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お花畑だった家族の真実12
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キャリーヌは辺境での労働刑となった。無理をさせて、長続きしなければ意味がないので、歩合制で洗濯や縫物をする仕事である。
しかも、男性とトラブルを起こした者が入るので、男子禁制。小さな山を超えなければならない場所にあるため、逃げようにも見張りがおり、もし逃げられても非力なキャリーヌは発作が出るか、野垂れ死ぬだけである。
「こんなこと出来ないわ」
「歩合制だから刑期が長引くだけ、短期間で命を懸けて過酷な仕事の方がいいか?」
「そんな仕事あるの?」
「何でも請け負う娼婦や、鉱山の採掘、後は汚物処理だな」
そんなことを言われれば、キャリーヌも黙るしかなかった。食事にもあり付けないので、手際の悪いまま、一応は働くようになった。
そして、マックスに手紙を出そうとしたが、オマー王国、マックス様としか書かれていないことで、これでは届かないと言われて、ようやく住所が必要なことに気付いたが、誰もマックスを知るはずもなく、勝手に途方に暮れるのだった。
両親はキャリーヌのことは心配ではあるが、薬だけを差し入れすることしか出来ないと理由にして、納得することにした。
「キャリーヌは可哀想だが、私たちにはどうにもならない」
「そうね…陛下に意見するなんて…どうしてあんな真似を。いくら持病があっても、庇い切れないわ」
「薬は服用させて貰えるようだから、信じるしかないだろう」
ベントルにもキャリーヌが実刑になったことを話したが、罰せられたかったのかというだけで、あれだけ庇っていたキャリーヌには一切興味をなくしていた。
ソアリ伯爵夫妻は、キャリーヌと違って、社交界には参加する余裕もなかったが、ノーマが内職の納品の帰りに、鉢合わせた夫人がいた。
「ソアリ伯爵夫人…」
「まあ、ガイラス伯爵夫人。お久しぶりですわね」
ノーマはいつもと変わらない姿で、答えた。
「ええ、大変だったそうですわね…お嬢様は残念でなりません」
「はい…どうしているのかと心配しております」
嫌味を含めたはずのガイラス伯爵夫人は、首を傾けた。
まるで生きているかのような言葉で、まさかおかしくなっているのかと思ったが、子どもを虐待をするような人間とまともではないのだろうと思った。
お悔やみの言葉を掛けて、去ることにした。
「ご冥福をお祈りします」
「…え」
ようやくお嬢様というのが、ガイラス伯爵夫人はベルアンジュ、ノーマはキャリーヌを指していることに、二人は気付いた。
「ああ、ベルアンジュのことを…ええ、とても悲しくて、胸を痛めておりますの」
「それなのに、もう一人のお嬢様のことを心配しているのですね」
苛立ったガイラス伯爵夫人は、呆れた様子で問い掛けた。キャリーヌが実刑になっているのも、勿論知っている。
「あの、それは…キャリーヌは病気ですから」
ノーマもキャリーヌと同じで、病気だからというのを全ての理由にしていた。そうすれば、これまでも同情して貰って、攻撃されることはなかったからである。
「病気であることは事実のようだけど、気管支喘息の方は沢山いるわ。今は良い薬もあるわけだから」
ガイラス伯爵夫人は、ベルアンジュがNN病で亡くなったことを、まさかノーマが知らないとは思っていない。
「それはそうですけど、心配するのは親としては当然で」
「あなたの感覚が私には理解は出来ないわ、失礼しますわね」
ノーマはベルアンジュを虐待したとされたことで、病気の子どもを心配しても理解されないのだと思った。そもそも実刑を受けたことを知っている者は、キャリーヌを心配しようという誰もいないのは、当然である。
しかも、男性とトラブルを起こした者が入るので、男子禁制。小さな山を超えなければならない場所にあるため、逃げようにも見張りがおり、もし逃げられても非力なキャリーヌは発作が出るか、野垂れ死ぬだけである。
「こんなこと出来ないわ」
「歩合制だから刑期が長引くだけ、短期間で命を懸けて過酷な仕事の方がいいか?」
「そんな仕事あるの?」
「何でも請け負う娼婦や、鉱山の採掘、後は汚物処理だな」
そんなことを言われれば、キャリーヌも黙るしかなかった。食事にもあり付けないので、手際の悪いまま、一応は働くようになった。
そして、マックスに手紙を出そうとしたが、オマー王国、マックス様としか書かれていないことで、これでは届かないと言われて、ようやく住所が必要なことに気付いたが、誰もマックスを知るはずもなく、勝手に途方に暮れるのだった。
両親はキャリーヌのことは心配ではあるが、薬だけを差し入れすることしか出来ないと理由にして、納得することにした。
「キャリーヌは可哀想だが、私たちにはどうにもならない」
「そうね…陛下に意見するなんて…どうしてあんな真似を。いくら持病があっても、庇い切れないわ」
「薬は服用させて貰えるようだから、信じるしかないだろう」
ベントルにもキャリーヌが実刑になったことを話したが、罰せられたかったのかというだけで、あれだけ庇っていたキャリーヌには一切興味をなくしていた。
ソアリ伯爵夫妻は、キャリーヌと違って、社交界には参加する余裕もなかったが、ノーマが内職の納品の帰りに、鉢合わせた夫人がいた。
「ソアリ伯爵夫人…」
「まあ、ガイラス伯爵夫人。お久しぶりですわね」
ノーマはいつもと変わらない姿で、答えた。
「ええ、大変だったそうですわね…お嬢様は残念でなりません」
「はい…どうしているのかと心配しております」
嫌味を含めたはずのガイラス伯爵夫人は、首を傾けた。
まるで生きているかのような言葉で、まさかおかしくなっているのかと思ったが、子どもを虐待をするような人間とまともではないのだろうと思った。
お悔やみの言葉を掛けて、去ることにした。
「ご冥福をお祈りします」
「…え」
ようやくお嬢様というのが、ガイラス伯爵夫人はベルアンジュ、ノーマはキャリーヌを指していることに、二人は気付いた。
「ああ、ベルアンジュのことを…ええ、とても悲しくて、胸を痛めておりますの」
「それなのに、もう一人のお嬢様のことを心配しているのですね」
苛立ったガイラス伯爵夫人は、呆れた様子で問い掛けた。キャリーヌが実刑になっているのも、勿論知っている。
「あの、それは…キャリーヌは病気ですから」
ノーマもキャリーヌと同じで、病気だからというのを全ての理由にしていた。そうすれば、これまでも同情して貰って、攻撃されることはなかったからである。
「病気であることは事実のようだけど、気管支喘息の方は沢山いるわ。今は良い薬もあるわけだから」
ガイラス伯爵夫人は、ベルアンジュがNN病で亡くなったことを、まさかノーマが知らないとは思っていない。
「それはそうですけど、心配するのは親としては当然で」
「あなたの感覚が私には理解は出来ないわ、失礼しますわね」
ノーマはベルアンジュを虐待したとされたことで、病気の子どもを心配しても理解されないのだと思った。そもそも実刑を受けたことを知っている者は、キャリーヌを心配しようという誰もいないのは、当然である。
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