転生前のチュートリアルで異世界最強になりました。 準備し過ぎて第二の人生はイージーモードです!

小川悟

文字の大きさ
上 下
293 / 315
番外編① アーリンの残念なチート物語 学園入学?

第30話 マザコンじゃん!

しおりを挟む
朝から久しぶりに学園に向かう。
問題なく学園に到着したのだけど、入学試験の時ほど人がいなくて、どこか寂しい雰囲気がした。

もしかして粛清された貴族家の生徒がいなくなったのかしら?

その予想は正しかったみたいで、学園の入口には受付が設けられ、改めてクラス分けを確認してから教室に入るように教師が指示していた。

「ロンダ准男爵家のアーリンです」

受付で自分のクラスを確認する。

「え~と、えっ、ロンダ准男爵……、あのぉロンダ子爵家ではありませんか?」

あぁ~、そういえばそんな話を聞いた気がするわ。

「ま、まだ准男爵だと思いますわ。年始の謁見で子爵家に陞爵すると聞いていますけど……」

ロンダ家は子爵への陞爵が内定したとお父様から話は聞いていた。
でも陞爵は来年からとなり、年始の国王陛下への謁見で国中の貴族の前で陞爵の儀がされるらしい。

「そうなのね……、でも学園ではすでにあなたを子爵家の生徒としてクラス分けをしたみたいね。どうせ陞爵まで一ヶ月もないからでしょう。だからロンダ子爵家のアーリンさんはAクラスで魔術Aコースになりますよ」

なんでAクラスなのよぉ~!

子爵としてクラス分けされたとしても普通ならBクラスのはず。伯爵家の人が多いAクラスではまだ准男爵家の私としては肩身が狭い。

でも文句を言ってもクラスを変えてもらえるとは思えないので、諦めてAクラスの教室に向かうのであった。


   ◇   ◇   ◇   ◇

教室に入るとまだ数人しか生徒は来ていなかった。どこに座れば良いのかとわからず、教室の後ろで立っていることにする。

すぐに教室に次々と生徒が入ってきたけど、どうみても上位の貴族家の生徒ばかりである。服装や装飾品なども明らかに身分が高そうな雰囲気で、従者っぽい生徒を連れている生徒もいた。

貴族は上位の貴族から声をかけるのが礼儀マナーである。どう考えても実質的にこの中で最下位の私から声をかけることなどできるはずがない。

ほとんどの生徒は私のことを訝し気に視線を向けてきたけど、話しかけてくる生徒はいなかった。

誰も私を知らないはずよねぇ~。

爵位も全然違うし、このクラスの生徒の大半は入学試験の実技試験など受けていないのだろう。伯爵クラスの貴族なら学園で成績を残すより、社交を優先しているはずだからだ。

これならシャル王女のいるSクラスのほうが良かったかも~!

まだ准男爵家の私としては、AクラスだろうとSクラスだろうと居心地が悪いのは同じにしか思えない。それならSクラスにはシャル王女や従者のドナやダニもいるから話し相手にはなってくれると思ったのである。

そんなことを考えていると、驚くことに声をかけられた。

「アーリンさん、Aクラスに来たみたいだね?」

え~と、この男子は誰かしら?

声をかけてきたのは、好感の持てる男子だった。それほど高位の貴族には見えないけど、嫌味のないシンプルで清潔感があった。

一緒に派手な感じの二人の女子を連れているのが減点だけどね……。

あれっ、でも見覚えのあるような気がする……。

一生懸命に思い出そうとして、挨拶するのを忘れていた。そんな私を見て彼は苦笑して名乗ってくれた。

「先日お会いしたラコリナ子爵家のマルコです」

「あの時のマザコン君! あっ」

し、しまったぁ~!

王都への移動中にラコリナ子爵の屋敷に滞在させてもらった。
その時に彼を紹介され、同じ年齢で私と同様に学園に行くと聞いていた。でも弟と一緒に母親にべたべたと甘えていたので、マザコン男子にしか思えず、秘かに心の中でマザコン君と呼んでいたのである。

マザコンと言われた本人も、私の予想外の返事に驚いて固まっている。代わりに横の女子が怒りの表情で前に出てきた。

「あなたはどちらの家のご令嬢かしら? 私はゴドウィン侯爵家のアルベッタですわ」

寄り親でもあるゴドウィン侯爵家のご令嬢!

「私はアルベッタの姪のイザベッタですわ。私達の縁戚でもあるマルコに失礼じゃありませんか?」

なんで同じ年の姪!

ゴドウィン侯爵家の当主も嫡男もお盛んで、沢山の側室がいることを思い出した。毎日のようにゴドウィン侯爵家から我が家の迎賓館にご夫人たちが訪問してきているけど、毎日違うご夫人だったのである。

それにしてもマルコマザコン君は子爵家だけどAクラスにいるなら成績も良かったのだろう。ゴドウィン侯爵家のご令嬢達は侯爵家なのにAクラスということは成績が……。

「わ、私はロンダ准男爵家のアーリンです。マルコさんとは先日お会いさせてもらいました。そのとき弟さんがラコリナ夫人に凄く甘えていたのが印象に残っていて、失礼なことを言ってしまいましたわ。どうかお許しください!」

弟君だけでなく、マルコあんたも甘えていたけどね……。

マルコはマザコンが弟のことだと言われてホッとした表情になる。

「ああ、弟はまだ幼いので母に甘えているのですよ。学園に通う頃には落ち着くでしょう」

ああ、彼は自分がマザコンだとは思っていないみたいね。

「そ、そうですわね。それよりラコリナ夫人は聡明な女性で、私はあんな女性になりたいと思ってしまうほどでしたわ」

マザコンの件を誤魔化そうと話を逸らした。

「ハハハハ、僕も母のような女性と結婚したいと思っていますよ!」

ちょっとぉ~、完全にマルコあんたもマザコンじゃん!

もちろんそんなこと言えるはずない。

この教室にいる男子でどちらかというと好ましいと雰囲気がマルコにはあったけど……。

マルコマザコン君のことはともかく、私が自己紹介してから教室が静かになり、ゴドウィン侯爵家のご令嬢の二人は固まっていた。

それだけではなく、なぜか教室の誰もが私達の会話に聞き耳を立てているのに気付いたのであった。


しおりを挟む
感想 437

あなたにおすすめの小説

フェンリルさんちの末っ子は人間でした ~神獣に転生した少年の雪原を駆ける狼スローライフ~

空色蜻蛉
ファンタジー
真白山脈に棲むフェンリル三兄弟、末っ子ゼフィリアは元人間である。 どうでもいいことで山が消し飛ぶ大喧嘩を始める兄二匹を「兄たん大好き!」幼児メロメロ作戦で仲裁したり、たまに襲撃してくる神獣ハンターは、人間時代につちかった得意の剣舞で撃退したり。 そう、最強は末っ子ゼフィなのであった。知らないのは本狼ばかりなり。 ブラコンの兄に溺愛され、自由気ままに雪原を駆ける日々を過ごす中、ゼフィは人間時代に負った心の傷を少しずつ癒していく。 スノードームを覗きこむような輝く氷雪の物語をお届けします。 ※今回はバトル成分やシリアスは少なめ。ほのぼの明るい話で、主人公がひたすら可愛いです!

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

兄がやらかしてくれました 何をやってくれてんの!?

志位斗 茂家波
ファンタジー
モッチ王国の第2王子であった僕は、将来の国王は兄になると思って、王弟となるための勉学に励んでいた。 そんなある日、兄の卒業式があり、祝うために家族の枠で出席したのだが‥‥‥婚約破棄? え、なにをやってんの兄よ!? …‥‥月に1度ぐらいでやりたくなる婚約破棄物。 今回は悪役令嬢でも、ヒロインでもない視点です。 ※ご指摘により、少々追加ですが、名前の呼び方などの決まりはゆるめです。そのあたりは稚拙な部分もあるので、どうかご理解いただけるようにお願いしマス。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。