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2章
第12話
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(……っ?)
なぜか俺の体は無傷だった。
目の前には《轟竜の護盾》を構えたナズナの後ろ姿がある。
俺はすぐに状況を理解した。
(ナズナが防いでくれたのか)
長盾を前に構えながらナズナが振り返りつつ訊ねてきた。
「お怪我はありませんでしたか、マスター?」
「すまん。助かったぞ」
「いえ、マスターがご無事で安心しました」
そんな風に話している間にも相手は槍による攻撃を仕掛けてきていたが、ナズナの絶対防壁を破るには至らなかったらしい。
「シュロロロロ……」
再度態勢を立て直そうとしたんだろう。
ベルセルクオーディンは騎馬を操りながら一度この場を離れていく。
その間を利用して俺はナズナに確認した。
「ディーネはどうなった?」
「はい。近くの木に体を預けて安静にしてもらっています。応急処置は終えましたが、予断を許さない状況です。マスターが作られる薬が必要かもしれません」
「そうか。さっきは悪かったな。問題ないなんて言っておきながら結局ナズナの助けを借りてしまった」
「そんなことでお気になさらないでください。マスターをお護りするのが私の使命なのですから。私は当然の務めを果たしたまでです。それにマスターの身に何かあればディーネさんを救うこともできません」
「そうだな。ディーネを助けるためにも今は目の前の敵を倒す方が先か」
俺は改めてベルセルクオーディンに目を向ける。
(こうなったらもう自重しない)
正直な話を言うと、これまでは本気を出していなかった。
それも昨日今日に始まった話じゃない。
(この器に憑依転生した10年前のあの日から俺は今日までずっと本気を出してこなかったんだ)
もちろんそれには理由がある。
実力を隠す必要があったからだ。
〝現地の勇者よりも目立ってはならない〟っていうのが転生時の規律だったからな。
これはこの10年間で体に染み付いてしまったクセのようなものだった。
だが今のままだとおそらくベルセルクオーディンは倒せない。
ナズナが来なかったら俺は間違いなく敵の攻撃を受けていた。
だからもう力をセーブして戦うのはやめにする。
(ここからは全力でいかせてもらうぞ)
【羅刹鬼鉄丸】の斧頭を低くしながら構えると俺はナズナに声をかける。
「ナズナ。また《白亜の加護》の力を借りることはできるか? どうやらまた物理攻撃が効かない相手みたいなんだ」
「承知しました。どの属性を付与しましょうか?」
雷による攻撃を仕掛けてきたことから考えるに地属性が有効の可能性が高い。
その旨を伝えると、ナズナはすぐに灰色の魔法陣を発生させて詠唱文を読み上げた。
「地竜の護りを主の武器に統べ与えよ――地属性付与〟」
すると、【羅刹鬼鉄丸】はいぶし銀の輝きに包まれる。
「悪いんだが俺から少し離れていてくれ。加減ができないから近くにいると危ないかもしれない」
「はい。ではマスターの身に危険が迫りましたら助けに参上したいと思います」
「その時はよろしく頼むぞ」
ナズナをその場に残すと俺はベルセルクオーディンのもとへ向けて駆け出した。
◇◇◇
相手は距離を取ってこちらの様子を窺っていたが、俺が全速力で向かって来ることに気付くと再び槍を構えて戦闘体勢に入る。
(迎撃しようとしても無駄だ)
そのまま高速で草地を駆け抜けると、敵に武器が届く間合いまであっという間に到達した。
素早く懐に入り込み、地竜の加護を受けた【羅刹鬼鉄丸】を振り上げて挨拶代わりに一撃お見舞いする。
「シュロロロロ!?」
横腹を殴られたベルセルクオーディンはそれで一度体勢を崩した。
当然こんな攻撃で倒せるとは思っていない。
「まだまだいくぞ」
すぐさま反対側に回り込み、逆方向からも地属性を付与した【羅刹鬼鉄丸】の一撃を浴びせる。
敵は騎馬に乗っているから懐に入り込まれると反撃が難しくなる。
それを俺は利用した。
ベルセルクオーディンの懐を周回しつつ、そのたびに大斧をぶん回して攻撃を撃ち込んでいく。
これだけの至近距離なら外す心配もない。
問題は【羅刹鬼鉄丸】がいつまで持つかってことだけだ。
「シュロロロロ!」
さすがに好き勝手やられて痺れを切らしたのか。
ベルセルクオーディンは槍を高く掲げると再び上空から巨大な雷を刃先に降ろしてくる。
スパークする鋼の槍を構えてそれを俺に向けてきた。
「同じ手が通用すると思うな」
相手が槍を突き下ろしてきた瞬間、俺は素早く騎馬の下に潜り込む。
バッゴゴゴーーーン!!
直後。
ベルセルクオーディンの周りの草地は大きく抉れて土煙が上がった。
(今だ)
その一瞬の隙を突いて騎馬の下から飛び出すと、俺は反射的に必殺技を撃ち込んだ。
「〈シャドウギロチン〉」
体を反らしながら地竜の力を得た大斧を思いっきり振り抜くと、鎧姿の亡霊に爆裂した閃光がぶち当たる。
完全に仕留めた。
これまでの経験から言えばそうだ。
しかし。
「シュロロロローー!!」
槍を大きく払って土煙を斬るとベルセルクオーディンは騎馬を自在に操りながら俺に反撃を仕掛けてくる。
一度後方に回避して相手との間合いを取って俺はある事実を悟った。
(属性を付与しても攻撃が効いてないのか)
なぜか俺の体は無傷だった。
目の前には《轟竜の護盾》を構えたナズナの後ろ姿がある。
俺はすぐに状況を理解した。
(ナズナが防いでくれたのか)
長盾を前に構えながらナズナが振り返りつつ訊ねてきた。
「お怪我はありませんでしたか、マスター?」
「すまん。助かったぞ」
「いえ、マスターがご無事で安心しました」
そんな風に話している間にも相手は槍による攻撃を仕掛けてきていたが、ナズナの絶対防壁を破るには至らなかったらしい。
「シュロロロロ……」
再度態勢を立て直そうとしたんだろう。
ベルセルクオーディンは騎馬を操りながら一度この場を離れていく。
その間を利用して俺はナズナに確認した。
「ディーネはどうなった?」
「はい。近くの木に体を預けて安静にしてもらっています。応急処置は終えましたが、予断を許さない状況です。マスターが作られる薬が必要かもしれません」
「そうか。さっきは悪かったな。問題ないなんて言っておきながら結局ナズナの助けを借りてしまった」
「そんなことでお気になさらないでください。マスターをお護りするのが私の使命なのですから。私は当然の務めを果たしたまでです。それにマスターの身に何かあればディーネさんを救うこともできません」
「そうだな。ディーネを助けるためにも今は目の前の敵を倒す方が先か」
俺は改めてベルセルクオーディンに目を向ける。
(こうなったらもう自重しない)
正直な話を言うと、これまでは本気を出していなかった。
それも昨日今日に始まった話じゃない。
(この器に憑依転生した10年前のあの日から俺は今日までずっと本気を出してこなかったんだ)
もちろんそれには理由がある。
実力を隠す必要があったからだ。
〝現地の勇者よりも目立ってはならない〟っていうのが転生時の規律だったからな。
これはこの10年間で体に染み付いてしまったクセのようなものだった。
だが今のままだとおそらくベルセルクオーディンは倒せない。
ナズナが来なかったら俺は間違いなく敵の攻撃を受けていた。
だからもう力をセーブして戦うのはやめにする。
(ここからは全力でいかせてもらうぞ)
【羅刹鬼鉄丸】の斧頭を低くしながら構えると俺はナズナに声をかける。
「ナズナ。また《白亜の加護》の力を借りることはできるか? どうやらまた物理攻撃が効かない相手みたいなんだ」
「承知しました。どの属性を付与しましょうか?」
雷による攻撃を仕掛けてきたことから考えるに地属性が有効の可能性が高い。
その旨を伝えると、ナズナはすぐに灰色の魔法陣を発生させて詠唱文を読み上げた。
「地竜の護りを主の武器に統べ与えよ――地属性付与〟」
すると、【羅刹鬼鉄丸】はいぶし銀の輝きに包まれる。
「悪いんだが俺から少し離れていてくれ。加減ができないから近くにいると危ないかもしれない」
「はい。ではマスターの身に危険が迫りましたら助けに参上したいと思います」
「その時はよろしく頼むぞ」
ナズナをその場に残すと俺はベルセルクオーディンのもとへ向けて駆け出した。
◇◇◇
相手は距離を取ってこちらの様子を窺っていたが、俺が全速力で向かって来ることに気付くと再び槍を構えて戦闘体勢に入る。
(迎撃しようとしても無駄だ)
そのまま高速で草地を駆け抜けると、敵に武器が届く間合いまであっという間に到達した。
素早く懐に入り込み、地竜の加護を受けた【羅刹鬼鉄丸】を振り上げて挨拶代わりに一撃お見舞いする。
「シュロロロロ!?」
横腹を殴られたベルセルクオーディンはそれで一度体勢を崩した。
当然こんな攻撃で倒せるとは思っていない。
「まだまだいくぞ」
すぐさま反対側に回り込み、逆方向からも地属性を付与した【羅刹鬼鉄丸】の一撃を浴びせる。
敵は騎馬に乗っているから懐に入り込まれると反撃が難しくなる。
それを俺は利用した。
ベルセルクオーディンの懐を周回しつつ、そのたびに大斧をぶん回して攻撃を撃ち込んでいく。
これだけの至近距離なら外す心配もない。
問題は【羅刹鬼鉄丸】がいつまで持つかってことだけだ。
「シュロロロロ!」
さすがに好き勝手やられて痺れを切らしたのか。
ベルセルクオーディンは槍を高く掲げると再び上空から巨大な雷を刃先に降ろしてくる。
スパークする鋼の槍を構えてそれを俺に向けてきた。
「同じ手が通用すると思うな」
相手が槍を突き下ろしてきた瞬間、俺は素早く騎馬の下に潜り込む。
バッゴゴゴーーーン!!
直後。
ベルセルクオーディンの周りの草地は大きく抉れて土煙が上がった。
(今だ)
その一瞬の隙を突いて騎馬の下から飛び出すと、俺は反射的に必殺技を撃ち込んだ。
「〈シャドウギロチン〉」
体を反らしながら地竜の力を得た大斧を思いっきり振り抜くと、鎧姿の亡霊に爆裂した閃光がぶち当たる。
完全に仕留めた。
これまでの経験から言えばそうだ。
しかし。
「シュロロロローー!!」
槍を大きく払って土煙を斬るとベルセルクオーディンは騎馬を自在に操りながら俺に反撃を仕掛けてくる。
一度後方に回避して相手との間合いを取って俺はある事実を悟った。
(属性を付与しても攻撃が効いてないのか)
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