悪意か、善意か、破滅か

野村にれ

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辟易

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「結局、何も分からなかったのね」

 バトワスを訪ねて来たオリビアは、自分は何もしていない癖に、情けないと言わんばかりに言い放った。

「簡単に分かるはずがないだろう、これからも調べることになった」
「じゃあ、また来るってこと?」
「両陛下もこれからも是非にとおっしゃっている、君が意見するのか?それなら、直接言いなさい」
「…そ、それは」

 さすがに罰が悪いと思ったオリビアは言葉に詰まったが、まだバトワスが美しいと言ったことを根に持っており、許せないでいた。

「何か用か?」
「何か力になれるかと思っただけじゃない」
「時間があるなら、君も天候の変わった年、その前後の周りの調査を行ってくれ。何をしていたか、何が流行っていたかでもいい」
「私が?」
「力になってくれるのではないのか?」

 それすら嘘なのかと、溜息を付いたが、それに気付かないオリビアは続けた。

「そうじゃなくて、私の機嫌を取らなくていいのかって言っているの!あんなメーリンなんて王女に現を抜かしたことを許していないんだから」
「また閨か?もういい加減にしてくれと言っただろう」

 面倒になったバトワスは、明け透けに聞くようになっていた。

「そ、そうじゃないわ」
「じゃあ、何だ…まだやることがあるんだ。見たら分かるだろう?邪魔するな」
「機嫌を取ってくれてもいいじゃない」

 どうして、手伝いもしない、労ってもくれない、妻の機嫌を取らなくてはいけないのかが分からない。

「じゃあ、私の機嫌はどんどん悪くなるのは、どうする?」
「それよりも私の方が大事でしょう!」
「強制的に連れ出されたいか?」

 今まで追い出すような真似はしなかったが、さすがに限界である。

「どうしてよ、どうして…新婚の頃は何度も何度も、求め合ったじゃない」
「若かったからだよ」
「今も同じ気持ちでしょう?」
「そんなにしたいのか?私はそれよりも睡眠を大事にしたい。君は元々、性欲が強いんだろうな…凄いな」
「っな」

 さすがに恥ずかしい気持ちになったオリビアは、真っ赤になった。

「強くないわ、普通よ」
「そうか、じゃあ、私が普通ではないのだろうな。すまないが、もうそんな気にはならない」
「っ、何ですって!出来ないって言うの?」
「そうなのかもしれない」

 こうやって、何度も誘いに来るのならば、不能だと思われた方がいい。子どもももう必要のないほどいるのだから、問題はない。

「そんなどうにかならないの?」
「ああ、精神的な問題だろうな」
「忙しいせいじゃない?私に癒されれば違うわよ、ね?」

 どうにかしてでも性行為を行いたいオリビアは、また同じことを言っている。

「こんなに邪魔をされて、腹立たしいと思わせて来る君に癒されることはないよ」
「っな」
「予算内なら男娼を呼んでもいいと、許可を出して貰うように話をしておくか?」
「男娼ですって!」
「愛人を持つことは出来ないが、男娼を呼ぶことは出来る」

 王族が避妊してはならないのは、夫婦だけで、相手が夫や妻でない場合は、避妊することは出来るので、男娼を呼べばいい。バトワスは最終手段に考えており、男娼はプロなので相手をしてくれる。

「あなたは、私が他の男性に抱かれもいいって言うの?」
「私が抱けないのだから、仕方ないだろう。相手はプロだから、満足させて貰えるのではないか?」
「っな!本当にいいって言うのね!」
「ああ、話して置くから、呼びたいなら申請しなさい」
「本当に呼ぶわよ」
「ああ」

 その言葉はオリビアは後悔しても知らないと言う意味だったが、バトワスはそんなにしたいのかと、ますます辟易した。

 陛下にオリビアに男娼の許可を得るのに、性欲が強過ぎて、誘いに来て、公務がままならないという理由を書いて届けて貰うと、母であるシンバリア王妃陛下が珍しくバトワスの元へやって来た。

 一体、何を言われるのかと身構えるほどであった。
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