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5章 祭祀の舞
舞踊る
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夕飯を終えて、わたしの作ったマロンケーキをデザートにお茶をした後、お風呂から上がった後が問題だった。
客間に通されたのだけど、お布団は一組だけ。
二人で寝ても十分な大きさではあるけど、狼姿のキョウさんとダイさんに火車も加わるとみっしり状態。
「布団をもう一組、用意した方が良いかもしれませんね」
「ギリギリいけるんじゃないかな?」
「流石に密着状態になるかと……」
「家族なんだし、良いんじゃない?」
「嫁殿……」
そんな風にジト目で見られても、キョウさんやダイさんもいるし前に居間で一緒に皆で寝た事もあるから気にすることは無いと思うのだけど。
キョウさんもダイさんも早く寝ろと布団に潜り込んでいるし、火車は枕を陣取って寝ている。
わたしも布団の中に潜り込み、コゲツに自分の横にくるように布団を叩く。
「我らは一緒に寝ても構わんぞ」
「主も早く寝るといい」
「貴方達は……まったく。まぁ母の仕業だとは思いますが、仕方がないですね」
布団にコゲツが入って来てわたしの頭の下に腕を通して、引き寄せた。
火車が枕を陣取っているからだろうけど、なんという腕枕……!! ひえっと声を出さなかったわたしは頑張ったと思う。
「嫁殿。おやすみ」
「おやひ、おやひみ、ううっ!」
噛みまくったぁ! 全然頑張れてなかった! 素直にひえっと声を出しておけば良かった。
コゲツにクスッと笑われて、恥ずかしさに睨み上げるとチュッとキス音付きでおでこに口付けられる。
「ひゃっ!」
「布団はもう一組、必要でしょう?」
「うう~……コゲツの意地悪~っ」
頭をポンポンと叩かれて髪をくしゃくしゃに弄られた。
大人の余裕でしてやったりという顔をしたコゲツに、ダイさんが「主は大人気ない」と間に入ってわたしを押しのける。
「これで寝れるだろう?」
ニッとキョウさんがわたしの右頬に鼻先を押し付け、左頬にダイさんが鼻先を押し付けてきた。
これはキスに入るのかな?
さすがにコゲツもこの陣形にはなす術が無かったみたいで、お布団を追加することなく皆で一緒に寝てくれた。
ただね、お布団の余裕がほとんどなかったからギュウギュウ詰めで、暑苦しくてキョウさんを私が蹴り出しちゃって、ダイさんにわたしは蹴り出され……結局、朝までお布団の中で寝ていたのはキョウさんとコゲツだけ。
「母さん、布団は二つ用意してください」
朝食の時にコゲツがお義母さんに言ったぐらいだった。
お義母さんは流し目で笑っていて、そういう顔はコゲツに似ている。
「今日は祭祀の為に親戚が来るから、コゲツとミカサさんはお客様の対応を手伝ってね」
「嫁殿は初めてですから、私と一緒に行動しましょう」
「うん。祭祀のことは分からないから、お手伝いってことで良いのかな?」
「今年はそれで大丈夫です。次の年までに舞を覚えていただければ十分ですよ」
「舞……? もしかして、わたしが踊るなんてことは、ないよね?」
お義母さんもコゲツも同じように笑顔だけなのは止めて欲しい。
これはわたしが踊らされるということだろうか?
わたしの疑問への答えはお義父さんが出してくれた。
「ミカサさんの舞衣装も、一応用意しておいたんですけどね」
「ひえっ! わたし踊るんですか!?」
「コゲツが結婚する前までは、他の親戚が舞っていたからね。ミカサさんがいるのに他の人が舞うのはどうかと思うしね。その為に学校を休んで来てもらったわけですし」
「お義父さん! わたし踊れません~っ!」
頭を左右に振って助けを求めるようにコゲツを見る。
肩に手を置かれ、「大丈夫ですよ」って……他人事だと思って酷い! と思ったのだけど、舞うのはコゲツも一緒だそうだ。
「舞うなんて聞いてないよー」
「言えば嫁殿がここに来るまでに気分を静めてしまいそうでしたので」
「それは……そうかも?」
「嫁殿は水島家で舞踊を習っていたと報告は受けていますから、踊れないこともないでしょう?」
「うぐっ!」
確かに花嫁修業で日本舞踊のようなものはやらされたけど、毎回怒られてたから下手くそなのは確かだし、怒られ過ぎて苦手意識が強いのもある。
コゲツの家族は優しいから、怒られはしないだろうけど呆れられたらどうしようという不安でいっぱい。
こればかりは逃れたいところだ。
客間に通されたのだけど、お布団は一組だけ。
二人で寝ても十分な大きさではあるけど、狼姿のキョウさんとダイさんに火車も加わるとみっしり状態。
「布団をもう一組、用意した方が良いかもしれませんね」
「ギリギリいけるんじゃないかな?」
「流石に密着状態になるかと……」
「家族なんだし、良いんじゃない?」
「嫁殿……」
そんな風にジト目で見られても、キョウさんやダイさんもいるし前に居間で一緒に皆で寝た事もあるから気にすることは無いと思うのだけど。
キョウさんもダイさんも早く寝ろと布団に潜り込んでいるし、火車は枕を陣取って寝ている。
わたしも布団の中に潜り込み、コゲツに自分の横にくるように布団を叩く。
「我らは一緒に寝ても構わんぞ」
「主も早く寝るといい」
「貴方達は……まったく。まぁ母の仕業だとは思いますが、仕方がないですね」
布団にコゲツが入って来てわたしの頭の下に腕を通して、引き寄せた。
火車が枕を陣取っているからだろうけど、なんという腕枕……!! ひえっと声を出さなかったわたしは頑張ったと思う。
「嫁殿。おやすみ」
「おやひ、おやひみ、ううっ!」
噛みまくったぁ! 全然頑張れてなかった! 素直にひえっと声を出しておけば良かった。
コゲツにクスッと笑われて、恥ずかしさに睨み上げるとチュッとキス音付きでおでこに口付けられる。
「ひゃっ!」
「布団はもう一組、必要でしょう?」
「うう~……コゲツの意地悪~っ」
頭をポンポンと叩かれて髪をくしゃくしゃに弄られた。
大人の余裕でしてやったりという顔をしたコゲツに、ダイさんが「主は大人気ない」と間に入ってわたしを押しのける。
「これで寝れるだろう?」
ニッとキョウさんがわたしの右頬に鼻先を押し付け、左頬にダイさんが鼻先を押し付けてきた。
これはキスに入るのかな?
さすがにコゲツもこの陣形にはなす術が無かったみたいで、お布団を追加することなく皆で一緒に寝てくれた。
ただね、お布団の余裕がほとんどなかったからギュウギュウ詰めで、暑苦しくてキョウさんを私が蹴り出しちゃって、ダイさんにわたしは蹴り出され……結局、朝までお布団の中で寝ていたのはキョウさんとコゲツだけ。
「母さん、布団は二つ用意してください」
朝食の時にコゲツがお義母さんに言ったぐらいだった。
お義母さんは流し目で笑っていて、そういう顔はコゲツに似ている。
「今日は祭祀の為に親戚が来るから、コゲツとミカサさんはお客様の対応を手伝ってね」
「嫁殿は初めてですから、私と一緒に行動しましょう」
「うん。祭祀のことは分からないから、お手伝いってことで良いのかな?」
「今年はそれで大丈夫です。次の年までに舞を覚えていただければ十分ですよ」
「舞……? もしかして、わたしが踊るなんてことは、ないよね?」
お義母さんもコゲツも同じように笑顔だけなのは止めて欲しい。
これはわたしが踊らされるということだろうか?
わたしの疑問への答えはお義父さんが出してくれた。
「ミカサさんの舞衣装も、一応用意しておいたんですけどね」
「ひえっ! わたし踊るんですか!?」
「コゲツが結婚する前までは、他の親戚が舞っていたからね。ミカサさんがいるのに他の人が舞うのはどうかと思うしね。その為に学校を休んで来てもらったわけですし」
「お義父さん! わたし踊れません~っ!」
頭を左右に振って助けを求めるようにコゲツを見る。
肩に手を置かれ、「大丈夫ですよ」って……他人事だと思って酷い! と思ったのだけど、舞うのはコゲツも一緒だそうだ。
「舞うなんて聞いてないよー」
「言えば嫁殿がここに来るまでに気分を静めてしまいそうでしたので」
「それは……そうかも?」
「嫁殿は水島家で舞踊を習っていたと報告は受けていますから、踊れないこともないでしょう?」
「うぐっ!」
確かに花嫁修業で日本舞踊のようなものはやらされたけど、毎回怒られてたから下手くそなのは確かだし、怒られ過ぎて苦手意識が強いのもある。
コゲツの家族は優しいから、怒られはしないだろうけど呆れられたらどうしようという不安でいっぱい。
こればかりは逃れたいところだ。
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