45 / 284
仮定の真否 6
しおりを挟む
‘仕事のことは気にするな。嫁も手伝ってくれるだろうし、日野さんに次を早めてもらってもいい。連絡する’
日野?ここで日野?
‘玖未の次も日野さんだろ?もう聞いているのか?’
「まだです…」
‘じゃあケガの報告がてら、それもちゃんと聞け。ケガは襲われたと説明していいのか?’
「…はい…嘘も思いつかないから…それでいいです」
‘分かった。じゃあ、2月分は給料入れるからな。元気になったら顔だけ見せてくれ’
「お世話になりました、ゲンさん」
辞めるということか?治ったら顔をだすと約束して通話を終えた玖未だが、俺たちは少々混乱していた。
ゲンさんと日野が連絡?
日野のことを調べたことはもちろん、玖未の施設のことなども俺たちが知ってると玖未は思っていない。だから玖未の口から‘お父さん’と聞いた時にも存命の体で話を聞いたんだ。
ここは慎重にいくぞ…右京と野沢も、同じ視線を送ってくる。
「えぇ?今のって、玖未ちゃん、このまままるを辞めるってこと?」
仕事モードを抑えて玖未の謂う所の‘ゆーじん’モードで右京が聞く。
「期限って何?日野って誰?結婚でもするの?」
「それなら…結婚するってだけで長い話にならない…結婚なんてないよ」
「そんな単純なものじゃない…か。ゆっくり吐き出せ、玖未。言葉が人の行動を変える、人生を変える。そしてそれがどんなものでも、俺は玖未を離さない」
「玖未さん、繰り返しになりますが私たちも協力します。長い話ならこれをつまみながら、飲み物を飲みながらゆっくりとお願いします」
「上手に話せなくてもいいよ。わからない時には遠慮なく聞くから、どうぞ」
野沢と右京がそう言うと、玖未はきゅっと俺の手を握って小さく頷く。
その視線は野沢が‘これ’と言ったミカンだが、玖未の左手は俺と繋がっている。一房、口に持っていってやると一瞬固まった玖未がパクッとそれを口に入れた。
「…こんなに甘いの…初めて食べた…美味しい…百貨店のおはぎも、お惣菜も初めて…私…小さな時からずっと家と施設を行ったり来たりしてたんです」
日野?ここで日野?
‘玖未の次も日野さんだろ?もう聞いているのか?’
「まだです…」
‘じゃあケガの報告がてら、それもちゃんと聞け。ケガは襲われたと説明していいのか?’
「…はい…嘘も思いつかないから…それでいいです」
‘分かった。じゃあ、2月分は給料入れるからな。元気になったら顔だけ見せてくれ’
「お世話になりました、ゲンさん」
辞めるということか?治ったら顔をだすと約束して通話を終えた玖未だが、俺たちは少々混乱していた。
ゲンさんと日野が連絡?
日野のことを調べたことはもちろん、玖未の施設のことなども俺たちが知ってると玖未は思っていない。だから玖未の口から‘お父さん’と聞いた時にも存命の体で話を聞いたんだ。
ここは慎重にいくぞ…右京と野沢も、同じ視線を送ってくる。
「えぇ?今のって、玖未ちゃん、このまままるを辞めるってこと?」
仕事モードを抑えて玖未の謂う所の‘ゆーじん’モードで右京が聞く。
「期限って何?日野って誰?結婚でもするの?」
「それなら…結婚するってだけで長い話にならない…結婚なんてないよ」
「そんな単純なものじゃない…か。ゆっくり吐き出せ、玖未。言葉が人の行動を変える、人生を変える。そしてそれがどんなものでも、俺は玖未を離さない」
「玖未さん、繰り返しになりますが私たちも協力します。長い話ならこれをつまみながら、飲み物を飲みながらゆっくりとお願いします」
「上手に話せなくてもいいよ。わからない時には遠慮なく聞くから、どうぞ」
野沢と右京がそう言うと、玖未はきゅっと俺の手を握って小さく頷く。
その視線は野沢が‘これ’と言ったミカンだが、玖未の左手は俺と繋がっている。一房、口に持っていってやると一瞬固まった玖未がパクッとそれを口に入れた。
「…こんなに甘いの…初めて食べた…美味しい…百貨店のおはぎも、お惣菜も初めて…私…小さな時からずっと家と施設を行ったり来たりしてたんです」
89
お気に入りに追加
236
あなたにおすすめの小説
地味女で喪女でもよく濡れる。~俺様海運王に開発されました~
あこや(亜胡夜カイ)
恋愛
新米学芸員の工藤貴奈(くどうあてな)は、自他ともに認める地味女で喪女だが、素敵な思い出がある。卒業旅行で訪れたギリシャで出会った美麗な男とのワンナイトラブだ。文字通り「ワンナイト」のつもりだったのに、なぜか貴奈に執着した男は日本へやってきた。貴奈が所属する博物館を含むグループ企業を丸ごと買収、CEOとして乗り込んできたのだ。「お前は俺が開発する」と宣言して、貴奈を学芸員兼秘書として側に置くという。彼氏いない歴=年齢、好きな相手は壁画の住人、「だったはず」の貴奈は、昼も夜も彼の執着に翻弄され、やがて体が応えるように……
お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~
ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。
2021/3/10
しおりを挟んでくださっている皆様へ。
こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。
しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗)
楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。
申しわけありません。
新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。
修正していないのと、若かりし頃の作品のため、
甘めに見てくださいm(__)m
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
不埒な一級建築士と一夜を過ごしたら、溺愛が待っていました
入海月子
恋愛
有本瑞希
仕事に燃える設計士 27歳
×
黒瀬諒
飄々として軽い一級建築士 35歳
女たらしと嫌厭していた黒瀬と一緒に働くことになった瑞希。
彼の言動は軽いけど、腕は確かで、真摯な仕事ぶりに惹かれていく。
ある日、同僚のミスが発覚して――。
お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
Adria
恋愛
仕事ばかりをしている娘の将来を案じた両親に泣かれて、うっかり頷いてしまった瑞希はお見合いに行かなければならなくなった。
渋々お見合いの席に行くと、そこにいたのは瑞希の勤め先の社長だった!?
合理的で無駄が嫌いという噂がある冷徹社長を前にして、瑞希は「冗談じゃない!」と、その場から逃亡――
だが、ひょんなことから彼に瑞希が自社の社員であることがバレてしまうと、彼は結婚前提の同棲を迫ってくる。
「君の未来をくれないか?」と求愛してくる彼の強引さに翻弄されながらも、瑞希は次第に溺れていき……
《エブリスタ、ムーン、ベリカフェにも投稿しています》
恋煩いの幸せレシピ ~社長と秘密の恋始めます~
神原オホカミ【書籍発売中】
恋愛
会社に内緒でダブルワークをしている芽生は、アルバイト先の居酒屋で自身が勤める会社の社長に遭遇。
一般社員の顔なんて覚えていないはずと思っていたのが間違いで、気が付けば、クビの代わりに週末に家政婦の仕事をすることに!?
美味しいご飯と家族と仕事と夢。
能天気色気無し女子が、横暴な俺様社長と繰り広げる、お料理恋愛ラブコメ。
※注意※ 2020年執筆作品
◆表紙画像は簡単表紙メーカー様で作成しています。
◆無断転写や内容の模倣はご遠慮ください。
◆大変申し訳ありませんが不定期更新です。また、予告なく非公開にすることがあります。
◆文章をAI学習に使うことは絶対にしないでください。
◆カクヨムさん/エブリスタさん/なろうさんでも掲載してます。
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる