それは私の仕事ではありません

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そこにいる人

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歓迎会にクレストは妻と参加した。妻は以前は騎士団の受付をしていた。本人は騎士に免疫があって、女騎士を多数見ている。彼女自身は平民であるが、ドレスを着こなし、所作も綺麗なので、下位貴族のご令嬢と言われても納得するぐらいにはできていると夫目線でも思っていた。

だけど、まあ、そんなものとは全く違った。王都から来た騎士団にいる女騎士は、高位貴族が三人、普段は騎士として令嬢とは別の人間として過ごしている。

だけど、やはり、生まれ持ったものと、毎日の教育の賜物、というものは凄いのだと実感したのは、同僚にエスコートされて、入ってきた際の威圧感である。身長もある分余計に迫力があり、クレスト夫妻は圧倒されてしまった。

「流石、これぞ貴族って感じね。」
クレストは末端の男爵家出身でほぼ平民と変わりない。

いつも歓迎会やら懇親会では、必死に顔だけキリッとさせているが、中身はすっからかんで美味しいお酒と美味しい料理を堪能するだけ。

こんな時まで上司の顔なんて見たくないと、グレイやらフランクの近くには寄らないようにしていたのだが、今回は妻が二人の攻防に釘付けになっていた為に、逃げることは叶わなかった。

グレイにエスコートされていた女騎士は、伯爵家のご出身でどうやらあの三人の中では一番人気らしい。

「あんなリスキー卿の顔、初めて見た。」
確かに妻の言う通り、あの済ました顔の男が焦った様子を見せたのはあの女性が来てからだ。

「確か、新人時代の教育係と教え子だったみたいよ。」どこから仕入れてくるのか、今日初めて会うというのに、そんなことまで耳に入れているのだから、女の情報網は凄い。クレストが意外だったのはそのフランクよりも、グレイの変わりようだ。

「ハルト卿も、あんな顔できたのねぇ。」
普段のキャラの違いなのか、フランクだと、そんな風に思わないのだが、何故かグレイが普通に女性をエスコートすることに違和感がある。

クレストにとっては歳は近いが上司には変わりないのに、大丈夫か、と心配してしまうのだが、同期だからなのか、息がぴったり合って、二人はお似合いのパートナーだった。

「元はスーツを着るって言っていたのに。」クレストが小耳に挟んだ話ではドレスの用意は無かったはずだが。

「ああ、それはあの、公爵家の方が持ってこられたのよ。」
騎士団とは別に何か来たという話は聞いていた。グレイの相手が話している女性がまさかの公爵家ご出身。これで新しく副団長に就任しているのだから、媚びはたくさん売っておこうと、クレストは彼女の要望を聞いたりしてみたのだが。

「ああ、あの。」
クレストの疲れた態度に苦笑して妻は悟った。

「彼の方も、強烈な方だったの?」
「うん。晴れて、ブラックリスト入りしたよ。」
騎士には変な人が多い。花形の職業だと、下位貴族や平民の中ではそんな風に憧れの目で見られる騎士と言う職業だが、だからといって人間性が優れているとは限らない。グレイやフランクは個性的ではあるが、変な人ではない。偏見かもしれないが前に王都から訪れたどっかの騎士団にも変なやつは多かった。

人数が多い分、変なやつに当たる確率は多くなる。クレストはそんな変なやつにはあまり関わらないでおこうとブラックリストなるものを作っている。今のところ、一位は前に来た偏屈ジジイだったのだが、ニコルはそいつとは違うベクトルの変人で、一位にするべきか、別枠に入れるべきか悩んでいるところだ。

迷惑をかける系ではないから別枠か。ただ、変なことには変わりないからなるべく離れていようと思うのだった。

そんなこんなで用意したドレスを着た彼女達は美しく、注目を集めていた。

「ドレスはハルト卿の色で、宝飾品はリスキー卿の色なのよね。だから、両方とも浮かずに綺麗に見えるのよ。」

何かの思惑があったのか偶然の産物かはわからないが、確かに彼らは一人の女性を取り合っているように見えた。辺境伯領に突如降ってわいたゴシップの香りに、クレストの妻は色めき立った。
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