悪意か、善意か、破滅か

野村にれ

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吃驚

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 執事に侍医を呼んで、シャーリンを診て貰うように伝え、体調が悪かったのだろうと気にもしていなかった。

 そして、一時間くらい経つと執事と侍医がやって来た。

「どうだった?風邪か?」
「ジェフ様、おめでとうございます」
「何がだ?」
「シャーリン様が、ご懐妊とのことでございます」
「っな!」

 執事はジェフは九人目に驚いているのだと思い、これ以上、子どもが増えるのは正直、厳しい状況ではあるが、妊娠には喜ばないということは出来ない。

「本当なのか?」
「はい、間違いないそうです」
「…私の子ではない」
「は?」
「え?」

 一緒に報告に来た様子の侍医も、ポカーンとした顔をしている。

「今、臨月だったとしても、私の子の可能性は低いということだ」

 子どもの出来るような行為を一年以上、していないということである。

「そんな…では、シャーリン様の子は…一体…」
「間違いなく、不貞行為をしていたということだな。私は関係ないと思っていたが、そうではなかったようだ」

 上手くいっているとは言えないが、不貞行為だけは疑っていなかった。

「ガルッツ子爵家に連絡をして、子爵に来て貰うように伝えて貰えるか?」
「かしこまりました」
「シャーリンはどうしている?」
「まだ伝えておりませんので、お部屋にいると思いますが?」

 検査は別室で行い、妊娠だと分かり、ジェフを呼びに来たので、まだシャーリンには伝えていなかった。

「では、そのまま検査をしているからと伝えて、部屋に閉じ込めて置くように、メイド長に言ってくれ」
「かしこまりました」

 執事はメイド長に話に行き、ガルッツ子爵家に迎えを出しに向かった。

「ドーサン医師、すまないが、もう少し付き合って貰えるか」
「は、はい。勿論でございます。離縁されるのですか?」
「ああ、そうするしかないな」
「最近、親子鑑定も増えていると聞きます」

 ドーサンもどこの家かは伏せられてではあるが、検査機関から親子鑑定が増えていると聞いている。実際に他家で親子鑑定を依頼されたこともあった。

「そうか、した方がいいのだろうか」
「疑われている方もいるそうですが、間違いなく自分の子どもだとしても、ハッキリさせるために、してらっしゃる方も多いそうです」
「そうか…念のために考えなくてはならないな」
「されるようならば、ご依頼ください」
「ああ、ありがとう」

 しばらくすると、ガルッツ子爵であるシャーリンの兄・ベリックが慌てた様子で、やって来た。

「また何かあったのでしょうか?」
「シャーリンが妊娠をしたが、私の子ではない」
「…な」

 ベリックは、それ以上の言葉が出て来なかった。

「一年以上そういったことはしていない。今、臨月だったとしても可能性は低い。ドーサン医師、臨月ではないよな?」
「はい、まだ初期だと思います」
「そんな…大変、申し訳ございません」
「生まれてから親子鑑定をしてもいいが、離縁するしかない」
「はい…」

 さすがにベリックも、何も言えることがなかった。妹は自殺未遂を起こし、婚約を解消して、結婚した。当たり前に一生添い遂げると思っていた。

 だが、年々上手くいっていない様子も分かっていた。

 いつか離縁されるのではないかと思っていたが、まさか別と男の子どもを身籠るなど、想像もしていなかった。

「シャーリンにはまだ伝えていない。最近、また誘って来るようになっていたが、誤魔化そうとしていたのかもしれないな…」

 働き出してから、誘って来なくなったはずが、ここ数か月前からまた誘って来るようになっていた。だが、すべて断っていた。

「申し訳ございません…」
「ベリック殿のせいではない、シャーリンのこれが答えなのだろう。これから伝えるから、同席して貰えるか?」
「はい…」

 ジェフとベリック、執事と侍医はシャーリンの部屋に向かった。
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