レベル1の最強転生者 ~勇者パーティーを追放された錬金鍛冶師は、スキルで武器が作り放題なので、盾使いの竜姫と最強の無双神器を作ることにした~

サイダーボウイ

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2章

第28話

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 静寂が辺りを支配する。
 すべての音がこの世界から消えてしまったような感覚だった。
 
 やがて。

 それも終わりを迎える。

 チノの両耳の大きな羽飾りが夜風にふわりと揺れたその刹那。
 俺は【韋駄天エッジ】の刃先を突き立てて猛突撃を仕掛けた。

 しかし。

(!)

 その一瞬のうちにチノは手元に黄金色の巨大な魔法陣を完成させる。
 
(五芒星魔法陣フルエレメント?)

 この魔法陣を完成させたってことは、火属性・水属性・雷属性・風属性・地属性すべての魔法を詠唱する準備が整ったってことだ。

 前世では俺もこの魔法陣を使っていた。
 習得するのにある程度時間がかかった技で、普通の魔術師では完成させることすらできない代物だ。

(それをこんな一瞬のうちに完成させたのか)

 寸分の狂いもない動作で両手を前にかざすと、チノは五属性の中位魔法を一度に撃ち込んでくる。

「〈デモンズストーム〉〈フリーズハウリング〉〈プラズマストライク〉〈 デルタサイクロン〉〈ロックプロージョン〉」

 考えるよりもまず先に体が動いた。
 轟音とともに荒れ狂うようにして迫ってくる攻撃魔法の間隙を俺はすり抜けていく。

「やりますね。エルハルト」

 チノはすかさず俺に照準を合わせると、もう一度同じ攻撃を連続で放ってきた。
 無詠唱でしかも一度に五属性の魔法を繰り出すなんて、俺でもやったことがない。

(とんでもないな、チノは)

 だが感心しているような暇はない。

 縦横無尽に放たれる攻撃魔法の追撃を正確無比に回避していく。
 俺の場合、一度でもダメージを受けたらそれで終わりなわけだからな。

 ナズナの盾がない以上、慎重にかわしていく必要がある。

 もちろん、こんなこと普通はレベル1の生産職ができることじゃない。
 だから、野次馬の間ではどよめきにも似た声が上がった。

「嘘だろぉ……何なんだよ、アイツ……!?」
「あれだけの攻撃魔法を一度に浴びてなんで無傷なんだっ?」
「ギルマスもヤバいけどあの人も普通じゃないわ」
「生産職のくせにどうしてあんなことができるんだぁ!?」

 俺だってバカじゃない。
 当然、チノに魔法で押されることは想定していた。

 防戦一方になった時のためのこの武器だったりする。

「〈デモンズストーム〉〈フリーズハウリング〉〈プラズマストライク〉〈 デルタサイクロン〉〈ロックプロージョン〉」

 俺はチノが次々に繰り出す攻撃魔法の軌道を予測しながら避けていく。

 タネ明かしをすると、【韋駄天エッジ】には〔素早さ上昇〕と〔回避率上昇〕のアビリティが付いているのだ。

 しかも二つともアビリティはレベル3。

 一撃ダメージを当てるだけで追試クリアになるなら攻撃力は特に気にしなくて問題ない。
 【韋駄天エッジ】はそんな風に考えて作ったものだった。

 先制攻撃を仕掛けるのは失敗したが、まだこれですべてが終わったわけじゃない。

(反撃を狙っていくぞ。チャンスは絶対に来るはず)

 放たれる攻撃魔法をかわしながら、相手との距離を徐々に詰めていく作戦に変更だ。

「エルハルト。ただ攻撃を避けているだけじゃ追試は終われないのですよ」

「分かってる」

 全身の神経を研ぎ澄ませ、無慈悲な猛攻を俺は回避し続けた。

 だが。
 予想していたよりもチノは上手だった。

 切れ間なく繰り出される攻撃の隙をなかなか見つけることができない。

(一体どれだけマナが溢れているんだ)

 どんな魔術師でもこんな全力で魔法を撃ち込んでいればすぐにMPは枯渇するものだが、チノにはそんな素振りがまるでなかった。

 やっぱり相手は並みの魔術師じゃない。
 どこまでの能力を秘めているのか、俄然興味が湧いたってもんだ。

 そんな風に感心していると。

「すごいのです。エルハルト」

 突然、チノは攻撃の手を緩めてしまう。
 黄金色の魔法陣を解くと、両手を合わせながら嬉しそうに目を輝かせた。

「チノがここまで熱くなれたのは久しぶりなのですよ。本当に素晴らしいのです」

「そいつは嬉しいな」

「ベルセルクオーディンを倒したっていう話もこれで納得ができました。チノの魔法をここまで避けるなんてエルハルトは只者じゃないのですよ。Sランク冒険者に相応しいです。チノはエルハルトのような志願者を待っていました。是非うちのギルドに所属してほしいのです」

「そうか。ならこれで追試は終わりか?」

 俺は構えていた短剣を下ろしながらそう訊ねる。

「ですね。さすがに合格と言わざるを得ないと思います。けれど……」

 その瞬間。
 ふとチノの目つきが変わる。

 そこにはこれまで感じられなかった殺意が含まれていることに俺は気付いた。
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