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その十二 「〇〇」って、知ってるかい?

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 「ビニ本」って、知ってるかい?

 昔、ビデオやDVDが広く普及する前に比較的手に入りやすい紙媒体のエロアイテムだ。

 まだ再生機自体が高額な頃、自室に個人用を購入するより家族用が殆どだった時代、
 
 家族に隠れて夜な夜なリビングでとか、家族が皆んな居ない時に隠れて見るより、自室で閉じこもって見れる書籍の方がリスクが少ない。


 販売時、ビニールに包まれているから中が確認出来ないので、本のタイトルと表紙の写真で内容に期待して購入、後で「騙された!」感は少なからず有った。

 ちょっと年齢的に似合わないを着た女性、
 今ならキャラとして需要あると信じてあげたいかなり痩せてる女性、
 その逆でお腹周りがダルダルでそのお肉をさっきの女性のお胸にプレゼントすれば解決するくらいわがままボディの女性などがそれなりに頑張ってエロい事している写真が掲載されている。

 「カラーページ満載」みたいなお約束の言葉に騙されるけど、まぁ多少はカラーページも有るけどね。

 金額の高いモノはカラーのグラビア写真が多い様で、ぼったくられてるのは諦めるしかない。

 今ならDVDソフト1本の方が安い金額だ。

 ただ、大手の出版社で印刷されてる様な本ではないので、色々良い意味でな部分がある。

 がいい加減なのだ。

 「局部」を隠す際に、製本後にマジックで塗り潰したり、写真製版時に局部を隠す様にその部分だけ雑に削ったり、その為か結果的にぼんやり局部が見えてしまう事がある。

 時には塗り潰したマジックをバターで溶かしてなんとか見ようと試みる先輩方がいた様だ。


 また、「裏本」なんてモノも存在していて、こちらは間違いなく違法なモノで、しっかりと見えている。

 暴力団の資金源にされてるとも言われていて、ヤクザに借金がある個人経営の印刷所で夜中に印刷されてるとか様々噂が有った。


 コレも安価でビデオデッキが購入出来て、「レンタルビデオ」が一般的になると次第に姿を消していったと言われている。


 「…そんな昭和の艶めかしい文化遺産を店の奥からしたから、ネコくん、僕と神保町に売りに行こう!」


 「…店長、ナニ言ってますか?」


 先代の頃から死蔵売れ残り品が有ると聞いて、倉庫整理を手伝っていたのだが、

 「いや、この手の本もが居てね、この手の本を強化買取している古書店が有るんだよ!」

 「〇〇書店ですよね?」

 「お!さすがネコくん、知ってたか⁈」

 「あの店、まだ有るんですか?
 確か御店主、九十歳以上では?」

 「先代オヤジの先輩でさぁ、まだご健在だよ。」

 俺は高校生の時に知らずに入って、おそらくその人に怒られて、

 「チ〇〇ンに毛が生えてから来い!」

 って、怒鳴られた。

 いや、生えてるよ!

 いや、そうじゃなくてね⁈



 もう成人してるから、に買いに行けるけど、なんか敷居が高いんだよなぁ。

 段ボール箱が二つ、百冊弱有る!

 重い!めっちゃ重い!

 なるほどねー!

 その為に俺について来いと⁈


 
 店のワゴン車に乗せて、の運転で、いざ神保町へ!


 良かった!

 段ボール箱を運ぶ為に折り畳みの荷台車が積んであったよ。


 路駐は出来ないと、件のお店近くのコインパーキングにワゴンを停め、ゴトゴト荷台を押して行く俺とナニやら菓子折りを持っている店長。

 ついたのは築百年と聞いても驚かないくらい古い木造の建物で、何でも東京大空襲を生き残ったある建物らしい?

 何でも「看板建築」とか言って、正面は洋風でレンガや石材を使っているのに、中は普通に木造で土壁のバリバリ日本式、屋根も瓦屋根だ。

 天井は高いが薄暗い。

 「ネコくん、ソッチじゃないよ。
 ウラからだよ。」


 つい、に入ろうとしてしまった。

 今のオレは古本屋の書店員だ、お客ではなかった。

 脇の路地から裏に回って塀と同化した引き戸を開ける、なんと店の裏には「倉」が有った⁈

 土蔵とか言うらしいけど?

 知らなかったよ、古民家カフェとか出来そうじゃないか?


 「おう、来たか。コッチだ。」

 あ、いた!

 あの店主ジィさんだ!

 その風貌から俺は心の中で「死神博士」と呼んでいた。

 以前見た時より、シワが増えたが間違いない、この人だ。

 「ご無沙汰してます、コレつまらない物ですが。」

 「ああ、もらっといてやる。」


 何か偉そうだ、元々店長は腰の低い人だけと。

 「ネコくん、ここは良いから店内見て来なよ。」

 「ありがとうございマス!
 では早速!」


 
 まぁお二人で話したい事でも有るのだろう、空気を読んでのダンジョン探検だ!

 なるほど、店内は薄暗いが結構繁盛している様で目に付くだけでも七、八人ほどが、各棚の前で背表紙を睨んでは、手にとって表紙裏表紙をじっくり見比べている?

 昔のグラビア雑誌や官能小説、成人マークの無い成人向け漫画など、古書新刊すべてビニール袋に包まれて、

 「ビニールを破いた場合には購入してもらいます。」

 と壁に張り紙がされている。

 折角だから何か買って帰ろうと、手頃な値段で自分が生まれる前のモノとかないかな?


 そんなんで平成一桁代、某人気漫画家が別のペンネームで発表されていたエロ漫画と俺の父親世代に人気だったというグラビア雑誌を買ってみた。

 比較的、良心価格のモノを選んでみた。


 値段は所謂「希少価値」的な事で高額なモノも多く、ウッカリ散財はしなかったよ。


 ソレにしても、棚への並べ方はごちゃ混ぜだ!

 おそらくは入荷した先から、空いている場所に詰め込んでいる様で、古本の隣に先日発売したばかりの本が並んであるから不思議だ。


 あと、間違いなくウチのお店とは客層が全く違うのだけど、多分俺の父親世代だろう?

 ポツポツ俺と同年代らしき人も居るけど、居心地悪そうだ?

 「お前にはまだこの店は早いぞ!」感が伝わってくる気がする。

 要件が終わった店長が店内に俺を探しに来て、

 「どれ、何かお宝は見つかったかな?」

 なんて聞いてくる?

 「ええ、コレ俺が産まれる前の本です!」

 「あ、この表紙の子、当時好きだったなぁ。」

 店長の推しだったのか?


 「いくらになりました?」

 「そんなにすぐ値段は決められないって。」





 こちらが持ち込んだ死蔵品はじっくり確認して査定するそうだ。

 折角なので、この近くで美味いとに評判のカレー屋で昼食を取る事になった。

 勿論、店長の奢りだ。


 


 後日、店長から

 「あの箱二つで、八万程かな。」

 と言われた。


 円ですか?元ですか?


 それが高いのか、安いのかわからないけど?


 
 そういえば、同人誌らしきモノも有ったような?

 もしかして、海賊版だったかもしれない。

 その内また行ってみようと思う。
 
 




 「猫盛さん、聞きましたよ!

 、猫盛さんがどんなエッチな本を買ったのか、!」

 勘弁してよ、シオタさん!
 

 ちなみに店長がうっかり話してしまった様だ。

 翌日、カツカレー大盛り奢ってくれたのでチャラへCHARA。




 ※「海賊版同人誌」

 同人仲間が何冊が被害に有ったんだが、正に時代が産んだ闇。

 違法だよ!ア〇ル君並にマジで捕まればいいのに。

 地元の古本屋でとして売られていたので、試し購入。

 印刷は粗悪、スクリーントーンはかなり潰れてるし、なのに紙質は本物より厚かったり?
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