追放された呪咀士は同じ境遇の仲間を集めて成り上がります〜追放仲間にデバフをかけたらなぜか最強になりました〜

三乃

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35話 進路

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「それじゃあ、アタシ達『灰狼グレウルブ』のCランク昇格を祝して……かんぱーい!」

「「乾杯!!」」

 エマの音頭に合わせて、僕とカリンも杯を合わさる。

 今日はクエスト達成とCランク昇格をお祝いするために、こうして酒場で打ち上げをしている。
 ちなみに、ここはカリンと初めて会った酒場でもある。

 前回と今回のクエストでまとまった金を得たカリンは、借金の返済するついでに飲むことになった。

 カリンの借金額も大分減ったから、あと数回クエストを達成すれば完済もできそうだ。

「ふぅ……すいません、おかわりお願いします」

「相変わらずの飲みっぷりだね」

 カリンはまるで水でも飲んでいるのかってペースで麦酒を一気に飲み干した上、すぐにお代わりを店員に頼む。

「ふっ、いいかノロワ。乾杯というのは、さかずきを乾かすのがマナーなんだ。だから……あっ、そのお酒はこちらです…………ふぅ。すいません、同じやつのお代わりをお願いします。だから、ノロワも最初のいっぱいは乾かすようにしないとな」

 カリンは話の途中で置かれた酒を流れるような飲み干すと、すぐさま追加注文をする。

 どうしよう!
 カリンの飲みっぷりがすごすぎて、話が全く入ってこない!!

「ちょっと、カリン……ペースを考えなさいよ」
「大丈夫だ、エマ。前にも言ったけど、これくらいの酒なら私にとって水も同然だ」

 流石カリンさん、めっちゃくちゃカッケェっす!

 だけど、僕もエマもカリンほどお酒は強くないし、このペースには付き合えないなぁ……。
 まず間違いなく、1時間も経たずに酔い潰れちゃうよ。

「まあ、夜はまだ長いし、エマの言う通り少しペースは抑えるよ」

 そう言いながらも、すでに三杯目のジョッキが空になってますよカリンさん……。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「ふー、結構酔いが回ってきたわねー!」

 打ち上げが始まってから二時間くらいが経過しただろうか?
 エマは言葉通り頬がほんのりと赤くなってほろ酔い状態のようだ。

 そういう僕も、昇級したのが嬉しくていつも以上にお酒を飲んでしまい、少し酔ってしまった。
 そしてそれ以上に仲間と過ごす団欒が楽しかった。

 たわいもない話しかしていないのに、時間が経つのはあっという間だったなぁ……。
 その結果、ついつい飲み過ぎちゃったよ。

「ノロワもエマも頬が赤くなってきたな。水でも頼もうか?」

「そうね、お願いしようかしら」
「僕もお願いするよ」

「わかった。すいません、お水を二杯と追加の麦酒をお願いします!」

 手慣れた手付きでカリンが店員に水を注文してくれる。
 しれっと自分の酒も注文するあたり抜け目もないようだ。

「ちょっとカリン! アタシ達の倍以上飲んでるのに、まだ飲むの!?」

「ああ、私はまだまだ余裕だからな」

 強がりでもなんでもなく、本当に余裕なんだろう。
 カリンは打ち上げ前と後で様子が何一つかわっていない。

 ……まあ、カリンが酔い潰れると口調や目つきが途端に変わるから一発で気づけるけどね。

「調子に乗って酔い潰れて、折角直したこの店をまた壊さないでよね!」
「うっ……すいません店員さん、さっきのお酒の注文はキャンセルして、私にも水をください」

 どうやら、エマの忠告がカリンにクリティカルヒットしたようだね。
 カリンも酒のペースを落として休憩するようだ。

 確かに、カリンが酔うと手がつけられないからなぁ……。
 いくら本人が平気と言っていても、事前に泥酔を防ぐのは英断だろう。

 カリンの注文からすぐ、店員が三杯の水が入ったジャッキを置いていってくれる。

 みんながそれを受け取り、ほぼ同時に口をつける。
 あー、水が体に染み渡る!!

 どうやら、自分が思っていた以上に体は酔っていたようだ。

「あー、水が美味しい!!」

 エマも、僕以上に酔っていたからか、美味しそうに水を飲む。

「ふう……ちょっと休憩するのも悪くないな」

 カリンは麦酒を飲んでる時と何も変わらない様子で水を飲み干す。
 ……水も一気飲みするんだ。

 まあ、カリンは酔っていないって言っていたけど、体内には確実にアルコールが摂取されているし、それを分解するって意味で水を飲んだのは正解だろう。

「さて、一息ついたところだし、ここらでちょっと真面目な話でもしようか」

 少し間が開いたところで僕から二人に切り込むことにした。
 これ以上酒が回ったら真剣な話し合いもできなくなるだろうし、ここらがいいタイミングだろう。

「真面目な話?」

「ああ。僕たち『灰狼』のこれからについての話だ」

「「これから?」」

 二人は息を揃えて返事をする。

「うん。二人は『灰狼グレウルブ』をどうしていきたい?」

 これは大切な質問だ。
 パーティーメンバーの間でパーティーの方向性が違うと、この先の方針が定まらない。

 Cランクの冒険者になれば、十分中堅クラスを名乗ってもいい実力がある。
 このままBランクやAランク、さらにその先までを目指すのか、それともこのままCランク程度に停滞して現状維持を目指すのか……これからの将来を考える時期にきたと思う。

 基本的には更なる昇格を目指す冒険者が多いけど、ランクを上げる際、もっと危険なクエストに挑まなければいけない時は必ずくる。
 だから、冒険者の中にはそこそこのランクに留まって危険を回避するパーティーも存在する。

 勿論、それも間違った選択ではない。
 わざわざ命を無駄にかけるのはバカのすることだ。

 自分の力量を冷静に判断するのも冒険者としては必要な能力だしね。

 それに、パーティーメンバーの方向性が違った結果、パーティーが解散するってこともよくある話だ。

 僕は二人のことが仲間として、とても大切だと思っている。
 だからこそ今この場でこれからのパーティーの方向性について話し合っていくべきだろう。

 僕としては、もっと上を目指していきたいけど、二人はどう思ってるんだろうか……

「そんなの決まってるわ。目指すのは冒険者の頂点……Sランク冒険者よ!」
「勿論、私もエマと同じ意見だ」

 二人は僕からの質問にノータイムで返事をする。
 それと同時に僕は安心する。

 良かった……みんな同じ考えだった!

 Sランク冒険者ってのは国内にも数組しかいない、冒険者の頂点。
 そこを目指すためには果てしないほどの実力と実績が必要になってくる。

 だけど、僕たちならきっとそこまで辿り着けると信じてるし、二人も同じ気持ちなんだろう。

「オーケー、分かった。なら『灰狼グレウルブ』の方針としては更に上のランクアップ、そして最終的にはSランクを目指すことでいいよね?」

「ええ」
「ああ」

 よし、これで僕たちの進路は決まった。

 そして、それと同時に新しい問題にも直面することになる。
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