尻凛 shiri 〜 がちむちゲイの短編小説集 〜

くまみ

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湯屋の番人 前編

公共の場

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 「お客さん、タオル持って入ってください、上がる時に体拭けないでしょう!」湯屋の中に番人の声が響き渡る。

 ここはとある温泉地にある湯屋、湯屋とは無料公衆浴場のことだ。

 無料だけあって作りは簡素だが泉質は抜群である。

 ただし湯温はだいたい44度くらいありかなり熱い。

 浴場よくば(浴室)に大きな湯船が一つあるだけで、周囲に簡単な脱衣場だついばがあるが脱衣場と浴場をへだてる壁はなく一段の段差があるだけである。

 洗い場はなくもちろんシャンプーなども用意されていない。

 湯船から直接に掛け湯をし体を流してから入るという暗黙の決まりがあった。

 ①必ず掛け湯をし、股間と尻を洗う。
 ②手拭いまたはタオルを持って浴室に入る。

 地元民も観光客も様々な人が利用する湯屋なだけに暗黙の決まりが出来たのだ。

 そして暗黙の決まりによって湯の衛生や秩序が保たれていた。

 そして、湯を見張る番人もいつの間にか誕生したのだった。

 今では町役場から地元自治会へ管理を委託され自治会員が交代で管理をするようになっていた。

 津盛守つのもりまもるは49歳、がちむち体型、高校時代は相撲をやっていた。

 守は温泉が好きで若い頃はバイクで各地の温泉巡っていたが、結婚し子どもが出来てそんな余裕もなく地道に働いた。

 いつしか子どもは仕上がり、嫁も働いていて夫婦も別々の時間を過ごすことを楽しむようになった。

 守は若い頃の趣味でバイクで温泉を巡る事をしたかったものの、そこまでの気力もなく隣県の温泉に毎週末に来るようになったのだ。

 「お客さん、パイプのところは一番湯が熱いから入るならこっちのすみから入った方がいいですよ」守はまだ慣れていない年配の利用者に声を掛ける。

 「あっ、本当だ!全然湯の温度が違う・・・でも熱い、うわぁ熱い!」湯船に一瞬だけかった年配の利用者は湯から飛び出した。

 「慣れるまでは大変ですよ!」守は優しく声を掛けた。

 「これは慣れるもんなのか?!」年配利用者は守に聞き返した。

 「慣れますよ、何回か入っているとね」

 「アチアチチチっ!うわぁヤベェっ!」今度は若い利用者が湯船に一瞬浸かりすぐに飛び出した。

 それを見ていた周囲の客は一斉に笑い出した。

 ここの湯屋は社交場も兼ねているようだった。ただし、湯が熱く硫黄の匂いも強いため皆長くはいなかった。

 長くこの場所に居られるのは玄人くろうとだけであった。

 「よぉ!守さん、今日もご苦労さん!」一人の裸の男が守に声をかけてきた。

 その裸の男は股間と尻に掛け湯をし、さっさと洗い何なく湯船にかった。

 「あ、お疲れ様です伊深さん」

 「守さん、精が出るね、こちらは助かりますけどね!」伊深と言う男は全く動じず普通の風呂に入るかのに湯船に浸かっていた。

 伊深巌いぶかいわお62歳がちむち、髭を生やしたがちむち親父だ。温泉の影響か60代を感じさせない肌のつやが良い。

 体格も威勢も良いが礼儀正しく謙虚さと人柄の良さがにじみ出ている。

 地元では酒屋を営みこの温泉町の自治会長でもある。

 「ふぅぅ、今日もいい湯だっ!守さんも仕事ばかりしていないで湯に入ったらどうですか?」

 「あっ、はい!伊深さん」

 守と伊深は並んで風呂に入った。

 「守さん、今日はうちの母ちゃんいなくて、奈々湯旅館の忠雄と飲むんだけど一緒に来ませんか?」

 「え?あ、でも俺、閉所は22時だからそれまでは行けないです・・・」

 「おぉ、仕事熱心ですね!流石《さすが》は俺が見込んで声を掛けただけの事はあります!」

 「いや、そんな・・・ただ俺はこの湯が好きなだけです・・・ちょっとのぼせそうなので上がります!」守は立ち上がり伊深に背を向けて湯船から上がった。

 「いい尻だ・・・」伊深は湯に浸かりながら守の後ろ姿を見てつぶやくのだった。

 
 


 

 



 
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