女神に同情されて異世界へと飛ばされたアラフォーおっさん、特S級モンスター相手に無双した結果、実力がバレて世界に見つかってしまう

サイダーボウイ

文字の大きさ
上 下
62 / 77
第3章

12話

しおりを挟む
 そのあとすぐに目的の場所へと到着する。
 ゲントたちは今、広場前の大食堂へとやって来ていた。

 実はレモンに呼び出されていたのだ。

 彼女とはチャンネルを交換済みなので、ゲントはあれから何度か連絡を受けていた。
 今日はわざわざロゲスからやって来るのだという。
 
「重要な話があるとかレモンさん言ってたけど・・・なんだろうね?」

「きっとマスターと一緒にお食事がしたいんですよぉ~♪ つまりデートですっ!!」

「こんな大食堂でデートはないんじゃない?」

「ふぇ? そーなんですかぁ?」

(デートの経験が一度もない自分が言うのもなんだけど)

 からん、からん。

 大食堂は朝早くにもかかわらず、大賑わいだった。
 まだ約束の時間には早かったが・・・。

「あっ! ゲントぉー! こっちこっち~!」

 テーブルで大きく手を振るレモンの姿が見える。

 その名前に反応するように、大勢の視線がいっせいに飛んできた。

「おおっ~! これはゲントさんじゃないですかぁー!」
「ようこそ、コンロイ名物の大食堂へ」
「ここはおいしいメニューが盛りだくさんですよ、ゲントさま♪」
「ひくっ~。まさかぁ、ゲントさまとこんなところで遭えるとはラッキィだぜぇ~! ひくっ~」
 
 すでに酔っている者も何人かいる。
 大食堂のあちこちでは拍手が巻き起こっていた。

「すごい盛り上がりですねぇ~☆ さすがはマスターですぅ~~!!」

「うん・・・。すごいね・・・」

 それからゲントは、店の客に挨拶やハグをしてまわりながら、ようやくレモンのもとまで辿り着く。

「ごめんごめんっ! まさかこんな感じになってるとは思ってなくてさ」

「ちょっと驚きました・・・」

「でもさ。それにしてもすごいね。ちょー人気者じゃん?」

「気づいたらこんな感じになってまして・・・」

「えへへ。ウチはなんか嬉しいよ♪」

「ルルムも嬉しいですぅ~!!」

 姿は視えないながらも、ルルムはレモンの隣りで一緒に喜んでいた。



 そのあとしばらく。
 ゲントはレモンと楽しく食事をともにした。

 もちろん、ルルムにこっそり食事をあげたりしながら。

「ふぅ・・・。久しぶりにコンロイ名物のヒレカツを食べたよ。もうお腹いっぱいだね」

「本当に満足です。こんなおいしいとは思いませんでした」

「ルルムも幸せですぅ~♪」

 店の人のサービスで普段の3倍はボリュームが増していたらしい。
 食後のコーヒーも飲み終え、やがて一段落するとレモンはこんなことを口にする。

「えっとね? 今日やって来たのは、あることをゲントに伝えたかったからなんだよ」

「そうだったんですか?」

 どうやら食事が目的だったわけではないようだ。
 
 そこでレモンは少しだけまわりを気にする素振りを見せる。

 挨拶もひととおり済ませたためか、まわりの客の関心はすでにこちらに向いていなかった。
 それぞれが仲間や友人たちとふつうに食事を楽しんでいる。

 それを確認すると、レモンは小さく口を開いた。

「実はね・・・。ある方からゲントを連れて来るようにって頼まれてるんだよ」

「ある方?」

「来ればわかる! ものすっご~い御方から直々の指名だよ!」

 なんでもすでにこのあと予定が決まっているのだという。
 
「一緒に来てほしいんだけど・・・どうかな?」

「大丈夫ですよ。今日はこれといって予定はないので」

「そっか! ありがとゲント! それじゃ・・・そろそろ会計して行こっか」



 ***



 それから。
 ゲントはレモンとともに歩きながら、町のはずれへと向かっていた。

「なんか奢ってもらってすみませんでした」

「そんなの気にしないでよー。これまでゲントに助けてもらったお礼も含めれば、ぜーんぜん足らないくらいなんだからさ!」

「どうもありがとうございます」

「ルルムからもお礼を言わせてくださいっ~! レモンさん、ありがとうございました♪ ヒレカツすご~っくおいしかったですぅ~☆」
 
 その場でルルムとともにゲントがお辞儀をしていると。

 レモンが声を上げて前方を指をさす。

「あったよ。あれあれ」

「えっと・・・馬小屋が見えますけど?」

「そう! 馬車を借りて行く場所なんだよ」

 どうやらコンロイの外へ出ようとしているようだ。
 馬小屋の前にいる御者に声をかけると、レモンは行先を告げる。
 
 それを聞いてゲントは驚いた。

「え・・・ロザリア城って」

「ふふふ、すごいよゲント~。ある方ってのはね、王女さまのことだったんだ! とにかく向かいながら説明するから。先に乗っちゃって♪」

 レモンに背中を押されながら、なかば強引にゲントはワゴンに乗せられる。

「それでは出発いたします」

 御者のそんなかけ声とともに馬車はロザリア城へと向けて出発した。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 1~8巻好評発売中です!  ※2022年7月12日に本編は完結しました。  ◇ ◇ ◇  ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。  ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。  晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。  しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。  胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。  そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──  ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?  前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ
ファンタジー
 恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。  いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。  モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。  そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。  モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。  その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。  稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。 『箱を開けるモ』 「餌は待てと言ってるだろうに」  とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。 果たして、阿宮は見知らぬ世界でどう生きていくのか————。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

処理中です...