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八方塞がり
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「キャリーヌ!一体、どうするんだ…払うお金など…もうない」
「お姉様のせいよ!」
キャリーヌは、勝手に嫁ぐはずだったオーバス侯爵に訴えられて、ショックを受けていた。
「そんなことは分かっている!だが、このままでは何とか爵位は守ったのに、どうするんだ…」
「アデュエルに、そうよ、アデュエルに頼めば」
「国を出たと言っていたではないか、お前のせいで、オーバス侯爵に出るように言われたんじゃないか」
「そんな…」
アデュエルはオーバス侯爵家に戻りたいとも言っていないのに、キャリーヌは勝手に戻りたいと思い込み、自分のしていることは正義だと思っていた。
「今更、騙されたと言っても難しいわよね…」
「オーバス侯爵家に行っていなければ、違ったかもしれないがな」
「バスチャン伯爵家に、もう一度、頼んでみるのは…」
「貸すなら、今までの金を返してからだと言われている」
「そんな…」
返さなくていいと言われているだけ、有難い話なのだが、バスチャン伯爵は念のために再び貸して欲しいと頼むなら、今までのお金を全て返してからだと伝え、そんなお金があるなら借りになどいかない。
「払えば住むところがなくなる…」
「それは…」
ソアリ伯爵家は大きな邸ではなく、使用人も多くはない。だが、家族5人が住むには十分な大きさであった。手放したら、家族4人住むところを探さなければならないが、満足な家は手に入らないだろう。
どうすればいいんだと頭を抱えていると、ゴホゴホ…ゴホゴホ、ヒューヒューと、キャリーヌは咳を始めた。今までなら、すぐさま駆け付けて、医者を呼んでいたが、そんなお金もない。
「…大丈夫か、もう休みなさい」
「ええ、部屋に戻りなさい」
「お医者様を…」
「そんなお金はもうない、薬を服用して休みなさい」
薬も前の物に戻っており、効果がないわけではないが、キャリーヌには新しい薬が合っていたのか、環境の変化に発作が出たのだろう。
キャリーヌは咳き込みながら、部屋に戻るしかなかった。今までなら発作が出れば、両親か兄が一晩中一緒にいてくれたが、もうそれどころではなくなっていた。
「お姉様のせいよ…ヒューヒュー、アデュエルも私を置いていくなんて…絶対に許さないんだから」
キャリーヌは薬が効き、落ち着くと、いい考えが浮かんだ。
「そうよ、お姉様はもういないんだから、全部お姉様のせいにすればいいのよ。可哀想な私が言えば、皆、信じてくれるわ」
まともな人間であれば、ベルアンジュの虐待と、マリクワン侯爵家の詐欺と名誉棄損、オーバス侯爵家の名誉棄損の罪状が、どうやったらベルアンジュの責任になるのかと思うが、これまで狭い世界で、自分の言う通りに物事が進み、都合よく生きて来たキャリーヌには、上手くいくと信じていた。
兄・ベントルは、部屋で邸にあった酒を飲んでいた。
余裕があったからこそ、キャリーヌを慈しみ、ベルアンジュを虐げていただけで、余裕がなくなってしまえば、自分のことしか考えられなくなっていた。
キャリーヌがマリクワン侯爵家に嫁いだら、ベルアンジュをまた虐げながら、自身も結婚しようなどと考えていた。
だが、領地もなくなってしまった今、嫁いでくれるような者はいないだろう。
「クソッ!ベルアンジュを嫁がせるのではなかった!あれはこの家に縛り付けて、利用すればよかったんだ」
確かにマリクワン侯爵家から恩恵を受けることはなかったが、バスチャン伯爵に頼まれて、断れる縁談ではなかったことを忘れている。
ベルアンジュがもうこの世にいないというのに、ソアリ伯爵家は誰もベルアンジュを弔うこともなかった。
「お姉様のせいよ!」
キャリーヌは、勝手に嫁ぐはずだったオーバス侯爵に訴えられて、ショックを受けていた。
「そんなことは分かっている!だが、このままでは何とか爵位は守ったのに、どうするんだ…」
「アデュエルに、そうよ、アデュエルに頼めば」
「国を出たと言っていたではないか、お前のせいで、オーバス侯爵に出るように言われたんじゃないか」
「そんな…」
アデュエルはオーバス侯爵家に戻りたいとも言っていないのに、キャリーヌは勝手に戻りたいと思い込み、自分のしていることは正義だと思っていた。
「今更、騙されたと言っても難しいわよね…」
「オーバス侯爵家に行っていなければ、違ったかもしれないがな」
「バスチャン伯爵家に、もう一度、頼んでみるのは…」
「貸すなら、今までの金を返してからだと言われている」
「そんな…」
返さなくていいと言われているだけ、有難い話なのだが、バスチャン伯爵は念のために再び貸して欲しいと頼むなら、今までのお金を全て返してからだと伝え、そんなお金があるなら借りになどいかない。
「払えば住むところがなくなる…」
「それは…」
ソアリ伯爵家は大きな邸ではなく、使用人も多くはない。だが、家族5人が住むには十分な大きさであった。手放したら、家族4人住むところを探さなければならないが、満足な家は手に入らないだろう。
どうすればいいんだと頭を抱えていると、ゴホゴホ…ゴホゴホ、ヒューヒューと、キャリーヌは咳を始めた。今までなら、すぐさま駆け付けて、医者を呼んでいたが、そんなお金もない。
「…大丈夫か、もう休みなさい」
「ええ、部屋に戻りなさい」
「お医者様を…」
「そんなお金はもうない、薬を服用して休みなさい」
薬も前の物に戻っており、効果がないわけではないが、キャリーヌには新しい薬が合っていたのか、環境の変化に発作が出たのだろう。
キャリーヌは咳き込みながら、部屋に戻るしかなかった。今までなら発作が出れば、両親か兄が一晩中一緒にいてくれたが、もうそれどころではなくなっていた。
「お姉様のせいよ…ヒューヒュー、アデュエルも私を置いていくなんて…絶対に許さないんだから」
キャリーヌは薬が効き、落ち着くと、いい考えが浮かんだ。
「そうよ、お姉様はもういないんだから、全部お姉様のせいにすればいいのよ。可哀想な私が言えば、皆、信じてくれるわ」
まともな人間であれば、ベルアンジュの虐待と、マリクワン侯爵家の詐欺と名誉棄損、オーバス侯爵家の名誉棄損の罪状が、どうやったらベルアンジュの責任になるのかと思うが、これまで狭い世界で、自分の言う通りに物事が進み、都合よく生きて来たキャリーヌには、上手くいくと信じていた。
兄・ベントルは、部屋で邸にあった酒を飲んでいた。
余裕があったからこそ、キャリーヌを慈しみ、ベルアンジュを虐げていただけで、余裕がなくなってしまえば、自分のことしか考えられなくなっていた。
キャリーヌがマリクワン侯爵家に嫁いだら、ベルアンジュをまた虐げながら、自身も結婚しようなどと考えていた。
だが、領地もなくなってしまった今、嫁いでくれるような者はいないだろう。
「クソッ!ベルアンジュを嫁がせるのではなかった!あれはこの家に縛り付けて、利用すればよかったんだ」
確かにマリクワン侯爵家から恩恵を受けることはなかったが、バスチャン伯爵に頼まれて、断れる縁談ではなかったことを忘れている。
ベルアンジュがもうこの世にいないというのに、ソアリ伯爵家は誰もベルアンジュを弔うこともなかった。
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