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第61話 叶った復讐

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 人々の悲鳴が聞こえてきた。何かが壊れる音も聞こえる。
 見えてきたのは、抱き合って震えている人たちと、街の中を動き回っている黒いスライム。どうやらスライムは、人を襲ってはいないみたい。けど建物などに体当たりして壊しまくっていた。

 『これは見事だな。あちこち壊れまくっている。というか、いったい何体いるのだ?』
 「凄すぎる……。見える範囲だけで200いや300はいるんじゃない? どうやって連れてきたんだろう?」
 『一日の数ではないな。これはかなり計画的に事を進めていたようだな。破壊できる物がなくなったら人も襲わないとも限らない。女神の雷だ!』
 「うん。女神の雷!」

 バシ! べちゃ!

 「へ?」

 目の前の黒いスライムが一瞬で元の青いスライムになったと思ったらぺっちゃんこになった。

 「なんだ!?」
 「きゃー!! なんか変身したわ!」
 『急に姿を変えた様に見えて、今度はそれでパニックだな』
 「……なんで倒れたの?」
 『スライムだったから雷の攻撃で倒れたのだろう。本来は、痺れさせる攻撃だが少なからずダメージも与えるからな』
 「なるほど。でも凄い光景だね。核だらけ……」
 「おい、これ、スライムの核だぞ!」
 『お、気づいたようだな』

 って、一斉にみんな拾い集めている。
 僕も参加しようかな。

 『何を言っている。まだまだ奥にいるだろう。それにフェニモード家の連中には攻撃しているかもしれん。魔法で倒しながら探した方がいいぞ』
 「そっか! そうだね」

 僕は、核を拾う人々の合間を縫ってフェニモード家の人を探す事にした。ただ僕は彼らの顔を知らないからまずは、エドラーラさんを探す事にした。
 その間、ある程度進んではスライムを倒していく。僕が通った後には、核が転がっているという不思議な光景になっていた。
 って、どれだけ倒したの僕?

 『MPでも確認すればいいのではないか?』

 なるほど。

 「………」
 『凄いな。3,000体ほど倒したのか?』

 MPは、1,000ちょっとしかなくなっていた。だから結構フラフラなのか。
 スライム集めすぎ!

 「だから、もうやめろ!」
 『向こうから聞こえたな?』
 「あれ? ここら辺のスライムって消えたんじゃないの?」

 僕は、声が聞こえた方へ走って行った。
 なぜか冒険者同士で争っている。
 あれってモンデさんとバリンさん? その二人にそれぞれ後ろから抱きついているのが、エドラーラさんの護衛の二人。という事は、エドラーラさんがいる!

 「マルリードさん!」
 「チェミンさん!」

 少し奥にチェミンさんとエドラーラさんが立っていた。その周りには人が数人いるが、老人が座り込み介抱している男性もいる。

 「あの人たちは、何をしているんですか?」
 「突然暴れ出したのだ。だから止めさせている」

 僕が質問すると、エドラーラさんが驚く返事を返してきた。

 『よく見ろマルリード。あの二人、いつもの鎧を着ていない。そして、魔素酔いをしているようだ』
 「え!?」

 じゃもしかして、操られているの?

 『だろうな。魔素酔いをしたモノとなっていたからな。モンスターでなくとも操れるのだろう』

 結構、恐ろしいアイテムだった!
 僕は、ヨイドレイのベルを魔素空間から取り出した。

 「もうやめて!」

 リーン。
 二人は、ピタッと動きを止めそのまま倒れこんだ。

 「何をしたんだ?」
 「え? 操られている人を元に戻すように言われて預かってきたんです」

 本当の事を言うと厄介な事になりそうだからそういう事にした。

 「な、なぜだ? なぜ店を壊そうとしたんだ!」

 座り込んでいた老人が叫んだ。

 「もしかして、フェニモードさんですか?」
 「そうです」

 介抱している男性が答えた。たぶん長男なんだろうなぁ。振り向いて建物を見ると、一番大きな建物みたい。すでに半壊していた。

 「彼らを操っていたのは、レモンスさんです」
 「な!」

 この反応からやはりレモンスさんがスーレンさんで間違いないみたい。

 「復讐らしいですよ」
 「復讐だと……」
 「レモンスとは誰だ?」
 「スーレンさん似の冒険者よ」

 エドラーラさんの質問にチェミンさんが答えた。

 「その者がなぜここまで……」
 「同一人物だったんです」
 「「……え!?」」

 エドラーラさん達も気が付いたみたい。

 「店を直せてもこんなに核が流出しては、もう終わりだ……」
 『なるほどな。生きていても地獄か。原因は、フェニモード家にあるし倍賞問題になるだろうな。しかもかなりの数の核が出回った。値下がりは免れないだろう。それにしても、最後の最後で踏みとどまった様だな。殺そうと思えばできたのだからな』

 魔素酔いで倒れた二人が手にしていたのは、剣ではなく棒だった。
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