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兄弟酒場 後編

それぞれの幸せ

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 ガラガラガラガラ・・・居酒屋の引き戸が開いた。

 「いらっしゃいませ!、あっ、母ちゃん・・・どうしたんだよ?」太助は客と思いきや引き戸を開けたの母親だった。

 「太助、お客さん連れて来たの」

 「さぁどうぞ入って入って・・・」母親は初老の恰幅かっぷくの良い男性を店に招き入れた。

 「あっどうぞどうぞ、ようこそ濱衛門へ!」太助は母親とその男性をテーブル席に案内した。

 テーブルに着き母親と初老男性は仲良さそうな雰囲気で話をしている。

 いつになくしおらしい雰囲気の母親に太助は違和感があった。

 「太助、ちょっと健作を呼んできて!あんたも来るのよ!」母親は生ビールを飲みながらホールに居た太助に声を掛けた。

 太助と健作は言われた通り母親のテーブルに行った。

 「こちら長男の太助、次男の健作です・・・」母親は初老の男性に兄弟を紹介した。

 太助と健作は初老の男性に訳がわからないが頭を下げる。

 「こちらは佐藤さん、母さん佐藤さんとお付き合いしているのよ!」母親は満身の笑顔で佐藤と言う初老の男性を兄弟に紹介した。

 「えっ?!えぇぇぇぇぇっ!!?」太助と健作はあわ蓋剥ふたむいた。

 「ブラボーっ!女将さん」気になって聞き耳を立てていた客の山田が母親のテーブルに入って来た。

 「あら、山田さん、いつもご贔屓ひいきにありがとうございます」

 「いやぁ、女将さん、素敵です!女将さんの第二の人生に乾杯っ!」大声を上げジョッキを天に掲げた。

 店の常連たちが一斉にジョッキやグラスを掲げ盛り上がった。

 「あら、嫌だ、恥ずかしい・・・」母親は顔を赤らめていた。

 そして・・・

 「太助、健作、そして源さん!今まで本当にありがとう!お母さんもこれから幸せになるわ!」母親は嬉しそうに兄弟に投げかけた。

 ホールの騒ぎが気になり源さんも厨房から出て来ていた。

 「おぉっ、女将さん・・・話は聞こえてきました、おめでとうございます!」

 「源さん、今までと一緒にこの店を守ってきてくれて本当にありがとう!」

 「そんな、女将さん・・・俺は旦那さんのことで女将さんに謝らなければならない事があるのに・・・」

 「源さん、昔の事はもう水に流すわ!」

 「女将さん・・・そんな・・・女将さんをだますような事をずっとしておいて、俺は何て言ったら良いのか・・・」

 「源さん、いいのよ・・・もう水に流すって言ったでしょ!これからはこの人と幸せになるわ!だから店のことはお願いね!」母親(女将)は満身の笑顔だった。

 「女将さん・・・わかりやんした!よし、今日は女将さんのお祝いで俺の|奢
《おご》りだ!みんなジャンジャン飲んでくれ!」源さんが威勢よく声を上げた。

 「うぉおぉぉぉっ!やった~、女将さんおめでとう!」店の中が常連客共々歓喜で沸いた。

 突然のお祭り騒ぎについていけない太助と健作。

 「お前たちもこれから上手くやれよ・・・」源さんが太助と健作のケツをみニヤッとした。

 「俺も第二の幸せ探すかなぁ」厨房に戻る去り際に源さんはつぶやくのだった。

 「源さんには敵わないね、俺たちの関係も全てお見通しのようだ、なぁ兄ちゃん・・・」

 「あぁ健作、全くだ・・・」

 太助と健作は互いに見つめ合い笑った。

 「さぁ健作、忙しくなってきたぞ!」

 「あぁ、兄ちゃん!」

 「生一丁入りました~!」

 「はい、喜んで~!」

 こうして居酒屋濱衛門の夜は今日も過ぎて行くのだった。

 母親は今後、実家を出て佐藤さんと暮らすことになる・・・

 太助と健作の二人だけの甘い実家暮らしが始まるのだったが・・・

・・・完




 
 

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