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離縁の余波3
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その後、学園でシャーリンに出会って、明るくよく笑う彼女を、一緒にいる内にどんどん好きになった。
今となっては、どうしてそこまでとは思うが、当時はシャーリンと結婚することしか考えていなかった。だが、両親は絶対に許してくれず、二人で平民になって結婚するという選択肢はジェフの中にはなかった。
子どもが出来れば両親も認めざる得ないだろうと思い、今では考えられないほど、情事に耽った。当時は私の方が性欲が強かったと思う。だが、結婚してから八人も生まれたのに、当時は子どもが出来ることはなかった。
シャーリンにも縁談が持ち上がり、追い込まれた私たちは賭けに出たのである。
その後は皆も味方してくれて、婚約は解消となり、シャーリンとの結婚も決まった。同時にフォンターナ家の動きは早く、あっという間にいなくなった。
そして、天候が変わり、望んでいた子どもは沢山生まれたが、婚約も決まらない。お金にも困っている。
「だが、騎士団長は譲らなかったそうだからな」
「両親も出て行くと聞いて、話に行ったのですが、追い返されたようでして…」
「そうか」
陛下が止められないのに、不義理をしたマクローズ前伯爵夫妻では止めることは出来なかっただろう。
「未だにどうして、出て行ったのかと思うほどです」
「だが、どこか天候の落ち着いた国に移住していたら、そちらの方が幸せだったかもしれない。幸せに暮らしているかもしれない」
「それは…」
ジェフはエルムがどうしているかなど、考えたこともなかった。
「お金に困ることは。絶対にないだろうからな」
「えっ、ええ」
ジェフは両親にお前がシャーリンを選んだから、苦労しているのだと言われることは、よくあった。だが、フォンターナ家が援助してくれたとは思えないのは、やはりエルムが愛されているとは思えないからだろう。
そして、アニバーサリーがなくなってしまったのは痛手であった。変わらずにずっと存在するのだと思って生きて来たが、お前のせいだと言われているジェフには、口に出して責めることは出来なかった。
「我が国では、肩身が狭かっただろうしな」
「そうですね…」
あのままエルムが国にいたら、どんな風に思われたかなど、想像もしたこともなく、アニバーサリーだけでも残して去ってくれたら良かったと思い続けている。
ジェフは帰りの馬車で、シャーリンも子どものことも念のため、調べた方がいいのかと一瞬は考えた。
だが、金銭的に余裕もないこともあって、無駄金になるのではないかという方が強かった。シャーリンも仕事に行くようになってからは、誘って来るようなことはなくなり、強く離縁したい気持ちまではなくなりつつあった。
ミミリーも真面目に学園には通っているようで、平穏と言えば平穏だが、邸にはすっかり明るさはない。
しばらくすると、数組の夫妻が離縁したという話を聞くことになった。
爵位に関係なく、公爵家から男爵家まで聞くことになり、アンドリュー様が言っていた、王太子夫妻の離縁の余波なのだろうと感じた。
妻側からということもあるかもしれないが、性欲の強い妻に辟易し、我慢していた夫が多いのではないかと感じた。
子どもも連れて戻っている者は、夫の子どもではなかったのではないかと疑いもしたが、真相は本人に聞かなければ分からない。
ジェフ自身も絶対とは言えないが、これまでもシャーリンが浮気するとは思えず、しているような様子も感じることはなかった。
だが、シャーリンの様子がおかしいことに、長女・メイリーが気付いた。
「お父様、ちょっといいですか?お母様のことなんですけど」
「何かあったのか?」
「部屋の前を通ったら、具合の悪そうな声がして、声を掛けたんだけど、大丈夫だからって言われて」
今日はシャーリンは休みで、部屋で休んでいるはずであった。
「分かった、侍医を呼んで置こう」
「お願いします」
今となっては、どうしてそこまでとは思うが、当時はシャーリンと結婚することしか考えていなかった。だが、両親は絶対に許してくれず、二人で平民になって結婚するという選択肢はジェフの中にはなかった。
子どもが出来れば両親も認めざる得ないだろうと思い、今では考えられないほど、情事に耽った。当時は私の方が性欲が強かったと思う。だが、結婚してから八人も生まれたのに、当時は子どもが出来ることはなかった。
シャーリンにも縁談が持ち上がり、追い込まれた私たちは賭けに出たのである。
その後は皆も味方してくれて、婚約は解消となり、シャーリンとの結婚も決まった。同時にフォンターナ家の動きは早く、あっという間にいなくなった。
そして、天候が変わり、望んでいた子どもは沢山生まれたが、婚約も決まらない。お金にも困っている。
「だが、騎士団長は譲らなかったそうだからな」
「両親も出て行くと聞いて、話に行ったのですが、追い返されたようでして…」
「そうか」
陛下が止められないのに、不義理をしたマクローズ前伯爵夫妻では止めることは出来なかっただろう。
「未だにどうして、出て行ったのかと思うほどです」
「だが、どこか天候の落ち着いた国に移住していたら、そちらの方が幸せだったかもしれない。幸せに暮らしているかもしれない」
「それは…」
ジェフはエルムがどうしているかなど、考えたこともなかった。
「お金に困ることは。絶対にないだろうからな」
「えっ、ええ」
ジェフは両親にお前がシャーリンを選んだから、苦労しているのだと言われることは、よくあった。だが、フォンターナ家が援助してくれたとは思えないのは、やはりエルムが愛されているとは思えないからだろう。
そして、アニバーサリーがなくなってしまったのは痛手であった。変わらずにずっと存在するのだと思って生きて来たが、お前のせいだと言われているジェフには、口に出して責めることは出来なかった。
「我が国では、肩身が狭かっただろうしな」
「そうですね…」
あのままエルムが国にいたら、どんな風に思われたかなど、想像もしたこともなく、アニバーサリーだけでも残して去ってくれたら良かったと思い続けている。
ジェフは帰りの馬車で、シャーリンも子どものことも念のため、調べた方がいいのかと一瞬は考えた。
だが、金銭的に余裕もないこともあって、無駄金になるのではないかという方が強かった。シャーリンも仕事に行くようになってからは、誘って来るようなことはなくなり、強く離縁したい気持ちまではなくなりつつあった。
ミミリーも真面目に学園には通っているようで、平穏と言えば平穏だが、邸にはすっかり明るさはない。
しばらくすると、数組の夫妻が離縁したという話を聞くことになった。
爵位に関係なく、公爵家から男爵家まで聞くことになり、アンドリュー様が言っていた、王太子夫妻の離縁の余波なのだろうと感じた。
妻側からということもあるかもしれないが、性欲の強い妻に辟易し、我慢していた夫が多いのではないかと感じた。
子どもも連れて戻っている者は、夫の子どもではなかったのではないかと疑いもしたが、真相は本人に聞かなければ分からない。
ジェフ自身も絶対とは言えないが、これまでもシャーリンが浮気するとは思えず、しているような様子も感じることはなかった。
だが、シャーリンの様子がおかしいことに、長女・メイリーが気付いた。
「お父様、ちょっといいですか?お母様のことなんですけど」
「何かあったのか?」
「部屋の前を通ったら、具合の悪そうな声がして、声を掛けたんだけど、大丈夫だからって言われて」
今日はシャーリンは休みで、部屋で休んでいるはずであった。
「分かった、侍医を呼んで置こう」
「お願いします」
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