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お花畑だった家族の真実13
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チェイスは見る目が変わったことは分かっていたが、仕事は続けていた。いい役職に就いていたわけではなかったことで、降格されることはなかった。
王家は飢え死にさせるよりも、肩身の狭い思いをして、必死で生きることで、ベルアンジュへの後悔をさせたかった。
私的にチェイスに話し掛けて来る者は、いなかった。遠巻きに見られているだけで、ベルアンジュには強く出ていたが、元々は小心者である。
そして他力本願であることは変わらず、今は難しくとも、時が経てば、バスチャン伯爵に援助を頼もうと思っていた。
だが、そのバスチャン伯爵もラオルス公爵から、ベルーナの留学の成果があまり振るわないという理由で、予定通り婚約は白紙にされることになった。
ベルーナも話を合わせるために、実家に再三頑張っているが、難しくて、なかなか進んでいないと手紙を出していた。
しっかりやれ、後がない、ラオルス公爵に捨てられたら、もう縁談などない、これ以上恥を掻かせる気か、戻ってくる家はないといった返事を貰っていた。
これでベルーナは思った通りの展開になり、こちらに残って働くという地盤が出来たと思った。
妊娠して出産する際も、貴族としては当たり前なのではあるが、価値を落としてどうする気だと、子どもを何度も降ろせと迫って、ベルーナが大きなお腹で人目のつく場所に行ってもいいのかと脅して、プライドの高い父は隠すことに必死になった。
「ベルーナには、もっと頑張らせますから!」
「そうです、どうか…もう少し時間を」
妊娠をしていて、あまり勉強をしていない状態のベルーナはありのままで、試験を受けて、その結果をラオルス公爵とバスチャン伯爵家に送っていた。
酷いというほどではないが、他国とも付き合いの多い、ラオルス公爵家の求める能力に達していない結果ということである。
「いや、長々とこちらも待っている時間はない。ベルーナ嬢も納得している」
「そんなはずはありません」
ベルーナはランバートと結婚したいと、信じていた。
「大変申し訳なく思っていると、謝罪の手紙を貰っている」
「そんな…」
「留学費用は返さなくていい」
バスチャン伯爵は、ラオルス公爵家と縁繋ぎになると浮かれ、分からないわけでもないが、爵位が上がるわけでもないのに、元々横柄ではあったが、伯爵家以上の振る舞いをするようになっていた。
「そんな…」
「そういえば、ソアリ伯爵に援助をしていたようだが?」
「それは親戚だったので、今は縁を切っております」
「援助は個人の自由だ、だが伯爵はベルアンジュ夫人の虐待に気付けなかったのか?」
ラオルス公爵は婚約の白紙は決まっていたことだったので、自ら赴くこともなかったのだが、ベルアンジュのことをバスチャン伯爵にも聞いてみたかった。
「はい、勿論知りませんでした」
「夫人はどうだ?」
「私も夫人と、あまり仲が良くなかったので…」
「そうです、ベルアンジュとは会う機会がなかったものですから」
援助していたのは親戚ということもあるが、ソアリ伯爵より上だという気持ちが、優越感で気分が良かっただけで、ベルアンジュのことを気にすることはなかった。
むしろ、自身の娘であるベルーナに非があるにも関わらず、婚約を譲ってやったという気持ちで、感謝くらいしろと思っていたほどである。
「気付かないものか?妹のせいで学園に通わせて貰えないなど、おかしいと思わなかったのか?」
「それは家の考えがありますから。今となっては、気付いて、助け出してやれていたらと思っています」
「私もそう思っています」
「ああ、そうしてくれていたらと思うよ」
ラオルス公爵は本当に助け出してやってくれていたら、ベルーナが支えることが出来たのではないかと、心から思った。
勿論、婚約は覆ることもなく、ランバートとベルーナの婚約は白紙となった。
王家は飢え死にさせるよりも、肩身の狭い思いをして、必死で生きることで、ベルアンジュへの後悔をさせたかった。
私的にチェイスに話し掛けて来る者は、いなかった。遠巻きに見られているだけで、ベルアンジュには強く出ていたが、元々は小心者である。
そして他力本願であることは変わらず、今は難しくとも、時が経てば、バスチャン伯爵に援助を頼もうと思っていた。
だが、そのバスチャン伯爵もラオルス公爵から、ベルーナの留学の成果があまり振るわないという理由で、予定通り婚約は白紙にされることになった。
ベルーナも話を合わせるために、実家に再三頑張っているが、難しくて、なかなか進んでいないと手紙を出していた。
しっかりやれ、後がない、ラオルス公爵に捨てられたら、もう縁談などない、これ以上恥を掻かせる気か、戻ってくる家はないといった返事を貰っていた。
これでベルーナは思った通りの展開になり、こちらに残って働くという地盤が出来たと思った。
妊娠して出産する際も、貴族としては当たり前なのではあるが、価値を落としてどうする気だと、子どもを何度も降ろせと迫って、ベルーナが大きなお腹で人目のつく場所に行ってもいいのかと脅して、プライドの高い父は隠すことに必死になった。
「ベルーナには、もっと頑張らせますから!」
「そうです、どうか…もう少し時間を」
妊娠をしていて、あまり勉強をしていない状態のベルーナはありのままで、試験を受けて、その結果をラオルス公爵とバスチャン伯爵家に送っていた。
酷いというほどではないが、他国とも付き合いの多い、ラオルス公爵家の求める能力に達していない結果ということである。
「いや、長々とこちらも待っている時間はない。ベルーナ嬢も納得している」
「そんなはずはありません」
ベルーナはランバートと結婚したいと、信じていた。
「大変申し訳なく思っていると、謝罪の手紙を貰っている」
「そんな…」
「留学費用は返さなくていい」
バスチャン伯爵は、ラオルス公爵家と縁繋ぎになると浮かれ、分からないわけでもないが、爵位が上がるわけでもないのに、元々横柄ではあったが、伯爵家以上の振る舞いをするようになっていた。
「そんな…」
「そういえば、ソアリ伯爵に援助をしていたようだが?」
「それは親戚だったので、今は縁を切っております」
「援助は個人の自由だ、だが伯爵はベルアンジュ夫人の虐待に気付けなかったのか?」
ラオルス公爵は婚約の白紙は決まっていたことだったので、自ら赴くこともなかったのだが、ベルアンジュのことをバスチャン伯爵にも聞いてみたかった。
「はい、勿論知りませんでした」
「夫人はどうだ?」
「私も夫人と、あまり仲が良くなかったので…」
「そうです、ベルアンジュとは会う機会がなかったものですから」
援助していたのは親戚ということもあるが、ソアリ伯爵より上だという気持ちが、優越感で気分が良かっただけで、ベルアンジュのことを気にすることはなかった。
むしろ、自身の娘であるベルーナに非があるにも関わらず、婚約を譲ってやったという気持ちで、感謝くらいしろと思っていたほどである。
「気付かないものか?妹のせいで学園に通わせて貰えないなど、おかしいと思わなかったのか?」
「それは家の考えがありますから。今となっては、気付いて、助け出してやれていたらと思っています」
「私もそう思っています」
「ああ、そうしてくれていたらと思うよ」
ラオルス公爵は本当に助け出してやってくれていたら、ベルーナが支えることが出来たのではないかと、心から思った。
勿論、婚約は覆ることもなく、ランバートとベルーナの婚約は白紙となった。
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