上 下
63 / 81
2章

第30話

しおりを挟む
 シュルルルル。

 その時。
 手にした【アサシンレイピア】が突然灰と化すように消失してしまう。

 武器が壊れたんだ。

(再現度99%だったのに、マジか)

 これはさすがに想定していなかった。

 俺はとっさに魔法袋に手を突っ込むと【だまし忍幕】を取り出してそれを前に投げ入れる。

 ドボーン!

 目の前に巨大な魔法の煙幕が発生し、それが相手の攻撃を弾き返した。

「エルハルト! そんなことをしても一時しのぎにしかならないのですよ!」

 もちろんそんなことは分かってる。
 【だまし忍幕】の効果が切れたらその時点で俺の死は確定だ。

(そろそろ潮時だな)

 一撃当てるのが難しい状況だったから相手のマナが枯渇するタイミングを待って反撃しようって考えていたんだが。

 相手が本気で殺しにかかっている以上、こっちも余裕ぶっている状況ではなさそうだ。

(チノがどう出るか分からなかったから温存していたがもうその必要もなさそうだ)

 上位魔法の上には最上位魔法も存在するんだが、そんなものを連続で放ったら膨大なマナに体をぶち壊されてしまう。
 前世でそれらの魔法を習得した経験がある俺にはそれが分かっていた。

 つまり相手の攻撃はこれで頭打ちの可能性が高い。
 ならば、こいつらをそろそろ使っても問題ないだろう。

 【だまし忍幕】が怒涛の攻撃を防いでいる間。
 俺は魔法袋の中から【シルファリス竜輪】と【煌星の時水晶】を取り出した。
 
 錬金鍛冶師としてこれまで多くの武器を作ってきた経験から分かる。
 この二つのアイテムを組み合わせれば、とんでもないものが完成するって。

(今がその時だ。俺の力をここで証明してみせる)

 バルハラの冒険者として相応しいってことを皆に示すんだ。

 【シルファリス竜輪】と【煌星の時水晶】をそれぞれの手で持つと、アイテムに宿ったマナが集まるように意識を集中させていく。

(マナが繋がって一つの回路へ流れるように強くイメージしろ)

 頭の中でそう唱えた瞬間。
 二つの素材は光に包まれた状態で宙に浮かび上がった。
 
 ここから具体的に形を構築していく。

 さらに意識を集中させると【シルファリス竜輪】と【煌星の時水晶】は光り輝く一つの武器へと姿を変えた。

 〝開示ステータスオープン〟と頭の中で唱えて、脳裏に表示された武器のステータスを確認する。

------------------------------
【大天具の聖なる竜剣】
〔レアリティ〕A+
〔再現度〕40%
〔攻撃力〕5500
〔必殺技/上限回数〕銀河流・覚醒龍神剣 / 25回
〔アビリティ〕竜力Lv.5、属性耐性Lv.4、不屈Lv.3、幸運Lv.3
------------------------------

 思った通りだ。
 《ヴァルキリーの技巧》のスキルレベルが上がったことで、再現度や必殺技、アビリティが格段に上昇している。

(レアリティは過去最強のA+か。こいつで決着をつけるぞ)

 ちょうどそのタイミングで【だまし忍幕】の効果が切れた。

 俺が手に持つ【大天具の聖なる竜剣】が視界に入ったのか。
 チノは嬉々としながら声を上げた。

「そんな武器を作る力があったのですか! ますますエルハルトを倒さないと気が済まないのですっ! チノも全力を出し切るのですよ!」

 黄金色の魔法陣を手元に浮かべ、高速で上位魔法を連発してくる。
 この速さで撃ち込まれたらさすがに回避はできない。

 だが。

「効かないな、チノ」

 【大天具の聖なる竜剣】を盾代わりにして俺は攻撃魔法の嵐の中を一歩一歩進んでいく。

 そう。
 〔属性耐性〕と〔不屈〕と〔幸運〕のアビリティが組み合わさったことにより、今の俺は魔法がまったく効かない状態となっていた。
 
 少なくとも上位魔法程度の攻撃なら余裕でノーダメージにすることができそうだ。

「!?」

 チノは捨て身で向かって来る俺の姿に気付くと大きく目を見開いた。
 まさか、特攻してくるとは思っていなかったんだろう。

「う、嘘です……でたらめです……! こんなの、あり得ません……!」

 ムキになってさらに勢いよく上位魔法を放ってくるチノだったが、今の俺にはそんな攻撃は通用しない。

「悪いがこれで決めさせてもらうぞ」

 ゆっくりとチノに近付きながら【大天具の聖なる竜剣】を大きく振り上げる。

 そして。
 相手の正面に到達すると、俺は狙いを定めて必殺技を発動させた。

「今こそ煌星の剣閃を解放し竜力を以て敵を討ち伏せろ――〈銀河流・覚醒龍神剣〉」



 ズバシュギギギギィィーーーーン!!



「くぅぅぅ!?」

 竜剣を斬り下ろすと魔法陣は撃ち砕かれ、チノはその場で大きく吹き飛ぶ。
 これにより雌雄は決したのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

真☆中二病ハーレムブローカー、俺は異世界を駆け巡る

東導 号
ファンタジー
ラノベ作家志望の俺、トオル・ユウキ17歳。ある日、夢の中に謎の金髪の美少年神スパイラルが登場し、俺を強引に神の使徒とした。それどころか俺の顔が不細工で能力が低いと一方的に断言されて、昔のヒーローのように不完全な人体改造までされてしまったのだ。神の使徒となった俺に与えられた使命とは転生先の異世界において神スパイラルの信仰心を上げる事……しかし改造が中途半端な俺は、身体こそ丈夫だが飲み水を出したり、火を起こす生活魔法しか使えない。そんな無理ゲーの最中、俺はゴブリンに襲われている少女に出会う……これが竜神、悪魔、人間、エルフ……様々な種族の嫁を貰い、人間の国、古代魔法帝国の深き迷宮、謎めいた魔界、そして美男美女ばかりなエルフの国と異世界をまたにかけ、駆け巡る冒険の始まりであった。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

異世界ハーレム漫遊記

けんもも
ファンタジー
ある日、突然異世界に紛れ込んだ主人公。 異世界の知識が何もないまま、最初に出会った、兎族の美少女と旅をし、成長しながら、異世界転移物のお約束、主人公のチート能力によって、これまたお約束の、ハーレム状態になりながら、転生した異世界の謎を解明していきます。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

ハズレ職業のテイマーは【強奪】スキルで無双する〜最弱の職業とバカにされたテイマーは魔物のスキルを自分のものにできる最強の職業でした〜

平山和人
ファンタジー
Sランクパーティー【黄金の獅子王】に所属するテイマーのカイトは役立たずを理由にパーティーから追放される。 途方に暮れるカイトであったが、伝説の神獣であるフェンリルと遭遇したことで、テイムした魔物の能力を自分のものに出来る力に目覚める。 さらにカイトは100年に一度しか産まれないゴッドテイマーであることが判明し、フェンリルを始めとする神獣を従える存在となる。 魔物のスキルを吸収しまくってカイトはやがて最強のテイマーとして世界中に名を轟かせていくことになる。 一方、カイトを追放した【黄金の獅子王】はカイトを失ったことで没落の道を歩み、パーティーを解散することになった。

処理中です...