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第二章
新たなるしもべ
しおりを挟む目を覚ました土地神は領主の城や牢獄などを壊し、そのまま国境付近まで運んでくれた。
無事にヴィッテンハイム国を抜けた俺達に、噂が追いついてくる。
なんでも、神が姿を見せる程怒らせたと、聖職者層が領主を見放したらしい。
それに加えて種族間の緊張が高まる中で、私利私欲の為にオークやゴブリンを迫害したと人族からも非難轟々。
領主は見事に失脚、拘禁されたとか。
その日、偶然捕まった二人組のことは、まったく噂にない。
良かった良かった。
だが、一つ問題も起きた。
「恩を返す為にも、お連れください」と、子ゴブリンが言い出した。
他のゴブリンも逃げたし、同族の元に帰るが良いだけだ。
うちのご主人様は人使いが荒いぞと説得しても譲らない。
「お母ちゃんもお父ちゃんも亡くなりました。残った一族も狩り出され、このままでは全滅のところを救いだされたのです。一生かかっても返せぬ恩を授かりました」
子ゴブリンは、わりとしっかりとした口調で喋る。
「まあ、別に良いけど」
女神さまはあっさり許可する。
いやいや、よく考えないと。
「安全とは言えないし、お給料もないし、気ままな命令するし、大食いだし。それに故郷には二度と戻れない」
過酷な職場だぞとしっかり伝えて説得する。
あれ、俺って故郷の暗黒企業でこき使われて、人生絶望して転生してきたはずなんだけどな……。
「それでも構いません!」と、子ゴブリンは言い切った。
子ゴブリンは、クルケットと名乗った。
小柄で手足も顔のパーツも大きく、飼い猫か子狸のようなかわいらしさがある。
『新参のわたしが!』と俺の代わりに荷物を持つと言いだした。
なかなか出来る新入生だが、自分の背丈と変わらないリュックは無茶だ。
「やらせてみたら? ゴブリンってチビだけど力は強いし」
ティルが横から口を挟んだ。
なんだろう、この美人エルフがゴブリンを見る目は結構きつい。
例えるなら、集団で最上位グループの女性が、張り切る下位の女を冷たく見つめるあの感じ。
この世界でも、エルフが上位種でゴブリンは下位種族なんだろうか。
クルケットは、ティルにもペコペコとお辞儀しながら、なんとか荷物を背負う。
上がっただけでも凄いが、よろよろしてて流石に無理だ。
「まあ、気持ちだけ貰っておくよ」と言うと、クルケットの大きな目にじわりと水たまりが出来る。
仕方ない、もう一つ荷物を作ろう。
小さな鞄を取り出し、そっちに水や食料なんかを詰める。
「これならどうだ?」
「ありがとうございます!」
良いってことよ、自分の仕事がないとつらいものな。
「うん、少しでも助かるよ。荷物が増えるばっかりでさ」
そう言ってユニコの上であぐらをかく女神さまを親指で示す。
「あっちが……ご主人様、めがみんって呼んでも良いぞ。おれがゆうたで、あの馬がユニコ、でこっちがティル」
「はい! ご主人様に、ユータ様に、ユニコ様にティル様ですね。よろしくお願いします!」
こうして、道連れが一人増えた。
まあ直ぐに一人減っるのだが。
「クルケット、あまり無理はするなよ。疲れたらユニコに乗っていいぞ、まだ子供なんだし」
俺は下僕リーダーとして色々と気を使う。
クルケットは、目を丸くして驚いていた。
「あのー、わたしはもう15で人にすれば二十歳くらいです。子供扱いはやめて下さい」
ええぇ……高く見つもっても10歳くらいなんですけど。
その会話を聞いてたティルがまた言った。
「ゴブリンって寿命が短いから、成熟も早いんですの。わたしなんてもう40年は生きてますけど、この美貌ですし」
おーい、大丈夫かな。
神さまの下で種族間争いなんてごめんだぞ。
それから、道々で悪代官や悪徳商人の起こす揉め事に首を突っ込みながらも、俺達4人と一頭は、無事に大聖都トリプティクまで着いた。
三重の城壁に囲まれ、その外にも市街の広がる大都市だ。
ここから目的のもの、女神さまにちょっかい出した奴を見つけるのは大変そうだなあ。
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