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21.キミが変えたこと
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On July 8, 1853, a fleet of four ships led by Perry appeared off the coast of Uraga.
Susquehanna, Mississippi, Saratoga, and Plymouth.The first black ships the Japanese saw were different from the sailing ships of the Russian and British navies that had visited them.
On the day after his arrival, spectators began to gather in Uraga, and the next day, spectators from Edo flooded in.
そうかそうか。1853年にペリーが来航して、黒船に驚いたか。
The U.S. fleet fired dozens of blanks in the bay for the purpose of celebrating American Independence Day and for signaling and signaling.
Although the Japanese had been notified in advance of this incident and the townspeople had been warned of it, the initial bombardment wreaked havoc in Edo.
When it was eventually discovered that they were blanks, the townspeople reportedly rejoiced with a sense of fireworks whenever the sound of gunfire echoed through the area.
そうかそうか。ペリーの撃った空砲で大混乱になったか。でも花火感覚で楽しんだって、――慣れるの早くね?
俺、黒船大砲ドッカーン! なみの衝撃受けたけど、全然慣れそうにないんだけど。すぐに適応して、見学に行ったり花火感覚で楽しむ江戸の人の図太さが羨ましい。
俺なんて。この先何があるかわかんなくって、桜町を警戒してるってのに。
で。
(1) a+b+c=0 のとき、次の等式を証明せよ。
a2+ac=b2+bc
えっと……。
条件 a+b+c=0 より、c=-a-b で。
(左辺)
=a2+ac
c=-a-b を代入すると、
=a2+a(-a-b)
=a2-a2-ab
=-ab
(右辺)
=b2+bc
c=-a-b を代入すると、
=b2+b(-a-b)
=b2-ab-b2
=-ab
よって、(左辺)=(右辺)となるので、
a2+ac=b2+bc
でで。
(2) 次の不等式を証明せよ。
a>1 , b>2 のとき、ab+2>2a+b
えっと、これは……。
(左辺)-(右辺)より、(ab+2)-(2a+b)=ab+2-2a-b
a について整理すると、
=(b-2)a-b+2
=(b-2)a-(b-2)
=(b-2)(a-1)
=(a-1)(b-2)
で。で。ででででで。
(あ~、だあっ、もうっ!)
aとかbとかゴチャゴチャうるせえっ!
俺が解かなきゃいけないのは、aとbがどうなんだとか、そういうことじゃねえんだよ!
俺と桜町の関係。
――僕が久慈真保だったとしたら、キミはどうする? 千寿姫?
桜町が言ったこと。
俺の前世は、コイツと繋がってる。
そんな中二病的な思考だったのに。聞いた桜町は、「なにバカなこと言ってるの? イタいよ?」とか笑いとばしてくれなくて。
それどころか「どうする、千寿姫」ときた。
(俺が千寿姫ってことは、アイツが真保だってこと……か?)
前世を思い出したっていっても、まだボンヤリハッキリしないことが多い。そのなかでも、アイツの発言だ。
(俺、千寿姫だった……のか?)
桜町が、俺に呼びかけた名前、「千寿姫」。
俺が千寿姫だったから?
だから、あの小説の姫の感情に心が揺さぶられた。俺が姫だったから、姫を襲った真保を嫌悪した。姫の行く末がどうしようもなく気になった。
階段から落ちた体の痛みより、俺たちの前世を思い出した衝撃が大きい。
あの後、なんとか家に帰ったけど、その衝撃は夜中になっても収まらない。
桜町。桜町和真。
俺、新里千尋。
前世と現世。
生まれ変わりに名前の縁があるのかどうかは知らないけど、和真=真保、千尋=千寿の構図は、とてもわかりやすい。
俺が剣道の授業で、無意識にアイツに斬ってかかったのは、前世からの反撃とすれば、説明もつく。
(アイツも、桜町も、自分が真保だったから、あんなに弁護してたのか?)
自分が真保で、俺が千寿姫だと知っていた桜町。
俺が「真保サイテー」と伝えた時、桜町はビミョーな顔をしてた。どっちかっていうと、真保に肩入れしてるような。あれは、自分の前世をけなされたから、それで反論しようとしてたってことか。
そして、俺に「忘れろ」って言ったのは、自分が俺を襲った前世を恥じてるから? でも、小説だと、千寿姫と真保が恋に落ちる展開になるって言ってたけど。それって、前世の自分の欲望を満たすため、そういう展開を予定してた……とか?
俺たちの前世を小説にするぐらいなんだから、きっと桜町は、前世に強い思い入れを持っているはず。
それでなくても、前世で因縁あった人物とは現世で、いい意味でも悪い意味でも縁の深い関係になるって、テレビだかなんだかで言ってたし。たしか、「ソウルメイト」とかなんとか。
でももし、俺たちがそういう、いわゆる「ソウルメイト」だと仮定して。俺、前世と同じルートを辿らなきゃいけないとか、そういう状況だったりする? 俺、このあと、桜町においしくいただかれちゃったりする?
あの、「だとしたら、キミはどうする?」って時の笑み。あれ、「やっと気づいてくれたんだね。では♡」ってこと? 俺、男なのに、同じ男の桜町に襲われて。桜町の嫁になるってこと?
(もしかして、俺、貞操の危機?)
思わず、背筋をブルッと大きく震わる。
あまりの恐ろしさに、思いっきり首を横に振る。ありえない。ありえたくない。あっちゃダメだ。たとえ桜町が「前と違って、優しくするから」とか言ってきても、絶対ダメ。前世はともかく、今は普通のクラスメート。桜町とは、あくまで「お友だち」でいたい。お友だちで終わらせたい。前世のことは「そんな時代もあったねと」で済ませるんだ! 済ませて欲しい。頼むから。
って。あ……。
キーンコーンカーンコーン……。
「よぉし、解答止め! 後ろから順に集めてこい」
終わりを告げる、残酷な音。
そうだよ、俺、そんなこと考えてる場合じゃないんだよ。今は、テストに集中しなきゃいけなかったんだよ。
(俺、オワタ……)
無情に集められていく答案用紙。ああ、俺、まだ問2の答え、書いてねえ。
机に突っ伏し轟沈する。
も~ダメだ。赤点、追試決定。
「大丈夫? 新里くん」
机に潰れた俺の横を、桜町が通りかかる。「大丈夫?」からの「クスッ」。
テメエなあ。誰のせいでこんなに悩んでると思ってんだよ。
「なんでもねえよ!」
精一杯の虚勢。ちょっとむくれて、身を起こす。
「そう? ならいいけど」
それ以上の会話はなく、桜町が自分の席に戻っていく。
ほんの一瞬、ソッと俺の机の上をなぞっていった、桜町の細い指。その指先に、「ドキッ!」というのか、「ビクッ!」ってしたのは、ちょっと内緒。
Susquehanna, Mississippi, Saratoga, and Plymouth.The first black ships the Japanese saw were different from the sailing ships of the Russian and British navies that had visited them.
On the day after his arrival, spectators began to gather in Uraga, and the next day, spectators from Edo flooded in.
そうかそうか。1853年にペリーが来航して、黒船に驚いたか。
The U.S. fleet fired dozens of blanks in the bay for the purpose of celebrating American Independence Day and for signaling and signaling.
Although the Japanese had been notified in advance of this incident and the townspeople had been warned of it, the initial bombardment wreaked havoc in Edo.
When it was eventually discovered that they were blanks, the townspeople reportedly rejoiced with a sense of fireworks whenever the sound of gunfire echoed through the area.
そうかそうか。ペリーの撃った空砲で大混乱になったか。でも花火感覚で楽しんだって、――慣れるの早くね?
俺、黒船大砲ドッカーン! なみの衝撃受けたけど、全然慣れそうにないんだけど。すぐに適応して、見学に行ったり花火感覚で楽しむ江戸の人の図太さが羨ましい。
俺なんて。この先何があるかわかんなくって、桜町を警戒してるってのに。
で。
(1) a+b+c=0 のとき、次の等式を証明せよ。
a2+ac=b2+bc
えっと……。
条件 a+b+c=0 より、c=-a-b で。
(左辺)
=a2+ac
c=-a-b を代入すると、
=a2+a(-a-b)
=a2-a2-ab
=-ab
(右辺)
=b2+bc
c=-a-b を代入すると、
=b2+b(-a-b)
=b2-ab-b2
=-ab
よって、(左辺)=(右辺)となるので、
a2+ac=b2+bc
でで。
(2) 次の不等式を証明せよ。
a>1 , b>2 のとき、ab+2>2a+b
えっと、これは……。
(左辺)-(右辺)より、(ab+2)-(2a+b)=ab+2-2a-b
a について整理すると、
=(b-2)a-b+2
=(b-2)a-(b-2)
=(b-2)(a-1)
=(a-1)(b-2)
で。で。ででででで。
(あ~、だあっ、もうっ!)
aとかbとかゴチャゴチャうるせえっ!
俺が解かなきゃいけないのは、aとbがどうなんだとか、そういうことじゃねえんだよ!
俺と桜町の関係。
――僕が久慈真保だったとしたら、キミはどうする? 千寿姫?
桜町が言ったこと。
俺の前世は、コイツと繋がってる。
そんな中二病的な思考だったのに。聞いた桜町は、「なにバカなこと言ってるの? イタいよ?」とか笑いとばしてくれなくて。
それどころか「どうする、千寿姫」ときた。
(俺が千寿姫ってことは、アイツが真保だってこと……か?)
前世を思い出したっていっても、まだボンヤリハッキリしないことが多い。そのなかでも、アイツの発言だ。
(俺、千寿姫だった……のか?)
桜町が、俺に呼びかけた名前、「千寿姫」。
俺が千寿姫だったから?
だから、あの小説の姫の感情に心が揺さぶられた。俺が姫だったから、姫を襲った真保を嫌悪した。姫の行く末がどうしようもなく気になった。
階段から落ちた体の痛みより、俺たちの前世を思い出した衝撃が大きい。
あの後、なんとか家に帰ったけど、その衝撃は夜中になっても収まらない。
桜町。桜町和真。
俺、新里千尋。
前世と現世。
生まれ変わりに名前の縁があるのかどうかは知らないけど、和真=真保、千尋=千寿の構図は、とてもわかりやすい。
俺が剣道の授業で、無意識にアイツに斬ってかかったのは、前世からの反撃とすれば、説明もつく。
(アイツも、桜町も、自分が真保だったから、あんなに弁護してたのか?)
自分が真保で、俺が千寿姫だと知っていた桜町。
俺が「真保サイテー」と伝えた時、桜町はビミョーな顔をしてた。どっちかっていうと、真保に肩入れしてるような。あれは、自分の前世をけなされたから、それで反論しようとしてたってことか。
そして、俺に「忘れろ」って言ったのは、自分が俺を襲った前世を恥じてるから? でも、小説だと、千寿姫と真保が恋に落ちる展開になるって言ってたけど。それって、前世の自分の欲望を満たすため、そういう展開を予定してた……とか?
俺たちの前世を小説にするぐらいなんだから、きっと桜町は、前世に強い思い入れを持っているはず。
それでなくても、前世で因縁あった人物とは現世で、いい意味でも悪い意味でも縁の深い関係になるって、テレビだかなんだかで言ってたし。たしか、「ソウルメイト」とかなんとか。
でももし、俺たちがそういう、いわゆる「ソウルメイト」だと仮定して。俺、前世と同じルートを辿らなきゃいけないとか、そういう状況だったりする? 俺、このあと、桜町においしくいただかれちゃったりする?
あの、「だとしたら、キミはどうする?」って時の笑み。あれ、「やっと気づいてくれたんだね。では♡」ってこと? 俺、男なのに、同じ男の桜町に襲われて。桜町の嫁になるってこと?
(もしかして、俺、貞操の危機?)
思わず、背筋をブルッと大きく震わる。
あまりの恐ろしさに、思いっきり首を横に振る。ありえない。ありえたくない。あっちゃダメだ。たとえ桜町が「前と違って、優しくするから」とか言ってきても、絶対ダメ。前世はともかく、今は普通のクラスメート。桜町とは、あくまで「お友だち」でいたい。お友だちで終わらせたい。前世のことは「そんな時代もあったねと」で済ませるんだ! 済ませて欲しい。頼むから。
って。あ……。
キーンコーンカーンコーン……。
「よぉし、解答止め! 後ろから順に集めてこい」
終わりを告げる、残酷な音。
そうだよ、俺、そんなこと考えてる場合じゃないんだよ。今は、テストに集中しなきゃいけなかったんだよ。
(俺、オワタ……)
無情に集められていく答案用紙。ああ、俺、まだ問2の答え、書いてねえ。
机に突っ伏し轟沈する。
も~ダメだ。赤点、追試決定。
「大丈夫? 新里くん」
机に潰れた俺の横を、桜町が通りかかる。「大丈夫?」からの「クスッ」。
テメエなあ。誰のせいでこんなに悩んでると思ってんだよ。
「なんでもねえよ!」
精一杯の虚勢。ちょっとむくれて、身を起こす。
「そう? ならいいけど」
それ以上の会話はなく、桜町が自分の席に戻っていく。
ほんの一瞬、ソッと俺の机の上をなぞっていった、桜町の細い指。その指先に、「ドキッ!」というのか、「ビクッ!」ってしたのは、ちょっと内緒。
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