62 / 81
2章
第29話
しおりを挟む
「ごめんなさいなのです、エルハルト。チノはこの滾るような感覚を思い出してしまいました。追試のことはもういいです」
「なに?」
「それよりもチノはエルハルトともっと遊びたいです。エルハルトを倒さないと気が済まなくなりましたのですよ♪」
嬉しそうに口にしながら、チノは俺にゆっくりと近付いてくる。
何か人格が切り替わってしまったようなそんな印象だ。
(なるほど。これがギルマスの本性か)
天才の孤独ってやつだ。
生まれながらにして他者よりも卓越した力を持ってしまった場合、自分と同等かそれ以上の相手が現れると己の力を試してみたくなるものだったりする。
光栄なことにチノはそれを俺に感じてくれたようだ。
すると。
「ダメだって、チノっ!」
これまで近くで戦いを見守っていたディーネが大声を張り上げる。
「エルハルト君の実力は確認できたんだよね? だったらこれ以上戦う必要なんてないでしょ? このままじゃエルハルト君が……」
「ディーネは下がっていてください。チノがこんなにも倒してしまいたいと思った相手は久しぶり……いえ、初めてかもしれません。絶対にエルハルトに勝たないと気が済まないのです。悪いですがディーネはそこで見守っていてくださいな」
チノは片手を高く掲げて誰もこちらへ近付くことができないように守護結界を強化する。
「どうされたのでしょうか。チノさん」
「マズいよ……。チノ、完全にスイッチが入っちゃった」
「スイッチですか?」
「昔からそうなんだよ。ちょっとでも強い人を見つけると本気で倒しちゃうんだよね。今回は追試ってことだったから大丈夫だって思ってたのに……」
ナズナとディーネのそんな会話が結界越しに聞えてくる。
どうやら俺の読みは間違っていなかったようだな。
俺は【韋駄天エッジ】を取り出すと向かってくるチノに刃先を構えた。
「今さら遅いのですよ、エルハルト。チノが魔法陣を解いているうちに一撃当てればよかったものを」
チノは再び手元に黄金色の魔法陣を完成させる。
「その甘さが命取りとなるのです」
次の刹那。
素早く両手を前にかざしながら立て続けに魔法を放ってきた。
「〈ビッグバンボルケーノ〉!〈ライトニングノヴァ〉!〈エターナルラファーガ〉!〈クリスタルファウンテン〉!〈デスクエイクペトラ〉!」
先程とは比べものにならないエネルギーとパワーに満ちた強力な攻撃魔法が一斉に向かってくる。
(今度は上位魔法か)
【韋駄天エッジ】を握り締めながら紙一重のところで相手の攻撃を回避していくが……。
「っ」
さすがにきついな。
これ以上連続で同じ魔法を放たれたら間違いなく詰む。
(なら俺がすべきことは限られている)
相手の攻撃を寸前のところでかわしつつ、俺は魔法袋の中に手を入れる。
取り出したのは【神速の音爆弾】っていうユリウス大森林で拾ったアイテムだった。
【神速の音爆弾】を【韋駄天エッジ】の前にかざすと、素材に宿ったマナを付与するようにすぐさまイメージを固める。
すると《金字塔の鍛造》によって強化された武器が即座に完成した。
------------------------------
【アサシンレイピア】
〔レアリティ〕C+
〔再現度〕99%
〔攻撃力〕4200
〔必殺技/上限回数〕焼けつく刃痕 / 15回
〔アビリティ〕素早さ上昇Lv.4、回避率上昇Lv.4
------------------------------
武器を手に取って素早く頭の中でステータスを確認する。
(アビリティのレベルが上がってるな。これでひとまず凌げればいいんだが)
俺は【アサシンレイピア】を構えると再び反撃のチャンスを窺った。
しかし。
「〈ビッグバンボルケーノ〉!〈ライトニングノヴァ〉!〈エターナルラファーガ〉!〈クリスタルファウンテン〉!〈デスクエイクペトラ〉!」
怒涛の勢いで波状攻撃される上位魔法の嵐を前にやはり付け入る隙を見つけることができない。
アビリティが上がったにもかかわらず、一つの魔法を回避するだけも手一杯。
それだけチノがやってることは常軌を逸しているんだ。
結界越しに観戦している野次馬の冒険者たちもざわざわと騒ぎ始める。
「あれが本気になったギルマスかよ、怖ぇ……」
「つか、こんなに魔法を撃ち込まれたら死ぬだろ普通!?」
「これが見たかったんだ。すげぇぜ、もっとやれ~!」
「私たちは神の御業を目撃してるのかもしれないわっ」
いろんな意見はあれど皆チノの本気に興奮しているようだな。
俺だってこんな相手と手を合わせるのは久しぶりだ。
(本当にすごいな、チノは。全然底が見えないぞ)
チノは恍惚とした表情を浮かべながら次々と上位魔法を放ち続ける。
追試のことは完全に忘れて俺を殺しにかかってきていた。
「なに?」
「それよりもチノはエルハルトともっと遊びたいです。エルハルトを倒さないと気が済まなくなりましたのですよ♪」
嬉しそうに口にしながら、チノは俺にゆっくりと近付いてくる。
何か人格が切り替わってしまったようなそんな印象だ。
(なるほど。これがギルマスの本性か)
天才の孤独ってやつだ。
生まれながらにして他者よりも卓越した力を持ってしまった場合、自分と同等かそれ以上の相手が現れると己の力を試してみたくなるものだったりする。
光栄なことにチノはそれを俺に感じてくれたようだ。
すると。
「ダメだって、チノっ!」
これまで近くで戦いを見守っていたディーネが大声を張り上げる。
「エルハルト君の実力は確認できたんだよね? だったらこれ以上戦う必要なんてないでしょ? このままじゃエルハルト君が……」
「ディーネは下がっていてください。チノがこんなにも倒してしまいたいと思った相手は久しぶり……いえ、初めてかもしれません。絶対にエルハルトに勝たないと気が済まないのです。悪いですがディーネはそこで見守っていてくださいな」
チノは片手を高く掲げて誰もこちらへ近付くことができないように守護結界を強化する。
「どうされたのでしょうか。チノさん」
「マズいよ……。チノ、完全にスイッチが入っちゃった」
「スイッチですか?」
「昔からそうなんだよ。ちょっとでも強い人を見つけると本気で倒しちゃうんだよね。今回は追試ってことだったから大丈夫だって思ってたのに……」
ナズナとディーネのそんな会話が結界越しに聞えてくる。
どうやら俺の読みは間違っていなかったようだな。
俺は【韋駄天エッジ】を取り出すと向かってくるチノに刃先を構えた。
「今さら遅いのですよ、エルハルト。チノが魔法陣を解いているうちに一撃当てればよかったものを」
チノは再び手元に黄金色の魔法陣を完成させる。
「その甘さが命取りとなるのです」
次の刹那。
素早く両手を前にかざしながら立て続けに魔法を放ってきた。
「〈ビッグバンボルケーノ〉!〈ライトニングノヴァ〉!〈エターナルラファーガ〉!〈クリスタルファウンテン〉!〈デスクエイクペトラ〉!」
先程とは比べものにならないエネルギーとパワーに満ちた強力な攻撃魔法が一斉に向かってくる。
(今度は上位魔法か)
【韋駄天エッジ】を握り締めながら紙一重のところで相手の攻撃を回避していくが……。
「っ」
さすがにきついな。
これ以上連続で同じ魔法を放たれたら間違いなく詰む。
(なら俺がすべきことは限られている)
相手の攻撃を寸前のところでかわしつつ、俺は魔法袋の中に手を入れる。
取り出したのは【神速の音爆弾】っていうユリウス大森林で拾ったアイテムだった。
【神速の音爆弾】を【韋駄天エッジ】の前にかざすと、素材に宿ったマナを付与するようにすぐさまイメージを固める。
すると《金字塔の鍛造》によって強化された武器が即座に完成した。
------------------------------
【アサシンレイピア】
〔レアリティ〕C+
〔再現度〕99%
〔攻撃力〕4200
〔必殺技/上限回数〕焼けつく刃痕 / 15回
〔アビリティ〕素早さ上昇Lv.4、回避率上昇Lv.4
------------------------------
武器を手に取って素早く頭の中でステータスを確認する。
(アビリティのレベルが上がってるな。これでひとまず凌げればいいんだが)
俺は【アサシンレイピア】を構えると再び反撃のチャンスを窺った。
しかし。
「〈ビッグバンボルケーノ〉!〈ライトニングノヴァ〉!〈エターナルラファーガ〉!〈クリスタルファウンテン〉!〈デスクエイクペトラ〉!」
怒涛の勢いで波状攻撃される上位魔法の嵐を前にやはり付け入る隙を見つけることができない。
アビリティが上がったにもかかわらず、一つの魔法を回避するだけも手一杯。
それだけチノがやってることは常軌を逸しているんだ。
結界越しに観戦している野次馬の冒険者たちもざわざわと騒ぎ始める。
「あれが本気になったギルマスかよ、怖ぇ……」
「つか、こんなに魔法を撃ち込まれたら死ぬだろ普通!?」
「これが見たかったんだ。すげぇぜ、もっとやれ~!」
「私たちは神の御業を目撃してるのかもしれないわっ」
いろんな意見はあれど皆チノの本気に興奮しているようだな。
俺だってこんな相手と手を合わせるのは久しぶりだ。
(本当にすごいな、チノは。全然底が見えないぞ)
チノは恍惚とした表情を浮かべながら次々と上位魔法を放ち続ける。
追試のことは完全に忘れて俺を殺しにかかってきていた。
1
お気に入りに追加
1,538
あなたにおすすめの小説
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
転生魔竜~異世界ライフを謳歌してたら世界最強最悪の覇者となってた?~
アズドラ
ファンタジー
主人公タカトはテンプレ通り事故で死亡、運よく異世界転生できることになり神様にドラゴンになりたいとお願いした。 夢にまで見た異世界生活をドラゴンパワーと現代地球の知識で全力満喫! 仲間を増やして夢を叶える王道、テンプレ、モリモリファンタジー。
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜
月風レイ
ファンタジー
グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。
それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。
と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。
洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。
カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。
ハズレ職業のテイマーは【強奪】スキルで無双する〜最弱の職業とバカにされたテイマーは魔物のスキルを自分のものにできる最強の職業でした〜
平山和人
ファンタジー
Sランクパーティー【黄金の獅子王】に所属するテイマーのカイトは役立たずを理由にパーティーから追放される。
途方に暮れるカイトであったが、伝説の神獣であるフェンリルと遭遇したことで、テイムした魔物の能力を自分のものに出来る力に目覚める。
さらにカイトは100年に一度しか産まれないゴッドテイマーであることが判明し、フェンリルを始めとする神獣を従える存在となる。
魔物のスキルを吸収しまくってカイトはやがて最強のテイマーとして世界中に名を轟かせていくことになる。
一方、カイトを追放した【黄金の獅子王】はカイトを失ったことで没落の道を歩み、パーティーを解散することになった。
転生貴族の異世界無双生活
guju
ファンタジー
神の手違いで死んでしまったと、突如知らされる主人公。
彼は、神から貰った力で生きていくものの、そうそう幸せは続かない。
その世界でできる色々な出来事が、主人公をどう変えて行くのか!
ハーレム弱めです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる