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第二章 動き出す何か
第二十九話 決意を胸に
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ギルマスは俺が『アオイは邪龍の黒龍に倒された』と言ったことで俺の正気を疑ってきたが、俺が女神イーシュと関係があることを思い出したのか「そうだったな」と頭を抱えてしまう。
「でも、さすがにもういない『否定します』……ことはないみたいだね。残念ながら」
「そうなると、お前はソイツの痕跡も探しながらの旅になるってことだな」
「そうなるのかな」
『肯定します』
視界の端に流れるメッセージが恨めしい。
「まあ、俺がしてやれる話もこれくらいだな。後は明日また来てくれ。その時にノエルからの紹介状やなんかも全部纏めて渡すから」
「分かったよ。じゃ、タロ帰るよ」
『ワフ?』
タロがもう話は終わったのとでも言いたいのか、寝そべっていた体勢からゆっくりと身を起こす。
『ふぁ~』と欠伸をしながら、軽く伸びをするとぺたんと座る。
ギルマスと話している間に結構時間が経ったみたいで、窓の外は既にオレンジ掛かっている。
『コータ、お腹が減ったよ』
「そうだな。誰かの話が長かったから、お昼を食べるタイミングを逃しちゃったね」
「ぐ……」
俺とタロはギルマスの顔をジッと見る。すると、ギルマスは短く嘆息すると「俺のおごりだ」と冒険者ギルド内の酒場で少しならいいぞと言ってくれた。
「ありがとね。じゃ、タロ行こうか」
『うん! 何を食べようかな』
「いいか、軽くだぞ」
「『は~い』」
はいとギルマスに返事はしたけど、タロに少しだけってどうなんだろうね。
食堂に入ると俺は夕食前ということもあり、パンと少しのステーキを頼む。タロはもちろんガッツリ目のステーキを注文した。
食堂の人にはギルマスからのおごりだからということを伝えると「おう、分かった」と返事を貰えた。
昼抜きだったが、テーブルに届いた少量の食事にタロは心配そうに見ているが、すぐに夕食だから俺はこれで十分な量だ。少し遅れてタロが頼んだステーキがタロの目の前に置かれるのを待てなかったようで、床に置かれる『コトリ』と皿の音がする前にステーキに齧り付いていた。
「誰も取らないからゆっくり食べなよ」
『ワフ!』
遅めの昼食を食べ終わると、タロの口を綺麗にしてから宿に戻る。
「戻りました」
「あ~お帰り。鍵はノエルが持って行ったからね」
「はい」
ニャルさんに帰って来たことを告げると、部屋の鍵はノエルさんが持って行ったと伝えてくれた。ってことはまだ、いろいろ教えているのかも知れないと、一瞬どうしようかと悩む。
俺がいつまでも階段を上っていかないのでニャルさんが気にしてくれた。
「コータ、どうしたの?」
「あのね……」
今、部屋で行われているであろう『正しい着用方法講座』のことをニャルさんに話した。
「なるほどね。そりゃ、行きにくいか。なら、先にメシにしたらどうだい」
「それなんだけど……」
さっき冒険者ギルドで少しだけ食べてしまったことを話すとニャルさんが笑い出す。
「そりゃ、災難だね。じゃあ、他の客に邪魔にならないようにその辺にいればいいよ」
「うん、ありがとう」
「ふふふ、いいよ。でも、ダリウスのバカは何を考えているんだろうね。子供にお昼を食べさせないなんて」
「ははは……」
ニャルさんが「しょうがないね」と感じでニヤリと笑ったのを見て明日ギルマスに会うのがちょっと心苦しくなる。
「タロ、この辺りで待ってようか。ノエルさんが下りて来たら教えてね」
『ワフ!』
受付カウンターの近くに用意されているソファに腰掛けタロにお願いしたはいいが、何もすることもないし、お腹も少し膨れているのもあって、睡魔がやって来る。
「ふぁ~あ、眠いや。タロ、ごめんちょっとだけ……ね……」
『クゥ~ン』
どのくらいの時間が経ったのか分からないが、肩の辺りを揺さぶられて半分覚醒すると、俺の顔をノエルさんが覗き込みながら何かを言っていた。
「ちょっと、こんな所で寝ちゃダメでしょ。タロ様もいるってのに。お~い、起きたのなら返事をして」
「ノエル……さん、もう終わったの?」
「終わったわよ。っていうか、なんでこんなところで寝てたの」
「だって、部屋でアオイに教えていたんでしょ。なら、中には入れないと思ったから、ここに座っていたんだけど、眠気に勝てなかったみたい」
「もう、自分達の部屋なんだから、遠慮することもないでしょ。まあ、いいわ。アオイちゃんが部屋で待っているわよ。コータ君達が帰って来ないって心配していたわよ。まあ、これは私も悪いわね。ごめんなさい」
「あ、いえ。じゃあ、俺達は戻ります。また、明日冒険者ギルドに行きますね」
「ええ、分かったわ。じゃあね」
俺はノエルさんに挨拶をしてから、タロを起こして部屋へと戻った。
そういや、また現れなかったな。じゃあ、こっちから出向くしかないか。絶対に方法はあるハズだから。
『肯定します』
「でも、さすがにもういない『否定します』……ことはないみたいだね。残念ながら」
「そうなると、お前はソイツの痕跡も探しながらの旅になるってことだな」
「そうなるのかな」
『肯定します』
視界の端に流れるメッセージが恨めしい。
「まあ、俺がしてやれる話もこれくらいだな。後は明日また来てくれ。その時にノエルからの紹介状やなんかも全部纏めて渡すから」
「分かったよ。じゃ、タロ帰るよ」
『ワフ?』
タロがもう話は終わったのとでも言いたいのか、寝そべっていた体勢からゆっくりと身を起こす。
『ふぁ~』と欠伸をしながら、軽く伸びをするとぺたんと座る。
ギルマスと話している間に結構時間が経ったみたいで、窓の外は既にオレンジ掛かっている。
『コータ、お腹が減ったよ』
「そうだな。誰かの話が長かったから、お昼を食べるタイミングを逃しちゃったね」
「ぐ……」
俺とタロはギルマスの顔をジッと見る。すると、ギルマスは短く嘆息すると「俺のおごりだ」と冒険者ギルド内の酒場で少しならいいぞと言ってくれた。
「ありがとね。じゃ、タロ行こうか」
『うん! 何を食べようかな』
「いいか、軽くだぞ」
「『は~い』」
はいとギルマスに返事はしたけど、タロに少しだけってどうなんだろうね。
食堂に入ると俺は夕食前ということもあり、パンと少しのステーキを頼む。タロはもちろんガッツリ目のステーキを注文した。
食堂の人にはギルマスからのおごりだからということを伝えると「おう、分かった」と返事を貰えた。
昼抜きだったが、テーブルに届いた少量の食事にタロは心配そうに見ているが、すぐに夕食だから俺はこれで十分な量だ。少し遅れてタロが頼んだステーキがタロの目の前に置かれるのを待てなかったようで、床に置かれる『コトリ』と皿の音がする前にステーキに齧り付いていた。
「誰も取らないからゆっくり食べなよ」
『ワフ!』
遅めの昼食を食べ終わると、タロの口を綺麗にしてから宿に戻る。
「戻りました」
「あ~お帰り。鍵はノエルが持って行ったからね」
「はい」
ニャルさんに帰って来たことを告げると、部屋の鍵はノエルさんが持って行ったと伝えてくれた。ってことはまだ、いろいろ教えているのかも知れないと、一瞬どうしようかと悩む。
俺がいつまでも階段を上っていかないのでニャルさんが気にしてくれた。
「コータ、どうしたの?」
「あのね……」
今、部屋で行われているであろう『正しい着用方法講座』のことをニャルさんに話した。
「なるほどね。そりゃ、行きにくいか。なら、先にメシにしたらどうだい」
「それなんだけど……」
さっき冒険者ギルドで少しだけ食べてしまったことを話すとニャルさんが笑い出す。
「そりゃ、災難だね。じゃあ、他の客に邪魔にならないようにその辺にいればいいよ」
「うん、ありがとう」
「ふふふ、いいよ。でも、ダリウスのバカは何を考えているんだろうね。子供にお昼を食べさせないなんて」
「ははは……」
ニャルさんが「しょうがないね」と感じでニヤリと笑ったのを見て明日ギルマスに会うのがちょっと心苦しくなる。
「タロ、この辺りで待ってようか。ノエルさんが下りて来たら教えてね」
『ワフ!』
受付カウンターの近くに用意されているソファに腰掛けタロにお願いしたはいいが、何もすることもないし、お腹も少し膨れているのもあって、睡魔がやって来る。
「ふぁ~あ、眠いや。タロ、ごめんちょっとだけ……ね……」
『クゥ~ン』
どのくらいの時間が経ったのか分からないが、肩の辺りを揺さぶられて半分覚醒すると、俺の顔をノエルさんが覗き込みながら何かを言っていた。
「ちょっと、こんな所で寝ちゃダメでしょ。タロ様もいるってのに。お~い、起きたのなら返事をして」
「ノエル……さん、もう終わったの?」
「終わったわよ。っていうか、なんでこんなところで寝てたの」
「だって、部屋でアオイに教えていたんでしょ。なら、中には入れないと思ったから、ここに座っていたんだけど、眠気に勝てなかったみたい」
「もう、自分達の部屋なんだから、遠慮することもないでしょ。まあ、いいわ。アオイちゃんが部屋で待っているわよ。コータ君達が帰って来ないって心配していたわよ。まあ、これは私も悪いわね。ごめんなさい」
「あ、いえ。じゃあ、俺達は戻ります。また、明日冒険者ギルドに行きますね」
「ええ、分かったわ。じゃあね」
俺はノエルさんに挨拶をしてから、タロを起こして部屋へと戻った。
そういや、また現れなかったな。じゃあ、こっちから出向くしかないか。絶対に方法はあるハズだから。
『肯定します』
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