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2章
第20話
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「ようやく着いたな」
「ここまでの長旅お疲れ様でした、マスター」
俺たちがバルハラへ到着する頃には辺りはすっかり暗くなってしまっていた。
日没はとうに過ぎてしまっている。
(やっぱり間に合わなかったか)
まあこれは覚悟していたことだ。
あそこでディーネを置き去りにして帰るなんて選択肢はなかったわけだからな。
「エルハルト君、本当にありがとっ! お姉さん、助かっちゃった♪」
「元気になってくれたみたいで俺も嬉しいぞ」
「うん、もうばっちり!」
血まみれで倒れていたのが嘘のようにディーネは完全に調子を取り戻していた。
獣族との混血だから、もとから生命力がすごいんだろう。
治癒草を飲んだからって普通ここまですぐに全快したりはしない。
「それじゃギルドに報告しに行こっか?」
ディーネがそう口にしたところでナズナが後ろから声をかけてくる。
「マスター。少しお話させていただいてもよろしいでしょうか?」
「ん? ああ」
「どしたの2人とも?」
「悪いんだが先に1人でギルドへ行っておいてくれないか? ちょっとナズナと話したいことがあるんだ」
「そうなんだ? じゃあ、ウチは先にギルドへ行ってるよ~」
「ディーネ。ベルセルクオーディン討伐の件は……大丈夫だよな?」
「うん。エルハルト君の好意は無駄にしないから。ホントありがとね」
どこか嬉しそうに獣耳と尻尾をぴょこぴょこと動かすと、ディーネは手を振ってこの場を後にした。
その姿を見届けるとナズナが隣りに並んでくる。
「マスター。これで本当によろしかったのでしょうか?」
「どういう意味だ?」
「ラギアクルガを倒してからすぐにユリウス大森林を出ていれば、マスターは余裕を持って冒険者試験をクリアすることができていたはずです。言い換えますと、マスターはディーネさんのために今回試験を達成できなかったということになります」
「けど、あの時。助けに向かわないっていう選択肢は俺の中にはなかったぞ」
「それも承知しております。マスターはとても心の優しい御方ですから。ユリウス大森林へ行くことが決まったその時から、冒険者試験は突破できない未来が決まっていたのかもしれません」
「なら何が気になるんだ?」
そこでナズナは胸の谷間に手を当てながら薄く下唇を噛む。
何か言うのを躊躇っているようだ。
だが、すぐに続けてこう口にした。
「マスターは……今回試験を達成できなかった理由を話さないつもりなのではないでしょうか?」
「……」
さすがナズナだ、鋭い。
俺の考えていることはすべてお見通しのようだ。
「私は間に合わなかった理由も含めてきちんとお話すべきだと思います」
「いや、それは言い訳だ。日没までにバルハラへ戻って来られなかったのは事実なわけだしな」
「ですが……」
ナズナはまだどこか納得できないって顔をしている。
俺の考えが理解できないのかもしれない。
「爆音と悲鳴が聞えた時。俺が確認しに向かうって言ってなかったら、ナズナが真っ先に駆けつけていたんじゃないか?」
「それはなかったと思います。私はマスターの従者ですから。マスターが冒険者試験を突破するために最善の判断を下していたはずです。結果的にそれがディーネさんを見捨てることになったとしてもです」
「そうか」
俺にはナズナの考えを否定することはできない。
従者としてそれは最良の選択なんだろう。
「分かった。ナズナがすべて話した方がいいって思うなら全部打ち明けることにする」
それが従者として最善の判断なのだとしたら、とやかく言うつもりはなかった。
けれど、俺には分かっていた。
ナズナが主の考えに反してまで自身の主張を押し通したりはしないってことに。
「……いえ。申し訳ありません、マスター。少し生意気なことを口にしてしまいました」
「ナズナが謝ることなんてないぞ。逆の立場なら俺の選択は理解できないって分かるからな」
「それでも……。マスターはディーネさんを庇われるのですね?」
「俺の場合、また別のギルドで冒険者試験を受ければいいだけの話だからな」
魔王が復活するとされる日まではまだ半年ほど時間が残されている。
少し寄り道をしたことになるが、遅れた分は後できちんと取り戻せばいい。
「了解しました。マスターの選択に私も従いたいと思います」
結局、ナズナは納得してくれたようだ。
(悪いな。主がわがままで)
心の中でそう謝罪しつつ、俺はナズナの肩をポンと叩く。
「よし。ディーネが先に行って待っている。冒険者ギルドへ向かうぞ」
「はい。マスター」
「ここまでの長旅お疲れ様でした、マスター」
俺たちがバルハラへ到着する頃には辺りはすっかり暗くなってしまっていた。
日没はとうに過ぎてしまっている。
(やっぱり間に合わなかったか)
まあこれは覚悟していたことだ。
あそこでディーネを置き去りにして帰るなんて選択肢はなかったわけだからな。
「エルハルト君、本当にありがとっ! お姉さん、助かっちゃった♪」
「元気になってくれたみたいで俺も嬉しいぞ」
「うん、もうばっちり!」
血まみれで倒れていたのが嘘のようにディーネは完全に調子を取り戻していた。
獣族との混血だから、もとから生命力がすごいんだろう。
治癒草を飲んだからって普通ここまですぐに全快したりはしない。
「それじゃギルドに報告しに行こっか?」
ディーネがそう口にしたところでナズナが後ろから声をかけてくる。
「マスター。少しお話させていただいてもよろしいでしょうか?」
「ん? ああ」
「どしたの2人とも?」
「悪いんだが先に1人でギルドへ行っておいてくれないか? ちょっとナズナと話したいことがあるんだ」
「そうなんだ? じゃあ、ウチは先にギルドへ行ってるよ~」
「ディーネ。ベルセルクオーディン討伐の件は……大丈夫だよな?」
「うん。エルハルト君の好意は無駄にしないから。ホントありがとね」
どこか嬉しそうに獣耳と尻尾をぴょこぴょこと動かすと、ディーネは手を振ってこの場を後にした。
その姿を見届けるとナズナが隣りに並んでくる。
「マスター。これで本当によろしかったのでしょうか?」
「どういう意味だ?」
「ラギアクルガを倒してからすぐにユリウス大森林を出ていれば、マスターは余裕を持って冒険者試験をクリアすることができていたはずです。言い換えますと、マスターはディーネさんのために今回試験を達成できなかったということになります」
「けど、あの時。助けに向かわないっていう選択肢は俺の中にはなかったぞ」
「それも承知しております。マスターはとても心の優しい御方ですから。ユリウス大森林へ行くことが決まったその時から、冒険者試験は突破できない未来が決まっていたのかもしれません」
「なら何が気になるんだ?」
そこでナズナは胸の谷間に手を当てながら薄く下唇を噛む。
何か言うのを躊躇っているようだ。
だが、すぐに続けてこう口にした。
「マスターは……今回試験を達成できなかった理由を話さないつもりなのではないでしょうか?」
「……」
さすがナズナだ、鋭い。
俺の考えていることはすべてお見通しのようだ。
「私は間に合わなかった理由も含めてきちんとお話すべきだと思います」
「いや、それは言い訳だ。日没までにバルハラへ戻って来られなかったのは事実なわけだしな」
「ですが……」
ナズナはまだどこか納得できないって顔をしている。
俺の考えが理解できないのかもしれない。
「爆音と悲鳴が聞えた時。俺が確認しに向かうって言ってなかったら、ナズナが真っ先に駆けつけていたんじゃないか?」
「それはなかったと思います。私はマスターの従者ですから。マスターが冒険者試験を突破するために最善の判断を下していたはずです。結果的にそれがディーネさんを見捨てることになったとしてもです」
「そうか」
俺にはナズナの考えを否定することはできない。
従者としてそれは最良の選択なんだろう。
「分かった。ナズナがすべて話した方がいいって思うなら全部打ち明けることにする」
それが従者として最善の判断なのだとしたら、とやかく言うつもりはなかった。
けれど、俺には分かっていた。
ナズナが主の考えに反してまで自身の主張を押し通したりはしないってことに。
「……いえ。申し訳ありません、マスター。少し生意気なことを口にしてしまいました」
「ナズナが謝ることなんてないぞ。逆の立場なら俺の選択は理解できないって分かるからな」
「それでも……。マスターはディーネさんを庇われるのですね?」
「俺の場合、また別のギルドで冒険者試験を受ければいいだけの話だからな」
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少し寄り道をしたことになるが、遅れた分は後できちんと取り戻せばいい。
「了解しました。マスターの選択に私も従いたいと思います」
結局、ナズナは納得してくれたようだ。
(悪いな。主がわがままで)
心の中でそう謝罪しつつ、俺はナズナの肩をポンと叩く。
「よし。ディーネが先に行って待っている。冒険者ギルドへ向かうぞ」
「はい。マスター」
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