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トルーアに到着しました
しおりを挟む「アリア、起きて」
「ん、んん…」
どうやら、馬車で移動中に眠ってしまっていたようだ。
お母様に起こされて、目を開ける。
「うわぁ!海だ!」
海を見るのは初めてで、思わず大きな声が出てしまう。
「夜なのにキラキラしていてすごく綺麗…」
「トルーアは観光でも有名だからな。海に灯りを浮かべで暗くなっても見えるようにしているんだ」
海に浮かぶ淡い光と月の光が合わさって、すごく幻想的な風景だ。
こんな綺麗なものを見れるなんて、今まで耐えてきたご褒美をもらっているみたいだ。
「お父様、お母様。今回ここに連れてきてくれて本当にありがとう!」
「喜んでもらえて嬉しいわ」
「今まで窮屈な思いをした分、今回の旅行ではお前のしたいことを存分にしようじゃないか」
「うん!」
お父様の言葉に、もう分単位でスケジュールを管理することも、自分の行動をとやかく言ってくる人も居ないんだと実感する。
これからは、第1王子の婚約者ではなく、アリア=ラッツェルとしての人生を生きれるんだ!
「そうだ、今日の晩御飯は魚介類を使ったものを食べたいな!」
「そうだな、せっかくトルーアに来たんだから、魚介料理も有名なあのホテルに泊まるか」
「そうね、あそこなら観光地にも近いし良いかもしれないわ」
お父様が提案してくれたホテルにチェックインして食事を用意してもらう。
もう夜で急だったので、部屋が空いているか心配だったけど、ホテルの人がお父様の顔を見ると急いでスイートルームを用意してくれた。
なんでも、お父様は結婚する前からずっとここのスイートに泊まっていて、支配人とも顔見知りの常連だったらしい。
「美味しい料理も食べれて景色も綺麗で夢を見てるみたい…」
夕食後に1人でホテルのプライベートビーチを散歩する。
夜も遅いので人影は見当たらない。
こんなに静かな時間は本当に久しぶりかもしれない。
今までは、平日は学校で、放課後と休日は王妃教育、少し時間が出来たかと思うとエーリッヒ様に呼び出される毎日だった。
思い返しても、婚約してからいい思い出なんてなかった…。
いや、一つだけあったかな。
あれは確か、トルーアから王太子様が来られた時だった。
エーリッヒ様とトルーアの王太子様が私抜きで視察に行った時、トルーアから一緒に来ていた同年代の眼鏡をかけた従者の方と本の趣味が一緒で話したことがあった。
あの人とはあれ以来お会いしたことはないけれど、私がエーリッヒ様の婚約者じゃなかったら、あの人とは会えることはなかったはずだ。
だから、あのことだけはエーリッヒ様の婚約者で良かったと思ったことかもしれない。
確か、あの時話した本のタイトルはーー。
「ダンデスの冒険記…」
「え…?」
今ちょうど思い出そうとしていた本のタイトルが聞こえて後ろを振り返れば、そこには見覚えのある男性が立っていた。
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