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34話 中堅
しおりを挟む『蛇村樹海』の攻略を終えた僕たちは、そこで回収した依頼の素材をギルドに提出した。
「バジリスクの素材まで回収したんですか!?」
ロゼさんが提出した素材を鑑定していたら驚きの声を上げた。
『蛇村樹海』はDランクのダンジョンでは上位に位置し、しかもボスのバジリスクに至ってはCランクのボスと遜色ないほどの強さを持っている。
それなのに、僕たちがこんな短時間でダンジョンを踏破したから驚いたんだろう。
「そうなんですよ。しかもバジリスク戦ではカリンがほとんどひとりで討伐したんですよ!」
「凄いじゃないですか、カリン! ノロワ君のパーティーに入ってうまくやってるようですね」
「何も私ひとりの力じゃないさ。ノロワとエマのサポートがあってこそだ」
カリンが謙遜をするけどそんな事はない。
確かに僕の呪いやエマの魔法もあったけど、バジリスクを討伐したのは間違いなくカリンの実力があってこそだ。
「ふふふ、『灰狼』……いいパーティーになってきたじゃないですか」
ロゼさんがまるで我が子の成長を見るかのような優しい目で僕たちを見てくる。
僕もエマもカリンも、ロゼさんにはお世話になったなぁ……。
ロゼさんの『追放者の人とパーティーを組めばいいんですよ』って一言がなかったら、僕はみんなとパーティーを組んでいてすらいなかったかもしれない。
本当にロゼさんには感謝以外の感情が出てこないよ。
「それにしても、たった一日でバジリスクを討伐し、パーティーメンバーも元とはいえA、B、Cの冒険者が三人。しかも前衛と後衛のバランスも取れてる上実績も充分……これはもう直訴するしかないですね!」
「……直訴?」
何か訴えかけるようなことでもあっただろうか?
エマとカリンも不思議そうに首を傾げている。
「ふふふ、私に任せて明日もギルドに来てください。必ず私が話を通して見せますので!」
「えっと……はい、よろしくお願いします……でいいのかな?」
ロ何を企んでいるのかは分からないけど、ギルド内で一番信頼できるロゼさんの事だ、僕たちにとって悪い話じゃないだろう。
そのロゼさんが任せてって言ったんだ。
そんなの任せる以外の選択肢はないでしょ!
「はい! ふふ、明日を楽しみにしててくださいね」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ううう……すいません、力及ばずでした……」
ロゼさんに言われた通り、翌日に僕たち『灰狼』一同はギルドに来たら、開口一番にロゼさんから謝られてしまった。
「えっと……何に謝ってるのか分からないけど気にしなくていいですよ」
そもそもロゼさんが誰に何を直訴したのか知らないから責めようもないし。
まあ、元々ロゼさんの事を責めるような人は僕たちのパーティーにはいないけどさ。
「ところでロゼは昨日から何をしてるのよ?」
ロゼさんと姉妹のように仲のいいエマが質問をする。
うん、まあ、それは僕もずっと気になってたんだけどさ。
「実は『灰狼』のパーティーランクの昇格についてギルド長に直談判してたんです」
「「「えっ!?」」」
ランクの昇格だって!?
あまりにも予想外の答えに僕たちは声を揃えて驚く。
パーティーのランクを上げるのには大きく分けて二通りの方法がある。
ひとつは、僕たちがDランクに上がった時のように昇格試験を受けて昇格する方法。
そして、もうひとつは、ギルドからの推薦で昇格する方法もある。
ちなみにパーティーのランクをAランク以上に上げるためには、昇格試験は存在せず、ギルドからの推薦で国家が認めた場合にのみ昇格することができる。
つまり、Aランク以上のパーティーは、ギルド単位ではなく、国認定のパーティーを意味するってことだ。
「『灰狼』は今回のDランク上位ダンジョンの踏破に加えてアメアヲロンの討伐。しかもパーティーメンバーには追放されたとはいえAランク、Bランク、Cランクの冒険者が在籍。昇格するには実績も実力も充分だと思ったんですけど……」
確かに、それだけ挙げると昇格してもおかしくは無いかもしれないけど、何より僕たちはまだDランクに昇格したばかりだし、そんなに甘くはないだろう。
それにエマやカリンっていう最高戦力が二人もいるんだ。
そんなに焦らなくても昇格するのはそう遠く無いだろうしね。
「ギルド長が頑固で困りましたよ……。それで、こちらがCランク昇格の決定通知書なのでサインをお願いします」
「「「……え?」」」
「え?」
……あれ?
おかしいなぁ?
ロゼさんと僕たちで話しが噛み合っていない気がする。
さっきはロゼさんは昇格できなかったってハッキリ言ってたはずだ。
それなのに、なんで僕たちの目の前に『灰狼』の昇格通知書が出されているんだ?
「……ああっ、すいません、私の説明不足でした。ギルド長に断られたのは『灰狼』のBランクへの昇格だったんですよ。でも、なんとかCランクへの昇格までは認めさせることが出来ました!」
……まさかロゼさんがBランクへの飛び級の提案をしていただなんて。
そりゃあギルド長も断るよ。
Bランクといえば、冒険者の中でも上級クラス……実力、実績、経験、その全てを兼ね揃えて始めて昇格できるランク帯で、Bランクパーティーっていえば一目置かれる存在になる。
実際、ほとんどの冒険者はCランクまでの昇格で終わってしまう場合がほとんどだ。
そもそもCランクに上がるのでさえ、本来ならもっと沢山の経験やクエスト成功の実績が必要になってくるはずだ。
それなのに、Dランクに上がって数日の僕たちがCランクに上がれるなんて信じられない気持ちだ。
……ロゼさん、一体どんな手を使ったんだろう?
「それで三人はどうしますか?」
ロゼさんが僕たちに改めて確認してくる。
どうするって言うのは昇格するかどうかって事だろう。
Cランクに昇格すれば更に報酬のいいクエストを受けたり、レアな素材がドロップする高ランクのダンジョンにも潜れる。
だけど、当然ダンジョンの難易度が上がり、罠や出現するモンスターも強力になることで危険性も上がる。
できる事なら、エマとカリンを危険な目になんて合わせたくない。
でも、それ以上に二人をもっと輝ける場所に連れて行きたいって気持ちもある。
「そんなの決まってるじゃない。ねぇ、ノロワ」
「ああ、決まってるな。なあ、ノロワ」
エマとカリンは覚悟を決めた目で僕を見つめる。
……うん、分かってる、分かってるよ!
「……Cランクへの昇格、よろしくお願いします!」
僕たちならきっと大丈夫だ!!
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