尻凛 shiri 〜 がちむちゲイの短編小説集 〜

くまみ

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兄弟酒場 後編

家族の絆

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 ・・・6ヶ月後

 「いらっしゃいませ~!」太助は声を張り上げる。

 居酒屋濱衛門の店内は今日も賑わっていた。

 「たいちゃん今日のおすすめは何かな?」常連客の山田が太助に話しかけてきた。

 「山田さん、今日はマグロブツの刺身です!新鮮なのが入ってますよ!」太助は元気良く答える。

 「じゃあそれと・・・今日もいいケツしてるなぁ・・・太ちゃん・・・」山田はニヤニヤしながら太助のケツに手を伸ばす。

 「おっと山田さん・・・うちの兄貴のケツは高いですよ!」健作が笑いながら山田と太助の間に入ってきた。

 「健ちゃん、そう堅い事言うなよ~!楽しみで来てるんだからさぁ~」

 「じゃあ兄貴のケツじゃなくて俺のケツを触ってください!」健作は山田に微笑ほほえんだ。

 「えっ?!健ちゃんいいの?!ラッキー!!」

 「太助、健作!料理上がってるぞ!ボサっとしていないで早く運べ!」源さんが料理を持って厨房から出てきた。

 「は~い、源さん!すんません今行きます!」

 「すみません、山田さん・・・二人とお話中だったのに・・・」源さんは太助と健作を追いやり客の山田に頭を下げる。

 「いやぁ、こちらこそ仕事の邪魔しちゃってすまないね、やっぱり源さんにはかなわないよ・・・」

 「いえいえ、山田にはいつもご贔屓ひいきにしていただいてありがとうございます。

 「しかし源さん、あの二人は仲か良さそうだね、昔はあんなじゃなかったのに・・・」

 「えぇ、山田さんお陰様で、健作が戻って来てくれて良かったです」

 「源さん、しかし健ちゃんは雰囲気変わったよなぁ、前はもっとトゲトゲしてた感じがしたけど・・・」

 「そうなんです・・・健作は戻って来てから一皮剥けたみたいで・・・愛想が良くなっちまって本当、頼りになるんです!」

 「何だか源さん、二人の親父みたいに話すね・・・」

 「山田さん、冗談はよしてください!」

 山田と源さんは笑った。

 そう・・・半年前、太助と健作が愛し合い繋がったあの日から状況は一変した。

 健作は離婚し仕事を辞めて実家に戻り居酒屋濱衛門を手伝うようになっていた。
 
 元々お嬢様育ちの嫁と健作はうまくいってなかったのだ。

 健作の嫁も両親も健作の下町育ちを馬鹿にしているところがあり、それで嫁は夫である健作の実家に顔を出す事はなく、また健作も実家に来ずらい状況だったのだ。

 健作は嫁との生活に安らぎを感じておらず両親の影響もあり肩身が狭く居場所がなかった。

 何度か実家に戻ろうと桜木町まで来ていたが、やはり気が引けて戻りづらく近くのビジネスホテルに宿泊していた。

 その時に偶然に発展トイレで複数の男たちに回されられている太助を見かけたのだった。

 健作は外資系保険会社の仕事も元々嫁の父親のコネクションでの入社だったので、離婚を機に退職した。

 子どもたちも家系の跡取りとして嫁の実家に引き取られてしまったがそれでも健作は離婚出来た事でホッとしていた。

 健作はしがらみを捨てて、心機一転実家の居酒屋稼業を手伝う事になったのは3ヶ月前だった。

 あの後、太助と健作の兄弟、そして源さんに見守られ母親は胃がんの手術をする事になった。

 母親は死を覚悟していたのか、兄弟がそろった事に安堵あんどし涙した。

 手術は難しいく予後は悪いと言われていたにも関わらず奇跡的に大成功し、回復経過は順調だった。

 しかしながら母親は店には戻らず第二の人生を楽しむようになったのだった。
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