あやかし祓い屋の旦那様に嫁入りします

ろいず

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5章 祭祀の舞

親族

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 午前のうちに親戚の人達が山の上にある平安時代を思わせるような、屋敷の方へ訪問してきた。
 並んだ鳥居の階段を上り、朱色の門をくぐると紫陽花に囲まれた庭園。
 そこには能楽や狂言の舞台で使う能楽堂のような場所があり、その手前に注連縄しめなわが巻き付いた巨木がある。
 夢で見たあの巨木。
 ただ夢で見た時よりも随分と古い感じで、近くに寄ると空気が清涼な気がする。
 神秘的と言うべきなのか神々しいと言うべきか、コゲツいわく『御神木』ということだ。
 この木の破片がいつも持たされているお守りの中身。

「遠い所をわざわざありがとうございます」
「ここは相変わらずだね」
「変わりは致しませんわよ」

 お義母さんがにこやかにお客さんに対応し、何やら目に見えないバチバチとした争いが見えるのはなぜなのかしら? と笑顔でわたしも頭を下げつつコゲツと一緒に並んでいる。
 コゲツはいつものように白い布で顔を隠し、わたしも白い布で顔を隠して着物を着せられている訳だけど、親戚だと伺ったのにとてもギスギスしている気が……
 お客さんも大分屋敷の中へ案内されて、あとはお義父さんとお義母さんが対応することになった。
 わたし達はお茶を用意するために台所でお湯を沸かしている。

「なんだか雰囲気が怖い気がするのは気のせい……じゃないよね?」
「まぁほし家も一枚岩ではないということです」
「うーん。ほし家ってコゲツのお家が一番上じゃないの?」

 八代目とか言うのだし、祓い屋を継いでいるのだから一族の中では偉い方なのではないかと思うけど、どうなのだろう?

「父は本来ならば、三男ですから七代目ではなかったのですが、祓いの目と能力を安定させる相手である母と子供の頃から出会っていましたから、<縁>を継いだという訳です。ですから、まぁ、他の長男次男長女の伯父や伯母達は面白くないということですね」
「そうなんだ。じゃあ、コゲツは従兄弟関係は八代目で揉めなかったの?」

 コゲツは口元を緩ませると「私には嫁殿がいましたからね」と、耳元に囁いてきた。
 耳にくすぐったい。
 相変わらず声も良いのだから困ってしまう。

「私の幸運は、小さな嫁殿に早く出会えて、こうして結婚できたことですね」

 耳から離れる時に軽く頬に唇が当たる。

「コゲツ、最近わたしのことを揶揄ってる?」
「揶揄ってなどいませんよ」

 それにしてはキスとかいっぱいしてくる気がする。
 この甘さに甘んじて良いのか、どうすればいいのかが恋愛初心者には判断しにくい。

「嫁殿。あーん」

 お茶菓子の小さな茶饅頭を指で摘まんで、コゲツが口に入れてくれた。
 こしあんのしっとりさと優しい甘みに、皮の黒糖がマッチして美味しい。
 
「美味しい~」
「千佳のお土産にでも買って帰りましょうね」
「そうだね。千佳は今頃、宿泊研修頑張っているかなぁ」

 千佳も来たがってはいたんだけど、千佳のお母さんの許可が下りなかったんだよね。
 ずる休みは駄目よってことらしい。
 わたしは一身上の都合で休みということになっているんだけどね。
 宿泊研修は休みだし、学校も休みではあるんだけど、不思議と宿題は出なかった。
 高校は基本それほど宿題は無い。
 無いんだけど、テスト勉強やテストの後に間違えたところをやり直しさせられたりはするから、自分で勉強できるところは勉強しないといけないんだよね。

「彼女は誰とでも仲良くできますし、今頃楽しくやっているんじゃないでしょうか」
「そうだと良いけど、わたしは千佳が三灯天神の力を気を抜いて使ったりしなきゃいいんだけど……」
「そればかりは天草に任せるしかありませんね」

 千佳にあとでちゃんとやれているかスマートフォンでメッセージを送っておこう。
 天草先生は珍しく一緒に来なかったけど、どうも御神木との相性が悪いのだとか。
 キョウさんとダイさんは逆に伸び伸びと出来る空気だとかで、散策しに行ってしまっている。
 火車は気付くと姿を現したり、いつの間にか消えていたりで一人遊びをしている感じかな?

「さて、嫁殿行きましょうか」
「あ、先に行ってて。お手洗いに行ってから行くから」
「場所は分かりますか?」
「うん。大丈夫」

 台所でコゲツと別れ、お手洗いに行って廊下を歩いていたらお客さんの一人がわたしに声をかけてきた。
 親戚筋の娘さんでわたしより年が上の女性。
 長く綺麗なストレートの髪に垂れ目がちの目が、大人しそうなお嬢様という雰囲気をしている。

「貴女、コゲツ様に相応しくありませんからっ!」
「へ?」
「絶対、御神木様に認められることなどありませんからね!」

 いきなりの言葉に頭が付いていかず、わたしの反応の無さに彼女はフンッと鼻で息巻いて通り過ぎて行った。
 なんだったのか……?
 うーん。コゲツは美形だから、こういうこともあるのかなぁと、漫画みたいな自分とはかけ離れた世界を垣間見た気がする。
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