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まだ三十壱 よっ、久しぶり!
しおりを挟む「よっ、久しぶり!」
「あっ!
お前、ナニやってんだよ!」
数ヶ月ぶりにソイツに会った?
俺にココのバイトを紹介してくれた恩人で、即日にココを辞めていきやがったソイツ!
そう、この元親友は大学も休校して、ナニやら実家に戻っていたらしいが…
忘れてしまうかもしれないが、俺は大学生だ、
今は学内の中庭のベンチで手作り弁当を食べながら、ネット小説を読んでいる。
そんな所にアイツが現れたのだ!
「今まで連絡しないですまんな、実はオヤジが倒れたんだ。」
「…す、すまん、何も知らなかったから…。」
って、言われても本当にナニも知らなかったんだよ。
店長すら、辞める理由は知らないくらいだから。
「いや~、お前なら上手くやれると思ってたよ。」
「ソレはそうと、今日はどうしたんだ?
休校はお終いにしたのか?」
「正式に辞める事にしたよ。
オヤジの後を継ぐ事になった。」
「…そっか、亡くなったお父さんも喜んでくれるさ、きっと。」
「オラ、勝手に殺すな?
オヤジは生きてるさ、倒れただけだよ。」
「な、なんだ、紛らわしいな!」
「でも、腰を痛めてな。
稼業は続けられないって、俺と姉貴で経営を引き継いで行く事にしたんだ。」
人それぞれ事情がある。
「そっか、頑張れよ。
忙しいだろうけど、時間が出来たらおでんでもどうだ?
行きつけの店が有るんだ!
そうそう、アキバさん、バイト辞めるらしいんだわ、結婚するらしい?」
「俺も結婚するゼィ!
嫁さんも稼業を手伝ってくれる事になっててさ!」
「…漏れろ!そして死ねば、いいのに。」
「ははは!嫁さんを残して死ねないさ!」
その日、バイト終わりに落ち合っておでんを肴に呑む事になった。
アキバさんも誘った。
店長も後から来るとか?
「そっか、稼業を継ぐのか。
何かシンパシーを感じるよ。」
アキバさん、アルコールはほどほどにしてもらった。
「なぁ稼業ってなんなんだ?」
ちょっと関心が有ったので聞いてみた?
「ん、あぁ。 ラブホだ。」
「…らぶほ?」
「アレ、旅館とは聞いていたけど、いつの間に?」
アキバさんも初耳だったらしい?
「いや、バイトを始めた頃にはそんな方向だったそうで、その前がビジネスホテルで…俺が産まれる前は小さな温泉旅館だったらしいよ。」
「嫁さん、ラブホって、嫌がりませんでした?」
「ノリノリなんだ、幼馴染でね、番頭の娘さんでさ、俺より姉さんの妹っぷりでさ。」
……楽しそうだな。
「じゃあ今は忙しい訳だ、またしばらくは会えないか?
大変だろうが元気でやれよ。」
俺はちょっと嫌味を交えて言ってやった。
「ん、なんでだ?
コレからは、ちょくちょくお店に行くぜ?」
何でだよ!
「あ、悪い悪い、遅くなって!」
店長が、頭を描きながら現れると、
「店長、その説は申し訳ありませんでした!」
席から立ち上がり、店長に頭を下げるアイツ。
奴なりに、気に病んでいたんだな。
「いや、コレからは良いお付き合いが出来るんだからウインウインだよ!」
「店長、ソレを言うならWin-Winですよ。」
アキバさん、ソコをつっ込みますか?
「実はね、彼のホテルで「AV撮影」のロケ地として推薦しておいたんだよ、ソレにウチにパーティーグッズを卸している業者さん、部屋で見れるDVDやゲーム機とソフトもウチから仕入れるし、クレーンゲームの景品も、
ソレと、そっちからはアダルトコーナーで販売する「ドリンク」なんかはホテルに置いてあるドリンクと同じモノを…… 。」
店長、落ち着いて!
おでん食べますか?
「お互い、気心の知れた所から仕入れをしたいからさ、安く済ませられる所はお互い協力して、あと撮影の件も各事務所に推薦してくれて、ココには足を向けて眠れません!」
ハハハ、何だよソレ?
「お前もそのウチ、彼女が出来たら来てくれよ。割引クーポンとかいるか?」
「そんな温泉地に行ける程、セレブじゃないし、ラブホなんて俺には敷居が高いって!」
「ラブホ舐めるなよ!
別にセクロスするだけが、ラブホじゃないぞ!
緊急避難場所としても利用出来るし、都内で温泉が楽しめるので、普通に温泉利用客も来てくれてるんだぜ!」
ん?
「と、都内?」
「ココから車で3~40分かな?
あ、嫁さんさ、ココによくCDとか売り買いしてるぜ。
お前の事も知ってるみたいだぜ、猫の人だって?」
東京でも、すんごい深い場所なら温泉が出る可能性が有るとかで、先先代がえらい金かけて見つけたらしい。
温泉有っても、旅館って続けるの難しいらしいが、現在はラブホって事で、盛り返してるみたいだ。
「普通に温泉浸かるのは有りか?」
「小さいけど、露天風呂がある部屋が有るんだ。
ベッドとか使わないなら、特別に格安で入って良いぞ?」
「考えておくわ。」
どうしよう、そのウチ行こうかな、温泉だけ浸かりに?
一人でだよ!
いや、誰かと行く事があるとして、誰と行くんだ?
俺は?
応援ありがとうございます!
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