を起こすとテキパキと衣服を身に着けていく。ああ……さっきの鼻水まみれになったシャツを……!!
「せっかく両想いになったんです、今日は部屋で二人で過ごしましょう。お嬢様の開発もしないといけないですし」
発言が不穏な気がするわ、マクシミリアン。
彼はわたくしの休みを学園へ知らせるために早足で部屋を出て行ってしまった。
「……開発って、わたくし何をされてしまうの……?」
彼の背中を見送りながら呆然とそう呟く。
昨日は襲おうとしてしまったわたくしが言っても説得力が無いかもしれないけど、開発なんて物騒な単語から始まるお付き合いは嫌よ……!!
そりゃマクシミリアンと一つになりたいし、裂けないように慣らしては欲しいけど……。開発ってニュアンスは何か違うと思うの!
そわそわしながら彼を待っていると、驚くほどの短時間で戻ってきた。
「お嬢様、お待たせしました。メイドにも休みを通達しましたので今日は二人っきりです」
そう言って笑う彼の笑顔は爽やかで眩しい。でも開発を企んでるのよね……!?
警戒心たっぷりの目でマクシミリアンを見つめると、きょとんとした顔で首を傾げられた。……可愛いわね、その仕草。
彼はこちらへ近づいてくるとわたくしを姫抱きで軽々と抱え上げた。
な……なんで!? わたくし、全裸なのよ! 恥ずかしいから止めて!
「マクシミリアン!?」
「とりあえず、お風呂に入りましょうか。昨日の汚れを落としましょうね」
「……一緒に、とか言わないわよね?」
「一緒に、以外考えてなかったですが……」
綺麗なお顔でしょんぼりされると、罪悪感が刺激されてしまう。
ああ、どうしたらいいんだろう……なんて両手で胸を隠しながら考えているうちに、わたくしはいつの間にか続き部屋にある浴室へと運ばれてしまっていた。
彼はバスタブにわたくしの体を降ろすと、魔石と呼ばれる魔法の力が込められた石を利用した蛇口を捻る。するとドボドボと音を立てて適温のお湯が流れ出した。
わたくしがオロオロとしている間に、マクシミリアンが自分の衣服を脱ぎだしたので目のやり場に困ってしまう。
お湯が溜まり始めたバスタブの隅っこで体を抱いて縮こまっていると、彼も浴槽へ体を滑り込ませてきた。
性交渉を完遂していない付き合いたての男性とお風呂だなんて……! 処女には、ハードルが高すぎますよ……。
彼と両想いになってこうやって抱き合って過ごせるなんて、嘘みたいで。
幸せすぎて涙がこみ上げ彼の胸にすがって泣くと、マクシミリアンが優しく頭を撫でてくれる。それが嬉しくてまた泣いてしまう。
そんなことを繰り返しているうちに眠りにつき、朝になってしまったようだった。
「ん……」
眩しい光に瞼を刺激され目を開けると、目の前にマクシミリアンの綺麗なお顔があって驚愕で思わず仰け反ってしまった。
彼はわたくしの頬に手で触れ数度撫でてから、優しく微笑みながら顔を近づけ唇を触れ合わせる。ぎゅっと目を閉じて緊張しながら彼の啄むだけのキスを受け入れていると、そっと抱き寄せられ胸の中に閉じこめられた。
「……お嬢様、おはようございます」
「おはよう、マクシミリアン」
照れながら挨拶をして微笑むと彼も微笑み返してくれる。……ああ、なんて幸せなの。
――その時、頭の片隅に引っかかっていることがある事に気づいた。
「……マクシミリアン。どうしてシュミナ嬢とデートなんてしていたの?」
わたくしの事が好きなら……シュミナとデートなんてしないはずよね? だけどあんなに昨夜は好きだ言ってくれのだし、そんな彼を信じたいわ。
否定の言葉を期待してじっと彼を見つめると、マクシミリアンは冷や汗をかいて言葉を詰まらせた。
そんなマクシミリアンの様子に最悪の事態を考えてしまい、瞳に涙がせり上がってしまう。
やっぱり昨夜の事は……世界の強制力でしかないの? 嫌だ、マクシミリアンは渡したくない。
愛を囁かれ、抱きしめられ、キスをされ……そんな甘い蜜を知った後にもう彼を手放す事なんてできない。
「やだ! マクシミリアンは、シュミナ嬢にあげないわ! マクシミリアンは、わたくしのなのっ……」
ぼろぼろと泣きながらマクシミリアンにすがりつくと、慌てた様子の彼に強く抱きしめられた。
頬を伝う涙を唇で何度も吸われ、キスをされ、頭を宥めるように撫でられる。
「お嬢様落ち着いてください。私は貴女のものでしかありませんので……。その、驚かせようと思ったのでお嬢様には内緒にしたかったのですが。もうすぐお嬢様の誕生日なので、シュミナにはプレゼントを選ぶのを手伝ってもらったんです」
マクシミリアンの言葉に鼻水を垂らしながら顔を上げると、苦笑した彼にぐしぐしと布で顔を拭われる。ああ、その布はもしかしなくても彼のシャツ……!
「プレゼント? ほんと……?」
「本当です、お嬢様。当日まで楽しみにしてお待ちくださいね。……紛らわしい事をしてしまって申し訳ありません」
マクシミリアンはそう言いながらまた垂れた鼻水をシャツで拭ってくれる。ごめんなさい、そのシャツ、カピカピになってしまうわね。今度新しいのを買ってあげよう。
「マクシミリアンは、わたくしのものなのね」
「はい、そうでございます。私はお嬢様だけの忠実な犬です」
それを聞いて心の底からの安堵が広がった。
「……マクシミリアンは……わたくしの恋人、でいいのよね?」
思わず赤くなる顔で上目遣いで彼に言うと、彼の顔も一気に朱に染まった。
「お嬢様……本当に私で後悔しませんか?」
後悔してるなんて言ったら貴方、狂犬になるくせに……殊勝な事を言うのね。
「当たり前でしょう?……マクシミリアンを、愛しているのだし」
マクシミリアンのお顔が少し怖いくらいの真剣な顔に変わる。わ……わたくし変な事を言ったかしら?
「……今日は授業はお休みしましょう、そうしましょう」
「ちょ……どうしてよ!?」
マクシミリアンは寝台から身を起こすとテキパキと衣服を身に着けていく。ああ……さっきの鼻水まみれになったシャツを……!!
「せっかく両想いになったんです、今日は部屋で二人で過ごしましょう。お嬢様の開発もしないといけないですし」
発言が不穏な気がするわ、マクシミリアン。
彼はわたくしの休みを学園へ知らせるために早足で部屋を出て行ってしまった。
「……開発って、わたくし何をされてしまうの……?」
彼の背中を見送りながら呆然とそう呟く。
昨日は襲おうとしてしまったわたくしが言っても説得力が無いかもしれないけど、開発なんて物騒な単語から始まるお付き合いは嫌よ……!!
そりゃマクシミリアンと一つになりたいし、裂けないように慣らしては欲しいけど……。開発ってニュアンスは何か違うと思うの!
そわそわしながら彼を待っていると、驚くほどの短時間で戻ってきた。
「お嬢様、お待たせしました。メイドにも休みを通達しましたので今日は二人っきりです」
そう言って笑う彼の笑顔は爽やかで眩しい。でも開発を企んでるのよね……!?
警戒心たっぷりの目でマクシミリアンを見つめると、きょとんとした顔で首を傾げられた。……可愛いわね、その仕草。
彼はこちらへ近づいてくるとわたくしを姫抱きで軽々と抱え上げた。
な……なんで!? わたくし、全裸なのよ! 恥ずかしいから止めて!
「マクシミリアン!?」
「とりあえず、お風呂に入りましょうか。昨日の汚れを落としましょうね」
「……一緒に、とか言わないわよね?」
「一緒に、以外考えてなかったですが……」
綺麗なお顔でしょんぼりされると、罪悪感が刺激されてしまう。
ああ、どうしたらいいんだろう……なんて両手で胸を隠しながら考えているうちに、わたくしはいつの間にか続き部屋にある浴室へと運ばれてしまっていた。
彼はバスタブにわたくしの体を降ろすと、魔石と呼ばれる魔法の力が込められた石を利用した蛇口を捻る。するとドボドボと音を立てて適温のお湯が流れ出した。
わたくしがオロオロとしている間に、マクシミリアンが自分の衣服を脱ぎだしたので目のやり場に困ってしまう。
お湯が溜まり始めたバスタブの隅っこで体を抱いて縮こまっていると、彼も浴槽へ体を滑り込ませてきた。
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